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2024/12/22 sun
前回の章
しほさんやみゆき、そしてセクラクララ……。
みんなを傷つけた行為に対し、神様が罰を当てたのかな?
俺は漫画喫茶にいた。
簡単に説明すると現実逃避。
目の前のパソコンを起動し、ミクシィへログインする。
そしてみんなへ向かって記事を書いた。
えーと、今、漫画喫茶からなんですが……。
昨日の夜、パソコンの近くにアイスコーヒーを置いていたら、ちょっとした拍子で何故か床に落ちてきたんですね。
ええ、そりゃあ抜群の反射神経でキャッチしましたよ。
でもね、紙コップなんで中身はこぼれて、もう布団、コーヒーまみれで臭いんですよ。
その衝撃で五百ギガハードディスクが落ちて「あっ、この野郎」って口走っている時、いつも使うパソコンが突然切れたんですね。
何度もつけましたが、ヒューン…、ヒュン……って電源つかなくなっちゃったんですよ……。
もう何か生きているの嫌になって、二階の部屋を飛び出し、三階の和室へ行ったんです。
うちら三兄弟の漫画の一部をお見せしますね……。
まだこれ、半分もないんですけど、まあ漫画読みながら寝て、朝になればパソコンも直るだろうと思ってね……。
朝になりました。
ゲッ、全然パソコンつかない……。
じゃあ、もう一台小さめのノートあるからと、それを引っ張り出しますが………。
ガーン、コンセントが見つからない……。
部屋の中、汚過ぎて見つからない……。
去年の十月ぐらいに買ったディスクトップパソコンを設置するスペースもないしな……。
物凄いゴミの山。
しかたない、掃除すっか……。
こう見えて中学時代は整備委員長でしたからね。
前回、去年の暮れに掃除し始めましたが、七十リットルのポリ袋十個捨てても、床が見えなかったんですよ。
そこで断念した訳だったんですがね……。
立ち上がり部屋を見渡しました。
そういえば中学時代、アゴで人に「掃除をしろ」とこき使えるから、委員長になったんだよなあ……。
「あはは、漫画喫茶行こっと!」
今週と先週のヤングジャンプのサムライソルジャー読みたかったしね……。
十時間ほど漫画喫茶にいただろうか。
うん、現実逃避って良くないよな……。
だって何も解決しないのだから。
仕方なく家へ戻り、掃除を開始する。
一時間半が経ち、ようやくドアの入口付近の床が見えてきた。
何袋ゴミを捨てに行ったのだろう。
百合子がいた頃は、マメに掃除してくれていたんだけどな……。
つまり二千六年のクリスマスイブに別れたから、三年半くらい俺は何一つ部屋の掃除をしていない計算になる。
そりゃあ、ゴミ屋敷になるよな。
二十四時間以上、小説を執筆しなかったのは今年これが初。
床の見えた部分だけ、掃除機を掛ける事ができた。
予備で取って置いた小さいパソコンのアダプターが見つかり、インターネットを見るぐらいならできるようになった。
でも、文字がキーボード小さ過ぎて、打つのがとても大変……。
だけど、どうでもいい。
まだ掃除が半分も終わってないのを自覚し、三階へ行き『メジャー』を読みながらそのまま寝てしまう。
お風呂で熱いお湯に入ったあと、自分で鏡を見ながら髪の毛を切ってみた。
昨日も部屋の部屋を掃除している内、数分も立たず、気が付けば漫画喫茶に行き、十時間コースを頼んでいる自分がいた。
そのあと帰り道、久しぶりにキャバクラへ寄った訳である。
今日は昼に、焼肉の食べ放題へ行き、家に帰ろうとするも、何故か街の中をグルグルと歩く自分がいる。
気づけば近所のスガ人形店の前まで来たので顔を出した。
先輩の栄治さんは兜の準備で忙しそうでして、お邪魔かなと思っていると「ご飯食べた? ラーメン食べに行こうよ」と誘われたので付き合う事に。
待てよ?
さっき焼肉食い放題行ったばかりじゃねえか……。
そんな訳でラーメン屋につくなり、プリプリっと出して、ラーメンを食べる。
これから栄治さんは埼玉県加須市まで行くと言うので、部屋に戻ってどんよりするよりも、気晴らしに一緒にいいかと思い「俺もいいっすか?」と言うと「構わないけど、遠いよ」と男二人、加須へのドライブが決まった。
加須市につくと、本当に辺りは住宅か田んぼばかり。
車内禁煙だったので、栄治さんが先方で仕事をしている間、俺は途中で降り、田んぼで立ったままタバコに火をつけた。
すぐそばで、可愛らしい女の子が二人、キャッキャと遊んでいたので微笑ましく眺め、ジュースでも買ってあげようかなと近づくと……。
「うわ~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」
デカい声を張り上げながら、俺から逃げていく……。
おいおい、これでもチビっ子には人気者の俺を捕まえて、ちょっとそりゃあないんじゃないのかい、セニョリータ……。
一体、「うわ~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」って何だよ?
心の片隅で大事に温めていたものが、簡単に壊れたような感覚を覚えながら、俺は田んぼのところで呆然と口から煙を吐き出すのが精一杯だった。
もう、生きていけないな……。
栄治さんにそれを話すと、すごい笑っていました。
結論として加須市の子供と俺の相性は悪いのだと必死に自分へそう言い聞かせ、明日も歯を食い縛って生きようと決めた俺であった。
三年半ぶりに掃除をして見つかったものはたくさんあった。
小銭で五千円ぐらい。
近所の小学生にもらったラブレター。
過去付き合った女との数々のプリクラ。
そして、二千四年に初めて書いた小説『新宿クレッシェンド』の当時自分で手作りで作った本。
…といっても、今さらこんなものが見つかってもなあ。
誰か欲しがる人がいればあげてしまおう。
二台のパソコンを自分仕様にするのは大変な作業だ。
前のノートはマザーボード壊れているので捨てるようだが、中に『鬼畜道』最新データがあるので、あとでバラして中のハードディスクだけ使えるようにしないとなあ……。
岩上整体時代の患者さんの店『ラーメン新世紀』へ行く。
帰り道古本屋に寄り、『CUFFS』を買おうと思う。
『新宿クレッシェンド』が四百円で売られていたので買うのをやめる。
帰って、ひたすら部屋の大掃除中。
同級生の飯野君と電話中、夜中十二時になった瞬間、先日変えたばかりの部屋の電球が突然切れた。
またかよ……。
朝腹減ったので久しぶりにほか弁へ行くが、五歳ぐらいの娘を連れた母親が来て、レシートを店員に見せながら苦情を言っていた。
ティッシュに包んだ髪の毛を見せ、金額を返してもらいながら、まだ三十分ほど文句を言っている。
おかげでこっちはその分待たされるハメになったが、娘まで連れてきてのクレームは、教育的にも良くないだろう。
帰ろうと車に行くと、そのクレーマーは俺が運転席側から入れないぐらい車をピッタリ停車しており、一言ぐらい怒鳴っておけばよかったかなと感じる。
まあ子供がいるからそんな事できる訳ないが……。
また帰ってから、部屋の大掃除。
夜になったら気分転換に、同級生の飯野君とゴリを家へ呼び、俺が料理を作って飲み会をした。
無職で休業補償をもらう身なので、節約をしてみる。
個々に金を出し合い、それぞれ食べたいものを俺がつまみとして作った。
材料だけでいいので、本当に安く済んだ。
残った食材を利用し、弁当を作る。
デミグラスソースとチーズを中に盛り込んだ牛カツ。
様々な材料を使ったフライ。
ちょっとした豪華な弁当になる。
飯野君とゴリは、喜んでお土産にするようだ。
他愛もない話をして場は盛り上がる。
そこへ突然居間のドアが開く。
伯母さんのピーちゃんがプールから帰ってきた。
「こ、こんばんは……」
ゴリと飯野君が立ち上がり、ピーちゃんへ挨拶をする。
それでもピーちゃんはそれを無視して、居間の空いている椅子へドカッと座り、テレビをつけて見だした。
何故こんな失礼で非常識な対応ができるのだろうか?
「……」
二人はこの何とも言えない空気間に包まれ無言で困った表情をしている。
「おいっ! 何なんだよ、おまえは?」
俺はピーちゃんへ怒鳴りつけた。
しかしピーちゃんは俺を無視したまま、テレビを眺めている。
頭が本当におかしいのか?
家族間だけでなら、まだいい。
今、同級生がいるのに、よくもこんな対応をして、恥を掻かせてくれたな……。
「何を無視してんだよ、おい?」
テーブルを蹴飛ばす。
それでもピーちゃんは無表情のままテレビを見ているだけ。
「い、岩ヤン…、僕、そろそろ帰るね」
「岩上、俺もそろそろおいとまするよ」
俺は二人に謝りながら玄関まで見送る。
「岩上もほんと大変だなあ……」
ゴリがボソッと呟く。
二人が帰ると、居間へ行き怒鳴りつけようとしたが、それで騒ぎになり、寝ているおじいちゃんを起こすのが嫌だった。
頭を抱えながら部屋へ戻る。
本当にもうこんな家にいるの、嫌だ……。
朝になり目を覚ます。
まだ五時だった。
おじいちゃんが起きて居間へ行く前に、昨日の飲み会で散らかしたままのテーブルの上を片付けないと。
案の定昨日のままの状態。
あのピーちゃんが、俺が散らかした後の片付けなどするはずがない。
貴彦と内緒で養子縁組はするは、俺の友達が家にいるのにあの態度。
ピーちゃんの事を考えると、時間が経ってもイライラする。
親父が酔った勢いとはいえ、暴力を振るう気持ちが少し分かった気がした。
この家の中をおかしくさせたのは、間違いなく親父とピーちゃんだ。
すべての起因はそこにある。
考えてもどうせ何一つ解決などしない。
俺は部屋の掃除を始めた。
待てよ…、先日三十年ぶりに福田先生と再会したが、まだ『鬼畜道 〜幼少編〜』の作った本を渡していない。
俺は昼過ぎになると、福田先生の八枝神社へ車で向かった。
上尾までの道順は暗記している。
先生に渡すべく本をちゃんと準備して、いざ先生のいる神社へ。
いなかったらサッと渡して、サッと帰るつもりだった。
小学三年生だった俺は、クラスメイトと共に先生の神社へ遊びに行った。
もうあれから三十年も経つのか……。
鳥居を潜ると、脳の片隅にあった大きなけやきの木が見える。
うん、昔見たこの光景。
懐かしさが蘇る。
思わず写真を撮ってしまう。
当然の訪問に先生も奥さんも、嫌な顔せず招き入れてくれ、昼の三時に行ったのが、結局夜の八時半頃までずっと話し続けた。
福田先生はあの当時教職の仕事を辞め、旅に出たらしい。
学校を辞めたのは、俺たち生徒が原因ではなく前の奥さんとの離婚問題からだったようだ。
幼い頃から感じていた変な責任感が、溶けていく。
二十歳も年下の奥さんと再婚をした先生は、三人の子宝に恵まれ楽しそうに生活していた。
何度も「俺が出します」と言ったのに、先生は「いいからいいから」と笑顔で会計を譲ってくれなかった。
前回もぼだい樹で会計を払ってもらい、そして今回も。
先生にとって、俺はいつまで経ってもあの時の生徒のままなのだろう。
先生の三歳の娘さんを始め、まだ小学生の息子さんたちも懐いてくれたので、今度近い内料理を作って持ってくる事を約束し、俺は温かい気分のまま帰る。
まだまだ未熟者だが、俺はもっと頑張りますからね、福田先生。
昨日の夜伯母さんのピーちゃんによって刺々しくなっていた心境など、いつの間にかどうでもよくなっていた。
壊れたノートパソコン……。
マザーボードがいかれたので、中を分解し、ハードディスクを取り出して外付け仕様にする。
ようやく繋げるも、何故かうまく認識してくれない。
ひょっとして、ノートのハードディスクまでいかれちまったのか?
『鬼畜道 〜天使の羽を持つ子〜』の執筆途中データがあるのになあ……。
小説で師匠と崇めたしほさんもいなくなった。
みゆきもいなくなった。
もう…、俺にはミクシィ自体あまり意味の無いものになったのかもな。
ミクシィで記事を書いた。
みなさん、これまで色々とありがとうございます。
思う事あり、ミクシィはあまり俺にとって意味のないものになったんで、この度辞めようと決意しました。
この数日色々考え、記録的なものを残す為だけに続けるか迷いました。
でも、記録的なものなら、別のブログでも何でもできるので、俺が感情を現すのは作品の中と、リアルな人間に触れている時だけでいいかと。
だからこの記事がミクシーでは最後の俺の感情を記す記事になります。
よくギネスに行くのに、一緒に応援してくれと言いましたが、考えてみれば何を甘っちょろい事を言っていたのかなと反省もしました。
悩んでいると、昔からのリアルな友人が電話をくれ、色々と話しました。
「ミクシィ、前はいい気晴らしになっていたけど、最近ストレス感じているんじゃないかな」と言われ、よく考えました。
文字や画像だけじゃ、俺の事を理解させるのは難しいなあと作家のくせに馬鹿な事を考えました。
一生懸命やってきた事だから、名前も何も自分の情報は名乗らず適当な意見を言う輩って、性格的にどうしても許せない性分なんですね。
俺が意のまま感情を書くと、嫌な思いをしてしまうマイミクもいる。
分かってほしかったけど、逆に色々言われ、いい結論がこれまで浮かばず悶々とした日々を過ごしていました。
結果、パソコンのトラブルも手伝い、今年初めて二週間ほど執筆をしませんでした。
俺は元々頭なんかよくないから、器用でも何でもなく、一つの事しかできないようにできています。
現実社会の生活で悩みを感じると、執筆ができなくなるという悪循環。
一つ言えるのが、俺はみんなの理想通りには生きれないし、作家は自分の宣伝活動する時間あるなら、作品を書かなきゃってところです。
それは違うという思う人は、それはそれで自由です。
天上天下唯我独尊……。
人それぞれ自由でいい訳だし。
それじゃ表現者や作家じゃないと言われてもいいです。
定義に当てはまらなきゃ、そうじゃないと言うなら、そんな名称なんぞまるで興味ありません。
それじゃあ世に出れない。
本など売れない。
そんな事も言われそうですが、別に構いません。
俺は書きたいから書いているだけだし……。
やりたい事をしているのに、才能云々言われる筋合いないし、俺の自由。
それさえも邪魔するなら、本腰入れてコソコソしないで来いよって。
売られた喧嘩からは逃げない主義なんで。
ミクシィが無くても、俺は生きていける。
こんな俺の作品を期待してくれる人は、一人だけいます。
そして書くという事に対し、絶大な応援もしてくれています。
昨日も今日もその前もたくさんの勇気をもらえました。
だからこそ、俺は以前言ったように一人でも読んでくれる読者がいる限り、ずっと書き続けようと言いました。
ならば、書けなくなるのが俺にとって一番の罪であり、自分を許せない部分でもある。
作品を書く上では、あくまでも自分一人。
大きなアドバルーンを打ち上げた以上、迷いなくそれに突き進みたいと実感しました。
まだ作品を書く上で必要なものが、まだここに残っているので、整理が終わり次第退会します。
部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「兄貴いる?」
弟の徹也の声。
「何だよ?」
「兄貴さ…、ネットで家の中の事をあれこれ書くのはやめなって!」
「何だ、そりゃ?」
「家の状況とかさ、親父がどうとかさ」
ミクシィは元々会員制のSNS。
しかも俺の記事は選んだマイミクしか閲覧できないように制限している。
「誰が言ったんだ?」
「何がだよ?」
「俺の記事は見れる人を限定している。だからそういう嘘を誰から聞いて俺へ言っているのか知らないが、いい迷惑だ」
確かに作品の性質上、家の中まで赤裸々に書いているが、徹也には書いていないとカマをかけてみる。
「兄貴さ…、書いてないなんてそれこそ嘘だろ」
「だから何の話だよ?」
「ター坊から聞いたんだよ。兄貴が家の事をあれこれ書いてるってさ」
またあいつか……。
前にも俺がDEEPの総合格闘技の試合に出られたのは、自分のおかげだと貴彦へ嘯き、恫喝すると平謝りだったター坊。
本当に懲りない奴だ。
「執筆の邪魔だ。消えろ!」
「兄貴さ……」
「消えろっ! ぶっ殺すぞ、おいっ!」
ドアを叩きつけるように閉めた。
俺はミクシィを起動し、ター坊をマイミクから外してブロックする。
それから記事を書いた。
警告
応援してくれなんて言いません。
ただ、過去の記事を見て、あえてトラブルを起こすよう身内にかいつまんで密告するような卑劣な真似をする人間。
もうマイミクから外しましたが、まだ関わるようなら、名前も出し、徹底的に落とし前をつけさせるよう動きます。
足を引っ張るなら、もう関わらないでいい。
一度目は、謝ったので許し水に流した。
二度目、今回は警告。
三度目以降、もう二度と起きぬよう今回の処理。
今、俺は自分で本当にやりたい事をしているだけ。
その行為や感情さえも、洩らそうとしていない。
頼むから、俺の執筆の邪魔だけはしないでほしい。
分からないなら、実力行使しますので、ご了承下さい。
できれば大人しく執筆に集中したいんで。
俺はター坊の携帯電話のメールへ警告を送った。
一言いっておくけどね
陰でコチョコチョコ動いてんじゃねえよ
たあに何を吹き込んだのか知らないけどさ……
俺が前、たー坊に怒った件もよ?
俺の前じゃ笑顔でニコニコ、陰でグチャグチャ言ってから、ムカついたんだよ?
言いたい事あんならよ?
直に言って来いよ?
俺、裏表ある奴って嫌いなんだよ
もう、後輩みたいな顔で擦り寄ってくるなよ
自分のした行為に対し、胸に手を当ててよく考えてみな
悪いけど、おまえの事、もう信用もしてないし、関わらないでいいよ
岩上智一郎
何が格闘家だよ……。
女々しく弟たちへ告げ口して、あいつは何がしたいんだ?
ター坊が俺に実際歯向かって来る事は無いだろう。
仮に来たら、遠慮なく俺は打突をぶち込める。
限りなく残虐な気持ちになった。
こんな事すらも流れなのか?
携帯電話が鳴る。
以前何度も岩上整体へ来てくれた寿司職人の津村さんから。
仕事上どうしても支障をきたす症状のレベルとの事。
症状的に、不眠症、仕事へ行けないレベルの痛み。
偏頭痛、左手親指付け根腱鞘炎、右手人差し指腱鞘炎、極度の肩凝り、そして背中の張り。
整形外科へ行っても、接骨院へ行ってもまったく改善されないで困っていると津村さんは懇願してくる。
本当に困っている人がいて、それでも俺を頼ってくるなら、今でも治そう。
岩上家の中で一番広いおじいちゃんの部屋を使わせてもらう事にした。
高周波を運び、施術できる環境をセッティングする。
まず全体的な凝りの緩和、岩上流三点療法。
右手人差し指の筋に沿っての施術(右手腱鞘炎解消)。
左手親指付け根全体と上腕部に沿う施術(左手腱鞘炎解消)。
背骨に沿った一列の高周波。
首周り、親指を使った鎮定法及び岩上流三点療法(偏頭痛解消)。
肩甲骨内部の高周波治療及び打突改による体内への貫手(背中の張り解消)。
上半身の骨矯正。
患者の症状緩和、無事終了。
午後三時半から午後七時まで、三時間半掛けて終えた。
津村さんは何度も楽になったと頭を下げる。
一万円札を数枚出そうとしたので、代金は五千円でいいと伝えた。
「岩上さん、こんなにしてもらって、それじゃ納得いかないですよ」
「いいですよ、俺はこのスタンスで。まあだから整体潰しちゃったんですけどね。今度お寿司食べに行った時、マグロの赤身の握りをサービスして下さいよ」
数え切れないほど頭を下げて津村さんは帰った。
また群馬の先生に注意されそうだ。
久しぶりに先輩の坊主さんから電話があった。
元気にしているかと他愛もない会話をして、小説やミクシィで起きた数々の話をする。
「ミクシィ辞めるのはいいけどさ、智はどうやってその記録を証明するの?」
「……」
坊主さんはいつだって俺に的確な指示をくれる。
電話を切ると、慌ててミクシィで記事を書いた。
前回整理したらミクシィは辞めると記事を書いた。
これはどういう事かと言うと……。
当時感情を入れて書いた記事をいずれ『鬼畜道 ~天使の羽を持つ子~』で書く時に必要な事だから、整理して、作品で文章化できたらミクシィを辞めるつもりだったのだ。
でも、昨日電話で親しい先輩と話をしていた時に、「その記録はどうやって証明するの?」と言われ、俺はミクシィで原稿用紙何枚まで書いたという画像をアップしていた。そしてそれに伴うコメントなども当時の日時を証明する材料になるはずだ。
あの辞めます記事を見て、勝手に離れたマイミク、俺に嫌がらせをしたかったのか弟に記事をかいつまんで話した馬鹿な後輩はこっちから切ったので……。
やっぱミクシィはこのままにしておきます。
ギネス記録達成の事を考えて。
嘘つきだな、この野郎と思う方は、自分からご自由に外れて下さいね。
あと、邪魔しようとする人間、以前ならキッチリ相手していましたが、今は執筆する時間がほとんどなんで、そんな時間ないんですね。
名前も顔も連絡先も知らない人間とやり取りする暇もないんで、この記事見て不快に思う人がいたら、勝手にマイミク外れといて下さい。
何度も引退すると言ってはまた復帰し、ファンを裏切り続ける大仁田厚みたいで非常に格好悪い。
しかし仕方ない。
俺には小説を全うするほうが優先順位でいえば桁違いなのだ。
家に樽酒が届く。
おじいちゃん宛に誰かが送ってきたものだ。
だからアメリカンクラブハウスサンドを作って……。
唐揚げやポテトフライなども作って……。
同級生の飯野君やゴリを呼んで、ホームパーティーを開催した。
「もういいよ…。岩上の伯母さんがああやって要られると、こっちは居辛いし……」
ゴリは顔を曇らせる。
「この間はごめんって。でもせっかく樽酒があるんだぞ? 浴びるほど飲めるぞ」
「うーん…、確かにそれは魅力なんだよなー」
「ね? 飯野君もお袋さんに樽酒をペットボトルに入れて、お土産で持って帰ってやりなよ」
前回伯母さんのピーちゃんの邪魔があり二人は嫌がったが、何とか説得をする。
献立表を紙に書く。
・手作りピザ
・アメリカンクラブハウスサンド
・唐揚げ
・ポテトフライ
・カレーコロッケ
・タコさんカニさんウインナー炒め
・グリーンサラダ
・ニンニクの芽炒め
・豚肉の生姜焼き
・枝豆
・冷奴
・マグロの中落ち刺身
・ミネストローネスープ
楽しい宴の時間。
途中玄関の開く音がしたが、ピーちゃんがそのまま階段を上がっていく音が聞こえた。
前回揉めたから、さすがに今度は大人しく自分の部屋へ行ったのだろう。
宴は続く。
突然真夜中の時間なのに、家のインターホンが鳴った。
時計を見る。
深夜一時を回っていた。
こんな夜中に誰がインターホンを?
玄関のドアを開ける。
家より二軒隣の横関さんだった。
「横関さん! どうしたんですか、こんな夜中に?」
うちのおじいちゃんより八つ下の横関さん。
昔は屈強で、柔道界で相当慣らしたという噂を聞く。
今ではすっかりおじいさんになってしまい、痴呆症も始まったようだ。
向かいの駐車場を指差し「あそこでお坊さんが…」と何度も言っている。
その方向を見ても、人っ子一人いない。
俺は話を合わせながら、横関さんの家まで送っていく。
お袋が出て行ったあとのまだ小学校低学年の頃。
幼かった俺たち三兄弟を車に乗せ、横関さんは川へ連れていってくれた。
豪快な網釣りで数え切れないほどの魚を捕り、自然の楽しさを教えてもらう。
当時横関さん家は、食堂を営業していた。
つまりうちの隣にはトンカツひろむに、横関さんの食堂と二軒食べ物屋があったのだ。
ショーウインドーには大きな雀蜂の巣が飾られ、三つ置いてあったのを記憶している。
俺が全日本プロレスへ受かった時も、横関さんは「おまえは家が金を持っているから、道楽でそんなものをやっているんだ! どうしても行くと言うなら、俺を倒してから行け」と言うくらい偏屈なところもあった。
昔からお世話になったあの屈強な横関さんが、こうまでボケてしまうとは……。
家に戻ると、飯野君とゴリは帰り支度をしていた。
「ごめんね、岩ヤン。こんな遅くまでお邪魔しちゃって」
「いやいや、何を言ってんの」
二人を見送り、樽酒パーティーの後片付けをしていると、再度インターホンが鳴った。
誰か見なくても分かる。
また横関さんが家を抜け出してしまったのだ。
居間の明かりを消して、居留守をしてみる。
そうすれば諦めて帰ってくれると思った。
甘かった。
横関さんは何度もインターホンを押す。
これじゃ、おじいちゃんが起きてしまう……。
仕方なく俺はまた外へ出て、横関さんを家まで連れて行く。
深夜で失礼だったが、横関さんの家族を起こした。
また徘徊されたら溜まらないからだ。
うちのおじいちゃんも、いつかあのようにボケてしまうのだろうか?
複雑な心境のまま、一日を終えた。
ミクシィを継続する報告をした俺。
影原美優からは相変わらずメールが届く。
古木英大に嫌われながらも、一緒に住む選択をしている彼女。
常に闇を抱えている。
花(影原美優)
> そうですね。
「離れた方がいい。」という意見と「一緒にいたい。」という思いは、どうやっても平行線にしかならないですね。
「しんきくさい顔してんな。好きなことしてろよ。」と言い、「好きなことをさしてくれない。」今の状況もどこまでいっても平行線ですね。
現実をもっと見たほうがいいですよ。
言葉でいくら言っても、行動や言動が支離滅裂では何の意味もないです。
> 心から笑えてた時。
私にとってそれは古木xお腹の子x私。
その三人で過ごした期間です。
申し訳ないけど娘と旦那がいた時の同じ時期にそんな想いではありません。
娘が生まれてから…、娘x私の笑顔でいられた記憶、想い出はあります。
前の生活がどうとかは俺には分かりませんが、自分で選んだ選択です。
悔いがあるのなら、もっと幸せをつかむ為に生きようと努力するべきだと思うんですよね。
> もっとふり返っても、幼い頃…、実家にいた頃は母親から虐待され。
色素の薄さとクリクリの髪の毛から異国人、異星人と言われ。
妖怪と避けられ…。
(凄いアトピーで眉毛なくて全身の皮がいつも剥けてたんですよ)
別に今は可愛いんだからいいじゃないですか。
昔がどうとかなんて。
今がブサイクのほうが、よほど大問題ですよ?
全国のブサイクに怒られますよ?
努力したって、男から見向きもされないんだから。
> 社会人になって、結婚して……。
離婚して……。
また鬼のように仕事して……。
仕事で責任を持つ立場になったり、母親が倒れたり、兄貴が馬鹿やったり……。
そんな疲れた時、薬で自分を維持してた時にに出会ったのが古木です。
今思えば、その時点で現実逃避だったのかもしれません。
結局のところ、人間って生まれる時も、死ぬ時も『孤独』なんですよ。
寂しいから人に縋るって気持ちは分かりますよ。
でも、縋る人間は自分で選んだ人間です。
だからこそ、もっと人を見る目が必要です。
俺だって負けないぐらい悲惨な人生ですよ?
でも、誰かのせいにしても、何の解決にならないからこそ、生きる目標を見つけ、やってんじゃないですか。
寂しいと言えば寂しいですよ?
でも、心の持ち方一つでも、いくらだって人間は強く信念を持って生きられます。
まず自分が地に足をつける。
次にそれが普通に維持できるようになってから、初めて他人に目を向ける。
それだけ辛い想いをしたんだから、その分幸せになれる権利ってあるの知ってました?
でも、それは待っているだけじゃなく、自分で努力し、時流の流れに沿って生きようとするからこそ、生まれる流れなんです。
俺も当然悩みましたよ。
何でこんな状況に俺がとか、別に影原さんの件とかじゃないですよ?
友達から「いいなあ~、岩上は。何だか余裕あって」と最近言われます。
俺なんてプーだし、職だって見つけなきゃいけないのに、彼は何を言ってんだろうと思ったけど、多分俺が欲ってもんが無くなってきたんで、それを勝手に見ながら「いいなあ~」って言ってんでしょうね。
> 年を重ねるとよくいいますよね。
『あー。あの頃が一番楽しかったなぁ…』って。
たかが三十四年。
されど三十四年ですけど、私の中での楽しく幸せだったのは「あー、私笑ってる」と思えてたのは、ほんの一、二年前、まだまだ記憶に新しいその頃なのです。
中学生や高校生に戻りたい…、とかいう非現実的なものではないので。
こだわってるのかもしれません。
俺は若い頃がいいなあなんて思いませんよ?
今の心境というか、境地が嫌いじゃないし、昔に戻るって願ったって無理ですしね。
まあ、こういう前向きなメールなら、俺も読んでいて気持ちいいですよ。
せっかくこの時代に生まれたんだ。
この辺で心機一転、生まれ変わるつもりで幸せを見つけるのっていう人生も素敵じゃないですか。
俺はしほさんを始め、みゆきやセクラクララを無駄に嫌な気分にさせてしまい、結果去られてしまった男。
現状で未だこんな俺に関わろうとするなんて、実在を知る近くの人間だけだ。
誰が聞いてもどうしょうもない三角関係。
一番悪いのは男の古木英大。
その男を勝手に待っている馬鹿な女、牧田順子。
酷いのを知りながらも古木と共に暮らす影原美優。
彼女だけが深く心も身体も傷ついている。
生まれた頃から三十四年間。
あんな古木と一緒にいた一、二年前だけしか、縋れる思い出がないのこ?
気付けばいつの間にか俺は、影原美優へ同情していた。