ここ数年わたしの心にずっと残り続けている本があります。
もう何度も何度も読み返しましたし、これからも読み続けると思います。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」 ブレイディみかこ箸
アイルランド人の配偶者と中学生の息子を持つ著者は、英国に在住しています。白人だらけの「元底辺中学校」に入学した息子を著者と配偶者は心配しますが、その心配をよそに逞しく、ときにぶつかりながら成長する息子の姿を描く怒涛のノンフィクションです。
英国の学校生活が生々しくコミカルで、スピーディーなので飽きることなく、
多様な人種・経済格差・レイシズムに直面するたった11歳の男の子の奮闘が、とっても魅力的でとっても頼もしいのです!
この本の中で印象的だったエピソードを2つ紹介します。
印象的なエピソード1「アイデンティティは一つじゃなくていい」
アイデンティティとは、自己同一性。ある特定の集団への帰属意識というとイメージしやすいかもしれません。
白人の父親と日本人の母親、そして見た目は白人とも東洋人ともとれる英国在住の息子のアイデンティティはと考えたときに、元底辺中学校の校長先生が答えます。
「よく考えてみれば、誰だってアイデンティティは一つしかないってことはないはずなんですよ」
(中略)
分断とは、そのどれか一つを他者の身にまとわせ、自分の方が上にいるのだと思えるアイデンティティを選んで身にまとうときに起こるのかもしれない、と思った。
「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」より引用
印象的なエピソード2「誰かの靴を履いてみること」
元底辺中学校では、シティズンシップエデュケーションというカリキュラムの中で「エンパシー」について学ぶ授業があります。エンパシーは「他人の感情や経験などを理解する能力」と言われます。共感と似ていますが、単に共感することを表しているのではなく、「自分がその人の立場だったらどうだろうと想像することによって誰かの感情や経験を分かち合う能力」のことです。つまりエンパシーは、学んだりトレーニングをすることよって高めることができるのです。
エンパシーを高めるためには、「傾聴」「相手の話に耳を傾ける」ことが大切だそうです。
かっこいい息子とかっこいい著者「母ちゃん」
全体を通して感じるのはこの親子の関係性がとてもクリアであるということ。自分の想いを話せる、受け入れてもらえる関係性に感銘を受けました。粗雑な環境に負けず、さまざまなことを吸収し成長する息子と、その息子と共に成長する母ちゃんについつい憧れてしまったのは、三兄弟の母であるわたしです。
締めの文章がまた、とっても素敵だったので引用し、本の紹介を終えたいと思います!
まったく子どもというやつは止まらない。ずんずん進んで変わり続ける。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン。……いまのところは。
きっとこの色は、これからも変わり続けるに違いない。
「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」より引用
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