かつてたくましく煙を吐いていたこの町は、健康志向の町に変わっております。星もある程度きれいに見えております。だけど、あの頃の目線で今の煙のない町を見れば、おそらく希望の失せた停滞都市と映ることでしょうね。
とはいえ文明は進歩するものだし、きっと何か変わったところがあるはずだ。と探してはみるのですが、田んぼがなくなったり建物が高層化されたりした以外は、なかなかそれが見つからない。
確かに近郊に巨大なショッピングモールなどが出来てはいるのですが、その代償に駅前の百貨店や量販店はすべてなくなり、それに伴い駅前商店街はシャッター通りに成り果て、かつて毎日がお祭り騒ぎだった県内有数の繁華街は、閑散とした街になっています。
メイン道路の幅が広くなり、さらにその道路と並行して高架道路が街を走るようになり、慢性的な渋滞がかなり解消されています。その点は便利な町になったといえるでしょう。
しかし、それはあくまでも車社会での話です。かつて市民の足になっていた路面電車が廃止されたり、路線バスが減ったりしています。つまり、車がなければ不便な町になっているということですね。
そういう町を、ここに六十年以上住んでいるぼくは、「一進一退の町」と結論づけています。