前に歩いた時から変わったことといえば、気温だけではない。バッタがいなくなっていたのだ。二週間前には、ぼくの足元に絡みつくように、たくさんのバッタがいた。もう冬眠に入ったのだろうか。しかし、なぜか蝶は飛んでいた。
「もう冬なんだな」などと思いながら歩いていると、バッタではなく、コイツが足元に絡んできた。

『餌を与えないでください』と、区が貼り紙で訴えていた猫の一派だ。かなり多くの人が餌を与えているのだろう、絡みつき方が板についていた。しかしぼくは、区の仰せの通り餌を与えることはしなかった。猫もそれを察したのか、「ニャー」と言いながら、ぼくから離れていった。