奥様いらっしゃいますか？

　最近、嫁さんと休みが合うことが少なくなった。で、嫁さんを会社まで送ったあとは、いつも一人である。
　一人で家にいると気楽でいいのだが、面倒なこともある。何が面倒かというと、電話だ。
　嫁さんがいる時は、いつも嫁さんが電話の応対をやっているのだが、一人だと当然ぼくがでなければならない。勧誘電話の応対ばかりなので、本当に嫌である。

　さて、そういう電話の中に、嫁さん名指しの電話もある。もちろん友人知人、仕事関係者は携帯に電話するから、そういう電話ではない。かかるのはいつも銀行や保険、また化粧品の通販関係だ。

　その際、いつもこういうやりとりをやっている。
「しろげさんのお宅ですか？」
「はい、そうですけど」
「奥様いらっしゃいますか？」
「今日は仕事でいませんけど」
「ああ、そうですか」

　ここまではいいのだが、その次に決まってこういうことを聞かれるのだ。それは、
「あのー、失礼ですが、ご家族の方ですか？」である。
　先方は、ぼくの声を聞いて、外部からの侵入者だとでも思っているのだろうか。そこでぼくはこう答える。
「あのー、失礼ですが、『ご家族』以外の誰が電話に出るというのでしょうか？」
　すると先方は
「あのー、失礼しました」
　そう言って電話を切る。ホント、失礼である。