誰だか思い出せない。というか、知らない人だ。ということは『夢だ』と、単純でのんびりした性格だった当時のぼくは思い、また目を閉じた。
しかしおかしい。玄関のトントンは、ずっと続いているのだ。
『やはり夢じゃないのか』
と再び目を開けてみると、まだそこに先ほどのモンペ婆さんが立っている。
起き上がって「誰だ!?」と言おうとした。ところが体が動かない、声が出ない。その状況にイラついたぼくは、そのモンペ婆さんを振り払おうと、力任せに手を振った。その瞬間、場が変わったように感じた。と同時にモンペ婆さんはいなくなっていた。
玄関のトントンは現実だった。友だちが遊びに来たのだ。おそらくトントンの音に焦ったぼくが、異次元の扉を開いたのだろう。
で、モンペ婆さんは誰だったのか?
当時住んでいた所は埋立地で、家の裏には防空壕の跡があった。モンペ婆さんは間違いなく戦時中の格好をしていた。ということは、その頃に空襲か何かで亡くなった人だったのではないか。
十数年後にその場所を訪れてみると、家はすでに取り壊されており、跡地は駐車場になっていた。その時そこに一人のじいさんがやってきて、おもむろに塩を撒き始めた。ぼくが、
「何をやっているのですか?」と尋ねると
「あんたには見えんのですか?」と言った。
そのじいさん、一ヶ月後に死んだらしい。
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