広裕「『広裕と結那の鉄道相談室』へようこそ! 司会の那智広裕と」
結那「同じく司会の北浜結那です。よろしくお願いします」
広裕「さて、本日のテーマはずばり編成です」
結那「今更ではあるよね。どんな編成かって大事だし」
広裕「だよなあ。たとえば新潟の485系のT編成とR編成とか雲泥の差だよ」
(※T編成、R編成……新潟の485系においての俗称。原型を保つ300番台・1000番台からなるT11~T18編成と、リニューアルされ別物となった3000番台からなるR21~R28編成が所属しており、それぞれT編成、R編成と呼ばれていた。E653系の投入によりT編成は引退。)
T編成。
R編成。
結那「国鉄色のT18編成だったらもう歓喜ものだったね……広裕の場合喚起ものだったけど」
T18編成。
広裕「馬鹿野郎! 1500番台に会えて喜ばないやつは男じゃねえ!」
(※1500番台……前回紹介した北海道向けの番台。T18編成にはクハ481-1508が連結されていた。)
結那「この国の男女比率をおかしくしないで」
===========================================================================
広裕「『編成』の指す範囲は場合によって変わりますが、現在では『使用車両+組成(両数や組み込み位置)』を指して編成と呼ぶことが多いです」
結那「例えばさっきの新潟のR編成だと、こんな感じだね」
◇485系R編成 クハ481-3000+モハ485-3000+モハ484-3000+モハ485-3000+モハ484-3000+クロハ481-3000
広裕「これだと、「485系」「全車リニューアル済み=3000番台」「6両」「片側先頭が半室グリーン車」ってところが共通しているな」
結那「共通性のある車両組成のグループみたいなもの?」
広裕「大体そうだね。さっき挙げたT編成は300番台と1000番台とが交じってるし。一応例も挙げとこう」
◆485系T16編成 クハ481-351+モハ485-1020+モハ484-1020+モハ485-1045+モハ484-1045+クロハ481-1011
(クハ481-351が300番台。他が1000番台。)
結那「必ずしも車両の区別と編成の区別は一緒じゃないんだね」
広裕「編成として管理する一番のメリットは、編成で性能を統一させて運用しやすくさせることにある。だから、似た性能の場合、編成でまとめられることも多いんだよな。他だと日根野の223系0番台と2500番台の例がある」
(※223系0番台、2500番台……阪和線・関西空港線用の223系。関空快速用に0番台が登場し、後に東海道・山陽線の新快速用にマイナーチェンジを施した2000番台が登場。室内設備を0番台に準じた2500番台が追加製造されたが、4両→3両・5両→4両と移り変わる中で編成内で混在することとなった。車体形状などに差がある。)
◆223系H417編成 クモハ223-2501+サハ223-1+モハ223-2505+クハ222-2501
(サハ223-1のみが0番台。他が2500番台。さらに両端の2両はかつてサハ223-2501[今は別の編成(HE419)の中にいる]と組んでいた。)
結那「逆の例はあるの?」
広裕「うーん……例えば113系だと京都のC編成と広島のP編成が大体同じだけど……普通走る路線が違ったら別個扱いにするよね」
結那「ということは、「同じ地域を走る」「車種や性能がほぼ同一な」「運用を共通化できる」「管理された」車両グループってことでいいわけ?」
広裕「多分」
結那「多分って……」
広裕「仕方ないだろ。鉄道会社によって扱いがばらばらなんだから。車両両数と車両性能でしか見ないところもあれば、同じ車種でも組成車両で番号を変えるところもあるし」
結那「どこの京急と下関よ」
(※京急……京急は一部を除き形式に関係なく共通運用をしているが、形式ごとに記号は存在する。前者の例)
(※下関……下関総合車両所。広島運転所とあわせて国鉄広島とも。115系4両編成だけでC、H、O、R、L、Nの6種類[Lのみ広島運転所]があり、このうちC、H、O、Rの編成は共通運用。後者の例)
広裕「番号といえば、JRだとアルファベット+数字、私鉄は適当な車両番号にF(編成)をつけるのが普通だな」
結那「広裕、その言い方だといろいろ誤解されるから。まるで番号がはちゃめちゃみたいに言わないで」
広裕「えー、そう取る方が悪いじゃん……そこまでいうなら、なんか結那が例出してよ」
結那「じゃあ、さっきの話で出した京急と下関でも見てみる?」
◇京急1500形1700番台(8S) デハ1700+デハ1700+サハ1900+サハ1900+デハ1700+デハ1700+デハ1700+デハ1700
◆京急1707編成 1707+1708+1921+1922+1709+1710+1711+1712
(1700番台は1500形のVVVF版で、電動車は連番)
◇下関地域鉄道部(広セキ)C編成 クハ115+モハ115+モハ114+クハ115(4両のうち全車3扉で113系編入車を含まないグループ)
◆115系C16編成 クハ115-191+モハ115-2016+モハ114-2016+クハ115-218
結那「京急の場合、下り方向の先頭車の車番で呼ばれてます。1500形の8両編成には8Sの記号が与えられているけど、JRと違って編成ごとに記号がついているわけじゃないんだよね」
広裕「中にはその編成の中間車から編成が呼ばれるタイプもある」
結那「近鉄とかそうだね」
◇近鉄5200系(電算記号:VX) ク5100+モ5200+モ5250+ク5150
◆近鉄5205F 5105+5205+5255+5155
広裕「今まで電車だけをみてきたけど、他は編成の概念があんまりない。それこそ結那の好きな気動車なんて編成も何もないだろ」
結那「編成番号で管理されているって意味なら気動車も編成があるよ。あんまりないけど」
広裕「電車と違って、1両単位でつないだり切り離したりするからな。電車ほど管理するメリットはあまりないし」
結那「電車だと1両でも編成番号をつけて『編成』とするんだけどね……」
広裕「『1両編成』って本当はおかしいんだけどな。他とセットになって編成だろ」
結那「仕方ないよ。『列車』だって本当は複数両を指す言葉だし」
広裕「時代の流れってヤツか……」
結那「時代って言えば、さっき広裕が「現在では~」って話してたけど、あれは説明しなくていいの?」
広裕「あ、忘れてた……昔は今ほど編成というものは決まってなくて、毎日車両を差し替えてたから、組成ぐらいしか一定してなかったんだ。例えば……」
◇急行「すずらん」(札幌~函館) 1956年の登場時
スロ52+スハシ+スハ+スハ+スハ+スハフ
(参考:『中央本線&64写真館』より、主要列車編成表(omepage3.nifty.com/6480/page298.html))
結那「……あれ? 形式は?」
広裕「それがさっきも言ったように一定しなくてだな。時期的にスハはスハ45、スハシはスハシ29あたりだと思うんだけど、確証は持てん。もちろん『特定の日の編成』なら車号までわかるんだろうけど……」
結那「そういえば、急行と普通でまったく同じ車両を使用している時代だっけ」
(※まったく同じ……スハ32系、スハ43系などが該当。初めは急行に投入され、10年ほどで普通列車運用にまわるというのがこの時代の流れだった)
広裕「実際には格下げする頃には新しい車両が優等列車に投入されてるから同等とはいえないけど……臨時急行ではそれこそ普通列車並の編成だったらしい」
結那「格下げっていっても車内設備はそのままだしね」
広裕「これできっちり急行料金はとってるからな。今のぼったくり特急とは比較にならん」
(※ぼったくり特急……よく挙げられるのは「踊り子」(設備が昔の急行レベル)「はやとの風」(普通列車用のキハ40からの改造)「きりしま」(ほぼ各駅停車)だが、いずれも特急用車両が使用されているので、昭和の臨時急行よかマシである。)
結那「普通列車と同じ設備、時間もかかる、でもお金は取る……」
広裕「急行はもとより、戦前は特急ですらそんな感じだからな。さすがに使いまわすのは3等車位だったけど」
◇特急「燕」(東京~大阪) 1934年時点
スハニ35+スハ32+スハ32+スハ32+スハ32+スハ32+スシ37+スロ34+スロ34+スイテ48
(※実際は称号改正前なのでスハ32→スハ32800などですが、分かりやすさのため改正後の形式名としています)
結那「このスハニ35やスハ32のことだね」
(※スハニ35、スハ32……1930年代の製造だが、客車列車が終わりを迎えようとしていた1980年代後半まで残存した車両もある。)
広裕「「燕」は国鉄のフラッグシップトレインだった「富士」の次ぐらいの位置づけだった。おそらく『一つの列車に一つの編成』という概念を与えたのは、この二つの列車が最初だと思う」
(※燕の位置づけ……東京―下関の特急「富士」は朝鮮半島・シベリア経由の国際連絡列車の一翼を担っており、主に対外の客をメインとしていた。一方、東京―大阪の「燕」は両都市を最速で結ぶことを意識しており、一から十まで国内需要のための列車であった)
結那「「富士」専用編成、「燕」専用編成ってこと?」
広裕「そうそう。「燕」にいたっては機関車も専用だった」
(※機関車も専用……東京―名古屋では当初、大型動輪をもつ18900→C51が専任した。それでも客車は8両まで減らし、機関車の後ろに水槽車(ミキ20)を連結してまで停車を極力減らした。上の編成の時には電化が進んだため、EF53+C53となっている。)
結那「展望車もついていたからなおさらね」
広裕「そして戦後、こいつのコンセプトを電車も受け継ぐことになる」
結那「151系でしょ。12両で11車種っていう」
◇「つばめ」(東京―大阪) 1960年6月時点
クロ151+モロ151+モロ150+サロ150+サロ151+サシ151+モハシ150+モハ151+サハ150+モハ150+モハ151+クハ151
(※12両で11車種……当初クハ151、モハ151、モハシ150、サロ151だけだったところ、展望車の代わりとしてクロ151が、モーター比を挙げるためにモロ150/モロ151が、サロ151と一部設備を違えたサロ150が、全室食堂車が欲しくてサシ151が、ついでに12両にするためにサハ150が生まれ、カオスが完成した。ちなみに、サハ150がサハ151でないのは、室内の構造がモハ150と同じため。)
広裕「半分が2等車(現在のグリーン車)とか、戦前にもなかったぞこんな豪華列車」
結那「それだけ『編成』がもつ意味が大きかったってことなんでしょ」
広裕「今や2両でモノクラスとかざらにあるからなあ……」
(※2両でモノクラス……四国の「うずしお」、山陰の「スーパーまつかぜ」あたりが代表格。ただし、「うずしお」などは本数も多いので、特急がステータスだったこの時代とは事情が異なる。)
============================================================================
広裕「編成ついでに、編成略記号もついでに答えておくか」
結那「よくMとかTとかあるやつだね」
広裕「それそれ。大体形式と同じ感じだから、第1回の「車両形式」あたりを見てもらうとより分かるかもしれません」
結那「えーっと、これが一覧です」
○編成略記号
・基本となる記号
M……電動車。モーターのある車両。「モ」「クモ」に相当。
T……付随車。モーターのない車両。「サ」「ク」に相当。
D……あまり使われないが、駆動用ディーゼルエンジンを持つ車両(気動車におけるM車)。「キ」に相当。
・設備を表す記号(小文字または小さな大文字) 何もつかない場合、普通車=「ハ」に相当。
C……制御車。「ク」に相当。
S……グリーン車。「ロ」に相当。
N……寝台車。「ネ」に相当。
D……食堂車。「シ」に相当。
B……ビュッフェ車。「ハシ」に相当。
hs……半室グリーン車。Thsc→クロハ
p……付随車でパンタグラフつきの車両(※)
d……二階建て車両
P……郵便車
R……特別車、御料車
(※交流電車ではM車(主電動機搭載)+Tp車(MG/CPなど搭載)でユニットを組むことが多い)
・補助記号
数字……機器が異なる場合、略記号の後に添える
’……MM'ユニット方式におけるM'車につく。JRでは偶数形式の意味で’をつけることもある。
結那「今では使われていないのもあるし、設備の記号は大文字・小文字両方使うことがあるます。本当はDとかがかぶるからよくないんだけど……」
広裕「これに関しては、実際に見てもらったほうが早そうだな。結那、こいつを編成略記号に直してみて」
◇豊田車両センター189系
クハ189-0+モハ188+モハ189+モハ188+モハ189+クハ189-500
結那「はいはい。こんなの簡単でしょ」
Tc-M'-M-M'-M-Tc
広裕「じゃあお次はこいつで」
◇京阪8000系
8000+8100+8500+8800+8700+8550+8150+8050
結那「私鉄車両は正解がないから難しいけど……こんな感じかな」
Mc1-M2-T1-Td-T2-T1-M1-Mc2
広裕「じゃあここら辺で引っかけでも」
◇京葉車両センター205系(武蔵野線用・VVVF化編成)
クハ205+モハ205+モハ204+サハ205+サハ205+モハ205+モハ204+クハ204
結那「えーっと、Tc-M-M'-T-T-M-M'-T'cでいいの? あれ? そうするとパンタグラフの位置が189系と逆になっちゃうけど……」
広裕「いや、これであってるんだよ。MかM’の区別は主制御器がどっちにあるかで決まる(M車側)から。パンタグラフがどっちにあるのかは実は問題じゃないのさ」
結那「なんかM'車ってパンタグラフがあるイメージなんだけど……」
広裕「特急型はそれで合ってる。けど一般型では103系以来パンタグラフがあるのはM車だ」
結那「うーん、なんかこんがらがりそう……」
広裕「んじゃあ気休めに交流電車でもいっとく?」
◇京都総合運転所/金沢総合運転所683系
写真は4000番台
(0番台:6両+3両分割)クロ683+サハ682+モハ683+サハ683+サハ682+クモハ683 & クハ682+モハ683+クハ683
(4000番台:9両貫通)クロ683+サハ682+モハ683+サハ682+モハ683+サハ683+サハ683+サハ682+クモハ683
結那「それって気休めって言うの?」
(0番台)Tsc-Tp-M-T-Tp-Mc + Tpc-M-Tc
(4000番台)Tsc-Tp-M-Tp-M-T-T-Tp-Mc
広裕「Tp-Mが丁度MM'ユニットのM'-Mに相当しているな」
結那「交流電車ではユニットを組む必要はないのですが、その分変圧器などが場所をとるため、隣のT車に変圧器やパンタグラフを置いて場所の分散を図っています。今のところ交流電車で単独編成が出てない原因は、大体ここら辺だと思うよ」
(※ユニットを組む必要はない……交流モーターが小型なことに加え、粘着も高いことから、711系以降ユニット方式の電車は出てない。)
広裕「じゃあ、こいつで〆にしよう」
◇東急5000系
(手持ちがなかったので画像はWikipediaからお借りしました)
5100+5200+5300+5400+5500+5600+5700+5800+5900+5000
結那「うわー、ユニットと単独M車が混在するパターンだー。鬼だー(棒読み)……えいっ!」
Tc2-M2-M1-T3-T2-M2-M1-T1-M3-Tc1(5001Fのみ組成が異なるがここでは割愛)
広裕「M1-M2がユニット、M3が単独M車です。同じシステムを採用している例として、東武50000系などがあります」
結那「M車とT車の比率をMT比といいますが、この編成はMT比が丁度1:1になっています。単独M車があるのはこのためなんだね」
広裕「それはもう東武に8000系という大先輩がいますし」
(※東武8000系……東武の通勤型電車のスタンダードを築いた車両。その製造両数から私鉄の103系とも呼ばれる。MT比を1:1に固定したことが特徴で、Tc-M-M'-Tcの4両から製造が始まり、6両編成はTc-M-M'-T-M-Tc、8両編成はTc-M-M'-T-T-M-M'-Tc、2両編成がMc-Tcとなっている。)
4両編成は東上線などに残存。
結那「一応これまで出てきた電車のMT比もまとめてみたよ」
485系R/T編成……MT比4:2=2:1
223系4両編成……MT比2:2=1:1
京急1500形8両編成……MT比6:2=3:1
115系4両編成……MT比2:2=1:1
近鉄5200系……MT比2:2=1:1
151系12両編成……MT比6:6=1:1
189系6両編成……MT比4:2=2:1
京阪8000系……MT比4:4=1:1
205系武蔵野線VVVF8両編成……MT比4:4=1:1
683系9両編成……全体でMT比3:6=1:2
東急5000形……MT比5:5=1:1
広裕「MT比は単純な整数比になおすことが多い。おおむね2:1~1:2が普通かな」
結那「ということで、今回のテーマはここまで!」
広裕「来週もまた見てくださいねー」
結那「同じく司会の北浜結那です。よろしくお願いします」
広裕「さて、本日のテーマはずばり編成です」
結那「今更ではあるよね。どんな編成かって大事だし」
広裕「だよなあ。たとえば新潟の485系のT編成とR編成とか雲泥の差だよ」
(※T編成、R編成……新潟の485系においての俗称。原型を保つ300番台・1000番台からなるT11~T18編成と、リニューアルされ別物となった3000番台からなるR21~R28編成が所属しており、それぞれT編成、R編成と呼ばれていた。E653系の投入によりT編成は引退。)
T編成。
R編成。
結那「国鉄色のT18編成だったらもう歓喜ものだったね……広裕の場合喚起ものだったけど」
T18編成。
広裕「馬鹿野郎! 1500番台に会えて喜ばないやつは男じゃねえ!」
(※1500番台……前回紹介した北海道向けの番台。T18編成にはクハ481-1508が連結されていた。)
結那「この国の男女比率をおかしくしないで」
===========================================================================
広裕「『編成』の指す範囲は場合によって変わりますが、現在では『使用車両+組成(両数や組み込み位置)』を指して編成と呼ぶことが多いです」
結那「例えばさっきの新潟のR編成だと、こんな感じだね」
◇485系R編成 クハ481-3000+モハ485-3000+モハ484-3000+モハ485-3000+モハ484-3000+クロハ481-3000
広裕「これだと、「485系」「全車リニューアル済み=3000番台」「6両」「片側先頭が半室グリーン車」ってところが共通しているな」
結那「共通性のある車両組成のグループみたいなもの?」
広裕「大体そうだね。さっき挙げたT編成は300番台と1000番台とが交じってるし。一応例も挙げとこう」
◆485系T16編成 クハ481-351+モハ485-1020+モハ484-1020+モハ485-1045+モハ484-1045+クロハ481-1011
(クハ481-351が300番台。他が1000番台。)
結那「必ずしも車両の区別と編成の区別は一緒じゃないんだね」
広裕「編成として管理する一番のメリットは、編成で性能を統一させて運用しやすくさせることにある。だから、似た性能の場合、編成でまとめられることも多いんだよな。他だと日根野の223系0番台と2500番台の例がある」
(※223系0番台、2500番台……阪和線・関西空港線用の223系。関空快速用に0番台が登場し、後に東海道・山陽線の新快速用にマイナーチェンジを施した2000番台が登場。室内設備を0番台に準じた2500番台が追加製造されたが、4両→3両・5両→4両と移り変わる中で編成内で混在することとなった。車体形状などに差がある。)
◆223系H417編成 クモハ223-2501+サハ223-1+モハ223-2505+クハ222-2501
(サハ223-1のみが0番台。他が2500番台。さらに両端の2両はかつてサハ223-2501[今は別の編成(HE419)の中にいる]と組んでいた。)
結那「逆の例はあるの?」
広裕「うーん……例えば113系だと京都のC編成と広島のP編成が大体同じだけど……普通走る路線が違ったら別個扱いにするよね」
結那「ということは、「同じ地域を走る」「車種や性能がほぼ同一な」「運用を共通化できる」「管理された」車両グループってことでいいわけ?」
広裕「多分」
結那「多分って……」
広裕「仕方ないだろ。鉄道会社によって扱いがばらばらなんだから。車両両数と車両性能でしか見ないところもあれば、同じ車種でも組成車両で番号を変えるところもあるし」
結那「どこの京急と下関よ」
(※京急……京急は一部を除き形式に関係なく共通運用をしているが、形式ごとに記号は存在する。前者の例)
(※下関……下関総合車両所。広島運転所とあわせて国鉄広島とも。115系4両編成だけでC、H、O、R、L、Nの6種類[Lのみ広島運転所]があり、このうちC、H、O、Rの編成は共通運用。後者の例)
広裕「番号といえば、JRだとアルファベット+数字、私鉄は適当な車両番号にF(編成)をつけるのが普通だな」
結那「広裕、その言い方だといろいろ誤解されるから。まるで番号がはちゃめちゃみたいに言わないで」
広裕「えー、そう取る方が悪いじゃん……そこまでいうなら、なんか結那が例出してよ」
結那「じゃあ、さっきの話で出した京急と下関でも見てみる?」
◇京急1500形1700番台(8S) デハ1700+デハ1700+サハ1900+サハ1900+デハ1700+デハ1700+デハ1700+デハ1700
◆京急1707編成 1707+1708+1921+1922+1709+1710+1711+1712
(1700番台は1500形のVVVF版で、電動車は連番)
◇下関地域鉄道部(広セキ)C編成 クハ115+モハ115+モハ114+クハ115(4両のうち全車3扉で113系編入車を含まないグループ)
◆115系C16編成 クハ115-191+モハ115-2016+モハ114-2016+クハ115-218
結那「京急の場合、下り方向の先頭車の車番で呼ばれてます。1500形の8両編成には8Sの記号が与えられているけど、JRと違って編成ごとに記号がついているわけじゃないんだよね」
広裕「中にはその編成の中間車から編成が呼ばれるタイプもある」
結那「近鉄とかそうだね」
◇近鉄5200系(電算記号:VX) ク5100+モ5200+モ5250+ク5150
◆近鉄5205F 5105+5205+5255+5155
広裕「今まで電車だけをみてきたけど、他は編成の概念があんまりない。それこそ結那の好きな気動車なんて編成も何もないだろ」
結那「編成番号で管理されているって意味なら気動車も編成があるよ。あんまりないけど」
広裕「電車と違って、1両単位でつないだり切り離したりするからな。電車ほど管理するメリットはあまりないし」
結那「電車だと1両でも編成番号をつけて『編成』とするんだけどね……」
広裕「『1両編成』って本当はおかしいんだけどな。他とセットになって編成だろ」
結那「仕方ないよ。『列車』だって本当は複数両を指す言葉だし」
広裕「時代の流れってヤツか……」
結那「時代って言えば、さっき広裕が「現在では~」って話してたけど、あれは説明しなくていいの?」
広裕「あ、忘れてた……昔は今ほど編成というものは決まってなくて、毎日車両を差し替えてたから、組成ぐらいしか一定してなかったんだ。例えば……」
◇急行「すずらん」(札幌~函館) 1956年の登場時
スロ52+スハシ+スハ+スハ+スハ+スハフ
(参考:『中央本線&64写真館』より、主要列車編成表(omepage3.nifty.com/6480/page298.html))
結那「……あれ? 形式は?」
広裕「それがさっきも言ったように一定しなくてだな。時期的にスハはスハ45、スハシはスハシ29あたりだと思うんだけど、確証は持てん。もちろん『特定の日の編成』なら車号までわかるんだろうけど……」
結那「そういえば、急行と普通でまったく同じ車両を使用している時代だっけ」
(※まったく同じ……スハ32系、スハ43系などが該当。初めは急行に投入され、10年ほどで普通列車運用にまわるというのがこの時代の流れだった)
広裕「実際には格下げする頃には新しい車両が優等列車に投入されてるから同等とはいえないけど……臨時急行ではそれこそ普通列車並の編成だったらしい」
結那「格下げっていっても車内設備はそのままだしね」
広裕「これできっちり急行料金はとってるからな。今のぼったくり特急とは比較にならん」
(※ぼったくり特急……よく挙げられるのは「踊り子」(設備が昔の急行レベル)「はやとの風」(普通列車用のキハ40からの改造)「きりしま」(ほぼ各駅停車)だが、いずれも特急用車両が使用されているので、昭和の臨時急行よかマシである。)
結那「普通列車と同じ設備、時間もかかる、でもお金は取る……」
広裕「急行はもとより、戦前は特急ですらそんな感じだからな。さすがに使いまわすのは3等車位だったけど」
◇特急「燕」(東京~大阪) 1934年時点
スハニ35+スハ32+スハ32+スハ32+スハ32+スハ32+スシ37+スロ34+スロ34+スイテ48
(※実際は称号改正前なのでスハ32→スハ32800などですが、分かりやすさのため改正後の形式名としています)
結那「このスハニ35やスハ32のことだね」
(※スハニ35、スハ32……1930年代の製造だが、客車列車が終わりを迎えようとしていた1980年代後半まで残存した車両もある。)
広裕「「燕」は国鉄のフラッグシップトレインだった「富士」の次ぐらいの位置づけだった。おそらく『一つの列車に一つの編成』という概念を与えたのは、この二つの列車が最初だと思う」
(※燕の位置づけ……東京―下関の特急「富士」は朝鮮半島・シベリア経由の国際連絡列車の一翼を担っており、主に対外の客をメインとしていた。一方、東京―大阪の「燕」は両都市を最速で結ぶことを意識しており、一から十まで国内需要のための列車であった)
結那「「富士」専用編成、「燕」専用編成ってこと?」
広裕「そうそう。「燕」にいたっては機関車も専用だった」
(※機関車も専用……東京―名古屋では当初、大型動輪をもつ18900→C51が専任した。それでも客車は8両まで減らし、機関車の後ろに水槽車(ミキ20)を連結してまで停車を極力減らした。上の編成の時には電化が進んだため、EF53+C53となっている。)
結那「展望車もついていたからなおさらね」
広裕「そして戦後、こいつのコンセプトを電車も受け継ぐことになる」
結那「151系でしょ。12両で11車種っていう」
◇「つばめ」(東京―大阪) 1960年6月時点
クロ151+モロ151+モロ150+サロ150+サロ151+サシ151+モハシ150+モハ151+サハ150+モハ150+モハ151+クハ151
(※12両で11車種……当初クハ151、モハ151、モハシ150、サロ151だけだったところ、展望車の代わりとしてクロ151が、モーター比を挙げるためにモロ150/モロ151が、サロ151と一部設備を違えたサロ150が、全室食堂車が欲しくてサシ151が、ついでに12両にするためにサハ150が生まれ、カオスが完成した。ちなみに、サハ150がサハ151でないのは、室内の構造がモハ150と同じため。)
広裕「半分が2等車(現在のグリーン車)とか、戦前にもなかったぞこんな豪華列車」
結那「それだけ『編成』がもつ意味が大きかったってことなんでしょ」
広裕「今や2両でモノクラスとかざらにあるからなあ……」
(※2両でモノクラス……四国の「うずしお」、山陰の「スーパーまつかぜ」あたりが代表格。ただし、「うずしお」などは本数も多いので、特急がステータスだったこの時代とは事情が異なる。)
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広裕「編成ついでに、編成略記号もついでに答えておくか」
結那「よくMとかTとかあるやつだね」
広裕「それそれ。大体形式と同じ感じだから、第1回の「車両形式」あたりを見てもらうとより分かるかもしれません」
結那「えーっと、これが一覧です」
○編成略記号
・基本となる記号
M……電動車。モーターのある車両。「モ」「クモ」に相当。
T……付随車。モーターのない車両。「サ」「ク」に相当。
D……あまり使われないが、駆動用ディーゼルエンジンを持つ車両(気動車におけるM車)。「キ」に相当。
・設備を表す記号(小文字または小さな大文字) 何もつかない場合、普通車=「ハ」に相当。
C……制御車。「ク」に相当。
S……グリーン車。「ロ」に相当。
N……寝台車。「ネ」に相当。
D……食堂車。「シ」に相当。
B……ビュッフェ車。「ハシ」に相当。
hs……半室グリーン車。Thsc→クロハ
p……付随車でパンタグラフつきの車両(※)
d……二階建て車両
P……郵便車
R……特別車、御料車
(※交流電車ではM車(主電動機搭載)+Tp車(MG/CPなど搭載)でユニットを組むことが多い)
・補助記号
数字……機器が異なる場合、略記号の後に添える
’……MM'ユニット方式におけるM'車につく。JRでは偶数形式の意味で’をつけることもある。
結那「今では使われていないのもあるし、設備の記号は大文字・小文字両方使うことがあるます。本当はDとかがかぶるからよくないんだけど……」
広裕「これに関しては、実際に見てもらったほうが早そうだな。結那、こいつを編成略記号に直してみて」
◇豊田車両センター189系
クハ189-0+モハ188+モハ189+モハ188+モハ189+クハ189-500
結那「はいはい。こんなの簡単でしょ」
Tc-M'-M-M'-M-Tc
広裕「じゃあお次はこいつで」
◇京阪8000系
8000+8100+8500+8800+8700+8550+8150+8050
結那「私鉄車両は正解がないから難しいけど……こんな感じかな」
Mc1-M2-T1-Td-T2-T1-M1-Mc2
広裕「じゃあここら辺で引っかけでも」
◇京葉車両センター205系(武蔵野線用・VVVF化編成)
クハ205+モハ205+モハ204+サハ205+サハ205+モハ205+モハ204+クハ204
結那「えーっと、Tc-M-M'-T-T-M-M'-T'cでいいの? あれ? そうするとパンタグラフの位置が189系と逆になっちゃうけど……」
広裕「いや、これであってるんだよ。MかM’の区別は主制御器がどっちにあるかで決まる(M車側)から。パンタグラフがどっちにあるのかは実は問題じゃないのさ」
結那「なんかM'車ってパンタグラフがあるイメージなんだけど……」
広裕「特急型はそれで合ってる。けど一般型では103系以来パンタグラフがあるのはM車だ」
結那「うーん、なんかこんがらがりそう……」
広裕「んじゃあ気休めに交流電車でもいっとく?」
◇京都総合運転所/金沢総合運転所683系
写真は4000番台
(0番台:6両+3両分割)クロ683+サハ682+モハ683+サハ683+サハ682+クモハ683 & クハ682+モハ683+クハ683
(4000番台:9両貫通)クロ683+サハ682+モハ683+サハ682+モハ683+サハ683+サハ683+サハ682+クモハ683
結那「それって気休めって言うの?」
(0番台)Tsc-Tp-M-T-Tp-Mc + Tpc-M-Tc
(4000番台)Tsc-Tp-M-Tp-M-T-T-Tp-Mc
広裕「Tp-Mが丁度MM'ユニットのM'-Mに相当しているな」
結那「交流電車ではユニットを組む必要はないのですが、その分変圧器などが場所をとるため、隣のT車に変圧器やパンタグラフを置いて場所の分散を図っています。今のところ交流電車で単独編成が出てない原因は、大体ここら辺だと思うよ」
(※ユニットを組む必要はない……交流モーターが小型なことに加え、粘着も高いことから、711系以降ユニット方式の電車は出てない。)
広裕「じゃあ、こいつで〆にしよう」
◇東急5000系
(手持ちがなかったので画像はWikipediaからお借りしました)
5100+5200+5300+5400+5500+5600+5700+5800+5900+5000
結那「うわー、ユニットと単独M車が混在するパターンだー。鬼だー(棒読み)……えいっ!」
Tc2-M2-M1-T3-T2-M2-M1-T1-M3-Tc1(5001Fのみ組成が異なるがここでは割愛)
広裕「M1-M2がユニット、M3が単独M車です。同じシステムを採用している例として、東武50000系などがあります」
結那「M車とT車の比率をMT比といいますが、この編成はMT比が丁度1:1になっています。単独M車があるのはこのためなんだね」
広裕「それはもう東武に8000系という大先輩がいますし」
(※東武8000系……東武の通勤型電車のスタンダードを築いた車両。その製造両数から私鉄の103系とも呼ばれる。MT比を1:1に固定したことが特徴で、Tc-M-M'-Tcの4両から製造が始まり、6両編成はTc-M-M'-T-M-Tc、8両編成はTc-M-M'-T-T-M-M'-Tc、2両編成がMc-Tcとなっている。)
4両編成は東上線などに残存。
結那「一応これまで出てきた電車のMT比もまとめてみたよ」
485系R/T編成……MT比4:2=2:1
223系4両編成……MT比2:2=1:1
京急1500形8両編成……MT比6:2=3:1
115系4両編成……MT比2:2=1:1
近鉄5200系……MT比2:2=1:1
151系12両編成……MT比6:6=1:1
189系6両編成……MT比4:2=2:1
京阪8000系……MT比4:4=1:1
205系武蔵野線VVVF8両編成……MT比4:4=1:1
683系9両編成……全体でMT比3:6=1:2
東急5000形……MT比5:5=1:1
広裕「MT比は単純な整数比になおすことが多い。おおむね2:1~1:2が普通かな」
結那「ということで、今回のテーマはここまで!」
広裕「来週もまた見てくださいねー」
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