清潔感あふれる構内を真っ直ぐに歩くと、目の前に大きく関西空港駅の文字が見えます。
関西空港のアクセスは鉄道とバスです。鉄道はJRと南海の二つが乗り入れています。ライバル会社ですが、駅の入り口はこのように一つです。
今回はルートの都合と運賃の兼ね合いから南海を選択しました。ひとまず難波まで向かいます。
改札前に据え置かれた『ひきだし上手』なるATMからお金を引き出しました。ほぼすべてのカードに対応しているそうです。
ホームにいたのは2000系。2ドア・4両編成の、通勤型にしては異質な車両です。元は高野線の『超』急勾配区間(通称:大運転)用に造られた車両ですが、需要が少ない山岳地帯で4両の車体をもてあましていたため一部が南海本線系統に転属しています。この2001形は2000系のトップナンバーです。
こうした車両はマニアの中で『初番』と呼ばれ、他よりも注目を集めるのですが、人気のさみしい関西空港では見向きもされません。昼間は普通・空港急行・ラピート(全車指定の特急)がほぼ10分ごとに出ていますが、ロングシートの車内は閑散としていました。本線と繋がる泉佐野止まりの普通とはいえ、空港アクセス鉄道ががら空きなのは由々しき事態です。
隣のホームには関空快速が停まっています。前の改正で増便(20分おき→15分おき)された関空快速ですが、こちらも乗車率は芳しくない様子。LCCで賑わうのかがどうかが今後の鍵でしょう。
それでは、2000系で本州を目指しましょう。
[関西空港11:54→泉佐野12:03]
関西空港は人工島にあります。わざわざ海上に造られたのは、伊丹空港で騒音問題があったからなのですが、皮肉なことに伊丹空港のせいで国内線が伊丹に流れ関空発着便が少ないという現象も起きています。伊丹空港から大阪の中心部に直接行ける鉄道はないのに(モノレール+阪急が最短)、です。
関西空港から大阪に行くにはまず海を渡るのですが、なんとここではJRと南海が同じ線路を使っています。両者とも直流1500V・1067mmゲージを使っているためです。駅を出てすぐ、関空快速とすれ違いました。
同じ線路を使用するのはこれが初めてのことではありません。かつて大阪から紀伊半島に向かっていた準急「きのくに」は、国鉄に合わせた車両を南海が製造して、国鉄線に乗り入れていました。
なお、この供用区間では線路は新関西国際空港(関空を管理する会社)が所有して、そこにJRと南海が乗り入れる方式をとっています。
関西空港を発車してすぐに橋に差し掛かります。下が線路、上が道路の二層構造です。
車窓からは対岸の泉佐野市がはっきり見えます。外は快晴、天気は上々です。
10分ほどで対岸のりんくうタウンに到着。この駅でJRと分かれます。内側2線がJR,外側2線が南海です。
泉佐野に到着しました。ここで本線の急行を待ちます。ドア・トゥ・ドアの対面乗り換えです。
南海電鉄は1884年創業の日本最古の純民間私鉄として知られています(私鉄としては、後の東北本線・高崎線を作った日本鉄道が先行)。大阪と和歌山を結ぶ南海本線と、高野山を目指す高野線の2本を軸にして全長約150kmもの路線を運行しています。できた路線の経緯と、高野線の「大運転」があるため、本線系統と高野山系統の二つに大別されます。ちなみに南海というのは南海道のことで、大阪から和歌山を経て四国に渡り阿波(現在の徳島県)・土佐(現在の高知県)、さらにその先の九州は日向(現在の宮崎県)、大隅・薩摩(現在の鹿児島県)を表します。南海は徳島県まで視野に入れた野望ある私鉄だったのです。現在も子会社の南海フェリーが和歌山から徳島に向かうフェリーを運行しています。
[泉佐野12:10→難波12:49]
やってきた電車は和歌山市発の区間急行難波行。急行と区間急行の違いは、泉佐野以北だけでみれば途中の春木駅のみ(急行は通過)。春木駅に停車する空港急行との兼ね合いなのでしょう。最新型の8000系で大阪の地を目指します。
最新型、のはずの8000系のインバータは、JR東日本ではすでに引退してしまった201系を彷彿とさせます。最近の車両にありがちな水のように滑らかなインバータとは違います。決して南海が古いインバータを再移用しているわけではなさそうですが……
途中の岸和田で後発のラピートを待ったものの、ほぼ全区間で回送をつづけました。2000系の普通列車とすれ違い終着難波駅に到着しました。
改札に向かう途中には、高野線の学文路(かむろ)駅を必勝入場券の案内がありました。受験生だった一年前に買えてればなあ……
ちなみに、この手の入場券は学文路だけではなく、徳島線の学(がく)や松浦鉄道の大学(だいがく)、飯田線の鼎(かなえ→叶え)を始め、たくさんあります。
おなかが空いたので、難波駅を出てすぐのところにある立ち食いそば屋に入りました。
入って目にしたのがこれ。割りばしが限界まで盛られています。バランスもさることながら、ここまで盛って、それをカウンターしかない店内に4つも置く必要があるのでしょうか。
頼んだのはこちら。その名も『和風坦々うどん』。名前が気になって注文したのですが、通常のかけうどんに、鷹の爪入りの肉みそが載った代物です。関西らしい透明でさっぱりとしたつゆに、この肉みそがベストマッチ。お値段は400円(大盛りはプラス50円)、お手頃です。
おなかが満たされたところで、地下鉄御堂筋線の改札をめざし、地下に続く階段を下ります。
難波は南海、近鉄、阪神、大阪市営地下鉄(御堂筋+四ツ橋+千日前線)、JRが交差するターミナルで、高架の南海を除いて全て地下にあります。おまけに位置もばらばらなので、難波駅の地下1階は迷路のように入り組んでいます。案内板を見ても訳が分かりません。
そんな時に見つけたこのポスター。
「芸人なめとんとちゃうかー!?」
……と静岡人ながら叫びたくなりました。
この後数分後に御堂筋線の改札を見つけられなかったら腹立たしさで破いていたかもしれません。
[なんば(時刻不明)→淀屋橋(時刻不明)]
先ほど難波をひとくくりに紹介しましたが、地下鉄は「なんば」が正式名称になっています。同じく近鉄は「近鉄難波」、阪神が「大阪な難波」、南海はシンプルに「難波」です。しかし、近鉄と阪神は同じ駅を使っているので「近鉄難波」=「大阪なんば」で、地下鉄の「なんば」は札幌の大通のようなホームが離れた構造なので同じ駅とは言い辛く、その輪から外れたところにJR難波が……って、ややこしいわっ!
やってきた10系電車に乗り込んで北へ向かいます。
5分ほどで淀屋橋の到着。
きらびやかなシャンデリアが天井から垂れていますが、ここはホームです。
写真後方に見える階段のように、中にもう一層分の空間が作れるくらい天井が高いですが、ここは地下のホームです。
異常なまでに高い天井と地下鉄の駅に似つかわしくない豪奢なシャンデリアは、大阪市が御堂筋線が出来たときからあるものです。当初から金の無駄遣いと言われましたが、将来御堂筋線が基幹交通となることを見越して造ったそうです。同じ構造は同時期に開業した梅田やなんばなどにも見られます。
ちなみに、開業当初は6両編成だったにも関わらず、すでに12両に対応できるホームが作られていました。まるで、現在の御堂筋線(全列車10両)を見透かしていたかのように。同時期に開業した東京メトロ日比谷線が、できるだけ道路の下を通そうとした結果急カーブだらけになり、後に車両限界の壁にぶつかったのとは対称的です。
淀屋橋は、「大阪市役所最寄り駅」の案内からわかる通り、大阪の中心です。年末の昼でも、多くの人が地下通路の中をせわしく動き回っています。その殆どはスーツ姿。一人旅自宅の私は浮いていたことでしょう。
ここからは京阪に乗り換えることにします。
次の記事が長くなりそうなので、続きは次回に。
10系「じゃあね」
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