将棋王 ツメルモンスターズ

目指せ真の詰キスト!
主に短編詰将棋について書きます

ハム将棋VSハム将棋を最強AIで解析してみた

2019-10-29 20:00:10 | AI実戦
ハム将棋について・・・
某永世七冠 「めちゃくちゃ弱い。なにしろハムスターですからねぇwww」
世間一般 「本当の初心者にハム将棋は厳しい」
悪い知人 「ハム将棋でソフト指ししたら、(某有名ネット対局場)4級に勝てた」
ハム廃人 「裸玉でも勝てる」


その実力には諸説あるハム将棋。
改めて確かめてみようと思い、ハム将棋VSハム将棋を1局観戦し、棋譜を最強AI先生に解析していただくことにしました。

まず評価値の推移をご覧いただきましょう。



なんじゃこりゃ! ってくらい荒ぶっていますねぇw 
一手指すたびに指した方が1000点以上評価値が下がる。プロ将棋とはまた一味違うスリリングな見ごたえがあります。

対局をハイライトでご紹介しましょう。



戦型は角換わり。ハムは手損してでも角交換をしたがります。
そしてその上で棒銀にするのですが、なぜか△6四歩を必ず突きます。
本局はここから先手ハムが▲6三角から馬を作って指しやすくなりました。




直前▲2四歩△同 歩▲7五歩△同 銀と進んだところ。
ここで▲2五歩と打ち十字飛車を狙うことができればハムも立派な中級者以上だ!
と期待して見ていたのですが、▲3七銀とあっさり見逃します。
ここから、解説しきれないほどの珍手のオンパレードで、形勢は七転八転しますが、ようやく先手にチャンスが到来します。




「中段玉寄せにくし」の格言の通り、ここは先手玉に対する寄せがなく先手勝勢。
△8七成香と角を取っても追いつきません。
しかし、先手ハムはここから▲7八角と逃げてしまったため△同 金▲同 飛△8七角の王手飛車を食らい一気に逆転しました。




最終盤、正確に寄せ切れば後手勝ちの局面。
ここで△5五桂と上部脱出を防いでいれば先手玉は寄っていました。
しかし、後手ハムはセオリーに反して△5九金と下から迫ったため▲4七玉△4九龍▲5六玉と脱出され、今度こそ先手必勝形に。
以下は途中幾度となく即詰みを逃しつつも、最終的には先手ハムが後手玉を寄せきりました。151手の大熱戦でした。



おお、けっこう面白い!
野球に例えるならプロ将棋が投手戦なのに対し、ハムミラーは乱打戦という感じがします。

最後に、ハムの実力や特長に対する私見をまとめておきます。
・角換わり棒銀に偏った戦型選択
・棒銀を繰り出す前に△6四歩(▲4六歩)を突く。意図は不明。
・駒を取る手を重視する。
・詰将棋が極端に苦手。
・総合的に見て東大将棋8の10級よりやや強く8級より弱い。

なぜAIは振り飛車を評価しないのか?

2019-10-27 15:34:06 | 将棋雑学
振り飛車党で今この記事を読まれている方。あくまでにAIの解析を解釈しているだけで、私個人の意見ではありませんので、どうか気を悪くされませんように・・・



ご存知の方も多いと思いますが、ほとんどの最新将棋AIは基本的に振り飛車を指しません。飛車を振ると100~200点評価値が下がります。
この件について、考察します。


こんな説があります。「振り飛車は飛車の動きで1手損するので、その分評価値が下がる」と

しかし、初手から任意の筋に飛車を振ると評価値は-100台なのに対し、初手でパスをすると(ルール上できませんが、仮にできたとした場合)-2桁で収まります。

したがって手損だけでなく、飛車の位置が変わること自体もマイナス評価になっているのです。


もっと言えば、少なくとも最序盤において「飛車のベストポジションは初期位置(居飛車)である」というのがAIの考えです。


素朴に考えてみましょう。
Q 初形において後手陣の最大の弱点はどこでしょうか?
A 2三の角頭です。
Q では2三を狙うに当たって、飛車はどこにいるのが良いでしょうか?
A 答えは2筋です。


極めつけはこれ。先手で▲7八飛の一手を得できている局面を仮定。



何と候補手の中に▲2六歩や▲2八飛があります。1手得の三間飛車と1手損の居飛車を大体同じに評価するとは・・・
とにかくAI先生は居飛車がお好きなようです。

将棋の初手最悪手が▲8六歩であることの証明

2019-10-27 13:38:30 | 将棋雑学
初手の最悪手は何か?たまに話題になりますよね(ならないか)

AI解析の結果は▲8六歩が最悪手で、評価値は-227でした。

ただこの問題、人によっては▲5八金左(-145)や▲7八銀(-56)、▲9八香(-132)を挙げるかもしれません。*()内は評価値

今回は、評価値以外の方法で、どっちがより悪手か判定する方法をご紹介します!



初手の悪手を、次の2種類に分類します。

①可逆手…手損すれば良形に戻せる。例えば初手▲6八金は後に▲7八金とすれば良形で、この場合損した手数は1。
②不可逆手…手損しても良形に戻せない。▲7八銀や▲9八香、▲1八香など。

②の不可逆手については悪手度の比較は難しいですが、①の可逆手については損した手数に応じて悪手度を比較できます。
よく最悪手候補として上げられる▲5八金左は可逆手で2手損です。(▲6八金~▲7八金の2手で良形に戻せる)

①に分類できる手の大半は1手損か2手損です。



では、本題。初手▲8六歩は可逆でしょうか?不可逆でしょうか?
一見不可逆ですが、自然に手数を進めると部分的に定跡形と合流できることから、可逆とみなすこともできます。ちょっと強引かもしれませんが。

そして可逆とみなしたときの手損数は…なんと3!ホンマかいな?

下の図を見比べてください。



左は初手から▲8六歩△8四歩▲7八金△8五歩▲同歩△同飛▲8七歩
右は初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲3八銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8五飛▲5八玉(相掛かりの一例)

左と右の差、後手は△3二金の1手が入っただけですが、先手は4手も進んでいるので、やはり3手の差があります。

故に3手損の▲8六歩は2手損の▲5八金左よりも悪手なのです。不可逆手との比較は難しいですが、可逆手グループの中では断トツの最悪手と言えます!

AI流 相掛かり△8五飛戦法

2019-10-24 00:23:54 | 相掛かり




AI先生(後手)との対局より
後手番。一見無難な立ち上がりに見えますが、ここから予想外の仕掛けを食らいます。

△1三桂!▲3八金△2五飛



何だこれは・・・。
露骨に飛車ぶつけを狙った一着で、▲3八金と自陣の隙を少なくしても尚△2五飛と指されました。

正直、第一感無理気味だと思いました。というのも▲同飛△同桂▲2八銀と進行したとき、いかにも後手の桂馬は無駄死にしそうだからです。



ところが実戦は△7二銀▲8五飛△1七桂不成▲同銀△8三歩と進行し、桂損にも関わらず、何とこれで評価値が-200~300で「後手指せる」となっているのです。



確かに言われてみれば、後手は歩を2枚得していますし、飛車も持ち駒に温存できています。▲8二角は△9二飛で無効なので、後手陣に角打ちの隙はありません。現状先手陣に飛車打ちの隙はなさそうですが、△1五歩以下端歩を伸ばしていけばその隙を作り出せそうです。そうなると、働きの弱い盤面の先手飛車と、後手の持ち飛車との間にはだいぶ価値の差がありそうです。以上これらの+が桂1枚より大きいということですか、なるほど~。

角換わりのコツ 一度攻めると決めたら怯まず攻めよ!(プロ棋士との指導対局より)

2019-10-24 00:18:05 | 角換わり
プロ六段の先生との指導対局(平手)より

私の先手で▲4五桂急戦を仕掛けた中盤戦
▲7九玉などの陣形整備が得になるかわからないので、思い切って▲7五歩と仕掛けたところ、当然△6五桂と銀取りに反撃されました。



さて、ここで次の一手を考えてみてください。
A ▲6六銀  B ▲6五同銀  C ▲2二歩










正解は・・・ 









A、以外です。
(BとCは狙い筋は同じでどちらも有力)



切り合いを恐れて実戦で私はAを選んだのですが△8六歩以下攻守が逆転(ただし、この段階ではまだ互角)し、最終的に一手負けとなりました。

この局面、先手陣には右辺の拠点と7六の傷があり、既に受けに回るには適さない格好です。局面の流れに反するという意味でもAの▲6六銀は悪手でした。

一方で先手からは▲2二歩~▲3四桂が厳しい攻め筋です。対局中はBorC以下銀を渡すと△4七銀や△3七銀の反撃が怖いと思っていましたが、手番は先手なので強気に攻め合えば先手が有望だったようです。(AIの解析では先手+600点くらい)

角換わりは互いに角を持ち合っているので攻撃力が高く、一度攻めが急所に入ると中途半端な受けはなかなか効かないという特徴があります。
本局の場合、互いに桂打ちに弱い&桂が質駒になっているという状況でもあったので、何が何でも先に相手の桂を喰いちぎって踏み込むべした。

プロの先生はこういったことが読まなくてもわかっていらっしゃるので、その差がそのまま勝敗の差につながってしまった感じですね。プロ棋士の大局観には毎回毎回驚かされます。