風情のある物を見ると思い出す。
長野の親戚の老夫婦。
小さい私を可愛がってくれた。
おばあさんはいつも着物を凛として着ており、
おじいさんもオシャレな洋服を着ていて、
昔はさぞ美男美女だったろうと一目でわかる夫婦だった。
おばあさんは、日本舞踊、着物、三味線など、若い頃は教えていたらしい。
おばあさんの足が弱くなったせいもあって、いつも手をつないで歩いていた。
おじいさんは、昔の人間とは思えないほど優しく、おばあさんにお茶を入れて
持ってくるのを何度も見た。
すると、おばあさんはいつも「恐れ入ります。」と深く頭を下げていた。
生活に風情があった。
本当に仲がよかった。
仲がよすぎて、おばあさんが亡くなった時、
おじいさんは生きていることができなかった。
百歳に 老い舌出でて よよむとも
我はいとはじ 恋は増すとも
大伴宿禰家持