「ギターはお前のほうが巧いよなあ 俺そんな正確に弾けねえもん」
20代前半。あの頃、何度かそれを彼に言われたことがある。
嬉しかったが、自覚はなかった。
まあ僕は六畳一間で1日中自慢のエレアコ ヤマハAPX-10を抱えていて
動かす指は、アルペジオやスリーフィンガーが9割だった。
野球少年が常にバットやグローブやボールを家の中でも触っているように。
キャプテン翼が家の中でもボールとトモダチでい . . . 本文を読む
14歳で 初めてアコースティックギターを持った。
親戚からもらった、ヤマハのFG-301(77年製 と推測)という型番だった。
新品当時で18,000円くらいらしい。
19歳で 初めて新品のギターを買った。 ヤマハのエレアコ APX-10という型番だ。
新品定価100,000円を 三鷹のROCK-INNで85,000円にしてもらったのだった。
対して、彼が弾いていたのはエピフォンの、思い出すと「 . . . 本文を読む
思い返すと、学生時代の「前半は」さほど、暮らしが乱れていなかったのだなと思う。
たかが23時なのに、「そろそろ寝よう」と思ったのだから。
俺だけん、会わせたいひとがいるんだ
今飲んでる。出てこいよ
電話の向こうで
いかにも居酒屋チックな歓喜が聴こえる
その日彼が飲んでいた らいふはうすのろ がある吉祥寺という街は
武蔵境から中央線で二駅。自転車でも行けてしまう。
即ち、終電ないから . . . 本文を読む
学生時代、自炊をして暮らしていた。
電子レンジで飯を炊き
フライパンでサンマを焼いて
インスタント味噌汁をお湯で溶けば
立派な夕飯だった。
その夜は、加えて他にも二品くらいおかずがあったと思う。飯もお代わりした。
そんな夕飯が八割方食べ終わった頃 電話が鳴った。
俺だけん、大変なことになった・・
相変わらず電話での彼の一人称は『俺』だったが
いつもとは少し声のトーンが違った。
話 . . . 本文を読む