ということで、三菱i(アイ)のプチインプレ、インテリア編です。インテリアで一番目に付くのは、赤い装飾を施されたインパネとレッド地のシートでしょう。個人的には、スポーティで良いと思いますが、好き嫌いが分かれると思います。これは新車時にはグレー地と選択できました。またメーカーオプションで、ブラックインテリアを選択することも可能で、それらだと印象はまたかなり異なります。
基調となっているのは、濃いグレーとグレーで、ドアの内側など広い面積がグレーで構成されていることから、グレーの印象が強いでしょうか。最近の軽だと柔らかい感じや高品質感を表現するためにベージュが多用される傾向にありますが、あまり女性受けするような柔らかい感じやファンシーな感じはしない。
一応、車体高が1600㎜あるステーションワゴンなので、リア席は広くはないが狭くもない。室内長 x 室内幅 x 室内高は、 1,790 x 1,270 x 1,250なので今どきのハイトワゴンと比べると狭いと感じるだろうが、ミッドシップやRRの車だと、後席はあってもエマージェンシーシートというのが普通なので、そう考えれば十分な広さは確保されている。ただリアエンジンの上に乗っかっている関係で、シート位置が高かったりする。
それでは、i(アイ)に乗り込みます。フロントガラスの面積が広いため、かなり開放感はあって窮屈な感じはしない。特にフロントにエンジンがない関係で前席は足元が広くなっているので、ドライバーの視点からだと広いと感じると思います。
インパネの質感は、プラスチッキーであまり高いとはいえない。カラーの問題もありますが、この2006年頃という年式を考えれば、軽自動車の内装の質感は今ほどには求められていなかった。今時の、N-BOXカスタムとかデイズルークスなどのように、内装に普通車並みの質感を持った車から比べると、いかにも軽自動車というような質感。後付のナビとかモニター類を付ければ、多少はましになるのでしょうが。ただこれは普及グレードMの内装なので、高グレードG、Tだと本革ハンドルや本革のシフトノブが付くため質感が上がる。
この車では、スパルコのレザーのハンドルカバーとカシムラの本革シフトノブ、社外品の革製のハンドブレーキカバーを装着している。
メーターは、全グレードアナログのタコメーターにデジタルのスピードメーターを重ねたコンビネーションメーター。このようなタイプは、
S660とか
CR-Z、
アバルト500など、スポーティなモデルで最近良く使われている。まだ液晶モニターとかが軽自動車に使われる時代でもなかったため、こちらも質感はいまいち。100均のデジタル時計みたいだと評したインプレもあった。ただ、写真で見るよりは実際は立体的で、スポーティな感じはある。
スイッチを入れると徐々に明るくなり、遅れてデジタル表示が浮かび上がる演出がなされている。液晶モニターで装飾された今時のものと比べるとシンプルすぎるけど、夜間見るとそれなりに綺麗。水温計は省略されており、燃費計もない。定期点検の時期を知らせてくれるという機能はついているけれど。シンプルなシングルメーターは、夜間だとレーシングカーみたいですな。
L、LX、M、G、Tのグレードには、キーレスオペレーションシステムが装備されている。この時期くらいから、軽自動車にも一般的になってきました。
ワイパー、ウォッシャースイッチは、短めのものが付いている。ワイパーには、速度に反応して間欠時間を自動で調節してくれる、間欠モードが備わっている。
ウインカー、ライトのスイッチも短め。グレードによっては、ヘッドライトの消し忘れを自動で消してくれるヘッドライトオートカットの機能が備わっている。
電動ミラーのスイッチと、ヘッドライトの光軸調整用のダイヤル。i(アイ)には、車を降りてからキーレスのUNLOCKスイッチを3回押すと自動でミラーが格納される機能が付いている。またパワーウインドウも車の外からキーレスで操作可能。ミラーを収納したまま走り出しても、自動で展開する機能も付いている。小技というか小ネタというか、説明書がないと気付かない裏技のような機能が色々付いている。
ハンドルの右下辺りに給油口を開くレバー、その下にボンネットを開けるレバーがある。その上にカード入れが備わる。駐車券とか、高速の半券とか入れるためのものでしょうか。
センターコンソールと一体型の標準装備のCDプレイヤー。Sグレードだとオプションになる。デザインはよいとしても、シルバー塗装がプラスチックっぽくて質感はいまひとつ。一般的な1DINと2DINの規格ではないため、社外品に代えたりナビなどをつける場合には、オプションのセンターパネルに付け替える必要がある。メーカ独自デザインのカーオーディオは、こういった場合に不便。
ダッシュボード上に3.5㎝ツイーター。
前席ドアに16cmスピーカーが付いている。音は、純正品なりのもので特に良くもなく悪くもなく。ツイーター+スピーカーという組み合わせなので、スピーカーのみのものと比べると良いか。オプションで8つのスピーカーとアンプ、ドアのデッドニングを含めたハイグレードサウンドシステムが選べた。
エアコンのスイッチ類。全グレードフルオートエアコン付き。スイッチの感触は、なかなか質感が高い。ミッドシップレイアウトの関係で冷却水が多いため水温が上がりにくく、温風は時間がかかるらしい。
エアコンの吹き出し口は丸型。このタイプは、閉じることも出来るし構造がシンプルなのでよい。
エアコンスイッチの下に、カップホルダーとユースフルトレイ+アクセサリーボックスなるものが付いている。これ使い道が分からなかったのだが、カタログを見るとペットボトルのキャップを置いたりできるとある。アクセサリーボックスは、小物などが入れられる。深さがそれほどないので、キーレス用の予備電池を買いだめして入れている。
助手席側にもカップホルダーが備わる。これは、デザイン的にちょっと可愛い。ちなみに後席にはカップホルダーが装備されておらず、オプション扱いとなる。
グローブボックスとグローブボックスアッパートレイ。アッパートレイの中にインパネシークレットボックスというもうひとつのボックスが隠れており、ティッシュの箱を逆さにして入れると、グローブボックスアッパートレイからティッシュを引き出せるという機能が付いている。インパネにティッシュの箱を収納して外から引き出せるというアイデアは、他社でもあったと思う。
ゲート式の4AT。i(アイ)には、マニュアルやCVTは存在せず、全車この4ATになる。Gグレードでは、シフトノブが本革製になる。オプションでMOMOのシフトノブも選べた。
マニュアルがないのは残念ですが、このシフトノブが超ショートストロークで、ちょうど座席に座って手を伸ばした位置に配置されていて、意味もなくシフトノブを操作したくなるほど、カチカチと節度よく決まる。4ATも変速ショックがある昔の3ATのイメージからすると、かなり洗練されている。
最近ではインパネシフトが多いですが、オーソドックスなフロアシフトが採用されていて、スポーツカーのシフトを操作しているような気分になる。収納ボックスなどもついておらず、ステーションワゴンっぽくない簡素さでよい。
パーキングブレーキも軽自動車に多いフットブレーキではなく、オーソドックスなサイドブレーキ。質感は、そのままプラスチックそのもの。ここもオプションでMOMOのサイドブレーキレバーが選べた。
前にエンジンがないため、FF車と比べると足元の空間が広い。他の一般的なワゴン車と比べて後席は狭めだが、運転席は広めでゆったりとしている。そのため足を前に投げ出すようなポジションが取れる。
足元に謎のスペースがある。カタログを見るとフック付きのフロアコンソールということで、買い物した袋などをここに置けということみたい。またシフトレバーの前にもカップホルダーが備わっている。
ドアは、円をモチーフとしたデザインがされていて、ドアトリムには物入れが備わっている。ドアハンドルも同じように円をモチーフとしている。プラスチック丸出しで質感もいまひとつだが、デザイン上で上手く処理して安っぽさを感じさせないという方向性みたい。
運転席のシートには、シート高を調整できるアジャスター(リフター)が付いている。運転席の下に燃料タンクがあるため、シート下にスペースはあまりない。
後部座席は、特に狭いというほどではないが、今どきのスペース効率を優先したワゴン車に比べるといまひとつ簡素で、特に工夫したと感じさせる部分は見当たらない。物を収納したり、置いておくスペースもない。エンジンが後ろにあるため、座席を下げることが出来ない。
ドリンクホルダーも付いていないし、それほど重要視はしていないようにも見える。ごくシンプルで清潔感があるのは、好感が持てるけれど。
ミラーは、まったく飾り気のないかなり簡素なもの。ミニカやekワゴンから流用しているかもしれない。 今のekワゴンには、アラウンドビューモニターやバックカメラモニターなんかが付いていますから、ここはものすごい進化を遂げている。
バニティミラーは運転席のみ。Gグレードにはマップランプも付く。ここもすごく簡素な作り。オプションのブラックインテリアを選ぶと助手席にも付く。
アシストグリップは、助手席のみ。軽自動車だとこんなものだと思いますが、今どきのハイトワゴン系だともっと立派な、ちゃんとしたものが付いているのかも。
天井のランプはオーソドックスな作り。こちらもミニカやekワゴンから流用しているのかも。天井は消臭天井になっていて、匂いの元を吸着、分解してくれるという素材が使われている。そのためかはわからないが、何気に室内の匂いは良い。
1600mmの車高があるため、天井はそれなりに高い。ただ、ボディ形状がラウンドしているため、後ろに行くほど窮屈になってくる。材質は明るい素材で、なかなか質感のよいものが使われている。この辺は、質感を売りにした高品質軽というだけある。
ガラス面積が広いため、光が差し込み車内は明るく開放感がある。
ただし、ボディ形状の関係で後方の視界はそれほど良いとは言えない。リアウインドウもリアドアも小さめ。
エンジンがリアにある関係で荷室には深さがない。FF車だとこの下に、収納ボックスがあったり、スペアタイヤや工具などを収納しているが、i(アイ)では、そのようなスペースもない。一応、横にすればベビーカーが収納できるとカタログには謳われている。
シートは倒すと水平な面が作れるようになっている。倒せば自転車くらいなら積めるか。一応リアシートには16段階のリクライニングが付いているが、この辺りが弱かったことが、デザインでは好評だったi(アイ)の販売台数が伸び悩んだ原因のひとつでしょう。その辺りを徹底的に分析したから、今のekワゴンとデイズの好調があるのでしょうが。
防音、断熱を兼ねたシート。運転手とエンジンが同一のキャビン内に同居する構造のため、これはどうしても必要。スポンジ状で隙間を設けることで、表面積を稼いでいるそうで、メーカーとしても開発には力を入れたらしい。荷室に乗せた荷物にエンジンからの熱が伝わらないようになっているらしい。
防音、断熱材の下には鉄板の蓋がしてあり、道具を使わず手で簡単に外せるよう、蝶ネジで4箇所を留めてある。しかし、今時むき出しの蝶ネジというのもどうなんでしょう。ここは蝶番を付けてボンネットのように開くようにして欲しかったところ。
鉄板の蓋を開けると三菱・3B2型エンジンがのぞく。このエンジンは、燃費などを改善する改良を施されてekワゴン・デイズに引き継がれている。i-MiEVだとここにモーターが搭載される。ミッドシップとはいっても、床下収納のそれはほとんどワンボックスかキャブオーバーのバンか軽トラのよう。 せっかくの高性能エンジンなのに、もう少し見せる演出が欲しかったところ。普段は、ほとんど開ける機会がないと思います。女性だと開けたこともないという使われ方をするのかもしれません。そういった意味では、この床下に収納されたエンジンは、縁の下の力持ちというか黒子に徹している。騒音は、防音財のおかげかかなり抑えられているし、運転席とエンジンの距離が離れているというリアエンジン車の物理的な構造からも、振動、音ともに有利。またそもそもリアエンジン車は、走り出すと音を後方に置いていく(音から遠ざかる)という構造なため、高速時もかなり静か。むしろ信号待ちやアイドリング時のほうが、3気筒エンジン独特の音や振動は伝わってくる。
荷室の右側にジャッキが収納されている。前オーナーは女性であったため、全く使用していなかったのか埃がたまっていた。スペアタイアもないので、あまり使うこともないでしょう。
パンク修理キットは、リアシートの下に収納されている。こちらもまったく使った形跡がなかった。前オーナーが女性だったためか、こういうところを開けると色んなところから買い物のレシートが出てくる。おまけにパンク修理キットをどうやって取り出せばよいかわからず、これでは緊急時には役に立たないような気がする。
ということで、この車の評価は、このリアエンジン、リアドライブに価値を見出せるか否かで、全く変わってくるように思います。エンジンやシャーシなど見えない部分にコストを掛けすぎたためか、内装は割をくった感じで質感はあまり高くありません。乗り心地も2000ccクラスの車に乗った後にこの車に乗ると、静寂性、走りの安定性、エンジン音や振動の滑らかさの全てに及ばないことを実感する。ピッチングは抑えられているとしても、横方向にぴょこぴょこ動く。ただ、エンジンを掛けたときに後方から聞こえてくるエンジン音というのは、走り出す前からわくわくさせられます。後は元気でやんちゃな走りもできるスモールと捉えるかどうか、この後ろから聞こえてくるエンジン音をやかましいと感じるのか、わくわくするかどうかで決まってくるんじゃないでしょうか。
ということで、三菱i(アイ)のプチインプレ・インテリア編でした。
参考:wiki 三菱i(アイ)、三菱・3B2型エンジンの項、三菱i(アイ) CBA-HA1W/DBA-HA1W型 2008年7月版 カタログ