さらば青春の光(原題:Quadrophenia)は、モッズと呼ばれる若者たちの青春を描いた1979年のイギリス映画。
という事で、引き続きバイクが印象的な活躍をする映画・・・というより日本のバイクシーンに多大な影響を与えた映画です。原題のQuadrophenia(四重人格)は、The Whoのアルバムより来ており、原作もThe Whoのピート・タウンゼント。モッズとは、1950年代~60年代にかけてイギリスで起こった若者のムーブメントの事で、映画は実際にあった事件・ブライトンでの暴動を下敷きにしている。
現在では、モッズヘアーとかモッズコートとか、ファッション的な用語として用いられるモッズという言葉ですが、元々はファッション、音楽などを含めたライフスタイル(生き方)をさす用語。映画の公開された80年代前後には、ネオモッズのブームも来ていたそうです。物語は、モッズに所属する主人公が時代のムーブメントの中で輝いた時間を過ごし、やがてその熱狂的な時間が過ぎてしまうと周りには誰もいなくなって、大人へとなるという話です。時代が変わっても誰しもが経験する事と思われ、だから邦題がさらば青春の光なのです。
で、さらば青春の光といえば、やはりべスパ。モッズと呼ばれた若者たちはモッズコートと呼ばれるコートを羽織り、ライトやミラーで飾り立てたスクーターに乗っています。これは、彼らのファッションであった細身の三つボタンのスーツを汚さないためにミリタリーコートを羽織り、スクーターに乗っていたのだそうで、飾り立てたミラーも自分を写すためであったとか。
日本でべスパのムーブメントにも、多大な影響を与え続けている作品だと思います。ただし主人公が乗っているのは、ベスパではなくランブレッタ。また映画に登場するのは、かなり大型のスクーターで若者のムーブメントの中にありますので、少し前に流行ったビクスクの方がイメージとしては近いのかも。
日本のべスパは、もう少し年齢層が高くて、洗練されたお洒落な感じでしょうか。それでも、本国では一旦生産中止に追い込まれたビンテージシリーズが、(日本での人気が高いため)再生産されたほどの日本のべスパ人気を語る際には、外せない作品だと思います。
こちらは、マイストのモデルでPK 125。
映画に登場するもうひとつのムーブメントに、モッズと対立するロッカーズという集団があります。彼らは、革ジャンにリーゼントというスタイルで、ノートンやトライアンフなど市販のオートバイをレーサー風に改造して、その速さを競ったりしていました。彼らがカフェに乗り付けるオートバイのスタイルをカフェレーサー(Cafe Racer)と呼び、こちらも日本でのオートバイの大きな流れのひとつとなりました。あのビートルズも元は革ジャンにリーゼントというロッカーズスタイルで活動しており、デビュー時にはあのモッズスタイルで売り出されたのだとか。
YAMAHA SRに代表される単気筒のオートバイに、アルミタンクやマフラーの交換、バックステップやセパハンといった改造を施すスタイルが、日本でも80年代、90年代に流行りました。少し前にキムタク人気でYAMAHAのTWやHONDAのFTRなどでスカチューンというスタイルが流行りましたが、あれもカフェレーサーの流れの中にあるのではないかと思います。
映画自体はお洒落系ですが、いつの時代にもある若者の熱狂的なムーブメントを描いています。映画やモッズとは全く関係ないですが、個人的には90年代に流行った渋谷系を連想しました。
個人的には、メーカー製カフェレーサーCB400フォアや、シングルレーサーを標榜したスズキ・グースといったバイクを乗り継いでいて、ドリーム50は本田が60年代の市販レーサーをリバイバルした、まんまメーカー製カフェレーサーだったりと、カフェレーサー系統に乗っていました。ただリーゼントにしたことはないし、革ジャンも持っていたことはありません。ドリーム50に乗る時にはPコートなどを着ていたり、買う際には趣味原付として平行してベスパも探していたりと、スタイルやファッションは、ちゃんぽんであまり関係なかったりします。
ということで、いつの時代にもある若者の熱狂と祝祭、その祭りの後を描いたお洒落映画、さらば青春の光(原題:Quadrophenia)でした。
参考:Wiki モッズ、ロッカーズ、カフェレーサー、The Who、ピート・タウンゼントの項
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