スポイチ編集長日誌

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究極の原発 vs 至高の原発

2014年05月25日 | 社会
原子力発電所の最大の泣き所は、先の福島第一原発事故で明らかになったように、地面にくっついていて移動できない、つまり地震や津波などの脅威を自力で回避することができない点にある。

基本的に、原発は災害時の安全性が高い場所に立地し、先の東日本大震災の際にも女川原発などは地元民の避難先になっていた。
東日本大震災が福島第一原発にとっては想定を超えるものだったのだ。

そこで、たびたび「原発は航空母艦のようなもの」「原発の運用は軍事の範疇」と書いている通り、わが地震国における究極の原発の姿とはどんなものになるかを示そう。




究極の原発

参考:オハイオ級原子力潜水艦

VS

至高の原発

参考:ニミッツ級航空母艦


完全にネタか冗談のように思われるだろうが、原発が地べたにくっついているから地震や津波に対して脆弱で危ないと言うのなら、海に浮かべて動けるようにしてしまえば地震も津波もノーカンでいいじゃない、というわけで、ロシアでは巨大な船体に原子炉を載せて海上原発とするプランが実際にあるし、原発を丸ごと航空母艦として造り、普段は港から陸地に給電し(航空母艦が陸地に給電した例は存在する)、地震や津波の際には緊急出港し、沖合で津波を乗り切ったら、即陸上の被災地救援・支援基地として活用する、というプランは、技術系の原発関係者も興味を示している。

原発そのものが自在に動ける水上艦艇ならば、地震や津波だけでなくテロや攻撃にも強く、自前の航空機も積んで護衛艦隊も引き連れていればより自衛力も高まる。この点は物資や航空機(ヘリ含む)の搭載に融通が利くとは言えない原子力潜水艦よりも、原子力空母のほうが有利だ。(ということで後出しが勝つ法則通り今回は至高の勝ち。)


反原発な人の中には「東京に原発を!」みたいなことを言う人もいるが、原子炉なら東京のすぐそばにも既に存在している。

USS George Washington, CVN-73

横須賀を母港とする米空母ジョージ・ワシントン
なお、横須賀市が運用するモニタリングポストのうちの数箇所は、米海軍横須賀基地の近くに設けられている。(参照


しかし、いいことずくめのようにも見える海上原発(艦船型原発)には短所もある。
まず、艦体の建造コストがくっそ高い上に、発電量も現行型の原子力空母に搭載されている原子炉を基準とすると原子炉1基あたり1/5~1/3ほどと、一つの敷地に2~6基程度の発電用商用炉を並べることができる通常の原発よりも不利である。

次に、原発勤務者の通勤が困難。港に停泊しているならまだしも、発電は沖合でとなると、労働者の勤務形態をどうするかが問題になる。
実際の原子力空母は、それ自体がもはや一つの街と言える規模だが、軍属でもない労働者が家族と離れて生活するには限度がある。

さらに、護衛艦隊を引き連れて直掩の航空機も載せた場合、そんなものはもはや一民間企業の手に負えるシロモノではなくなる。

もっとも、根本的な問題として、定期的に「母港」に寄港するならまだしも、原発が海上に完全に出て行ってしまうと、「原発の地元」というものが存在しなくなり、そうなってしまうと、過疎漁村としての「地元」に利益誘導することによって成立してきたこれまでの原発行政が成り立たなくなってしまう。
すなわち、地元民、地方行政、関連企業、地元政治家にうまみが無くなってしまう(加えて、有力な原子力艦艇を保有することに対する近隣諸国、つまり特アへの配慮もある)ので、最初から誰もこのプランに乗らないので、実現の可能性も無い、というわけである。



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