星学館ブログ

星やその周辺分野のもろもろを紹介

天文の事典

2019-05-04 11:17:19 | 関係出版物
朝倉書店、2003年、28,500円
 地球から宇宙全般にわたる最新の情報が得られるよう,包括的・体系的に解説している。
〔内容〕宇宙の誕生(ビッグバン宇宙論,宇宙初期の物質進化他),宇宙と銀河(星とガスの運動,クェーサー他),銀河をつくるもの(星の誕生と惑星系の起源他),太陽と太陽系(恒星としての太陽,太陽惑星間環境他),天文学の観測手段(光学観測,電波観測他),天文学の発展(恒星世界の広がり,天体物理学の誕生他),人類と宇宙,など。
 筆者は最後の章「人類と宇宙」の『2.天文学の普及活動』を執筆。項目は以下のとおり:
2.1 星空に親しむ
2.2 学校教育のなかでの天文学
2.3 プラネタリウムの役目
2.4 公共天文台の役目
2.5 アマチュア天文家の存在
2.6 星空を守る運動
2.7 何のために天文学の普及が必要か
 故磯部琇三さん(1942-2006)が責任者となってまとめられた事典。筆者は1969年頃(高3)、磯部さんから惑星状星雲研究会の集録を送っていただいてからのお付き合いだった。彼が大阪・船場の生まれで、電気科学館は彼の遊び場だったことなどを聞いたが、東京の人だと思い込んでいて、ぴんとこなかった。1996年のスペースガード講演会に続く共同の仕事が本書で、そして最後の接触となった。


「宇宙を測る」

2019-05-04 11:14:37 | 関係出版物
キティー・ファーガソン著、加藤賢一・吉本敬子訳
講談社、2002年、定価1060円
 講談社ブルーバックスシリーズの一冊。「宇宙の果てに挑んだ天才たち」という副題が示すとおり、古代のエラトステネスから現代のホーキングまでの数々の天才たちがどのように天体までの距離を測り、宇宙の果てを見出そうとしたかという歴史物語。
 翻訳を担当した本人が言っては手前味噌になるが、「いやー、ホントに面白い」。それに、宇宙距離計測法の勉強になる(もちろんだが)上に、現代の宇宙論の導入としても役立つこと請け合いである。何度も原稿を読んだにもかかわらず飽きずに読めるという不思議な魅力を備えている。ぜひたさんの方々に読んでいただきたいと思う。
 筆者は、吉本敬子さんのご協力を得て訳出を行ったほか、全体調整、キティーとの連絡等を担当した。

粟野他著 「天空からの虹の便り」

2019-05-04 11:11:12 | 関係出版物
裳華房、2001年、定価4500円
 「宇宙スペクトル博物館」シリーズ・第3段目の可視光編。身近な光源や風景から始まり、恒星、銀河等の天体の光のスペクトルを紹介するCD-ROM画像集。これだけのサンプルを収集した例はわが国(多分世界でも)には見当たらず、非常にユニークな教材と言える。解説も豊富で、周辺分野の解説なども加え、読み物としても役立つように配慮されている。
 筆者は、恒星スペクトルや写真を少しばかり提供させて戴いたほか、星座、一等星などの解説を担当させて戴いた。

瀬名秀明著「虹の天象儀」

2019-05-04 11:04:59 | 関係出版物
祥伝社文庫、2001年、定価381円
 「パラサイトイブ」や「ミトコンドリと生きる」など、SFからリアルな科学書まで手がけている瀬名秀明さんが2001年10月に出版されたSFファンタジー。プラネタリウムをモチーフにしているところに特徴がある。織田作之助という今ではマイナーな作家の星空やそれを人工的に作り出すプラネタリウムへの思いに著者が心を寄せる。
 瀬名さんは薬学博士という肩書きが示すとおり研究者であり、緻密な文献考証は手馴れたものである。そのかっちりとしたベースの上に本書のようなほんわかとした文体が乗って、きれいなファンタジーとなった。
 筆者は、本書執筆にあたって少しばかりヒントをご提供させていただいた。

奥田 毅著「私の物理年代記」

2019-05-04 10:50:06 | 関係出版物

内田老鶴圃、2001 年、定価2300円

 1908年生まれの著者が歩んだ物理学の世界を紹介する自伝。
 黎明期の東北帝国大学物理学科を卒業し、新設された大阪帝国大学物理学教室に勤務し、戦後、大阪市立大学物理学教室の立ち上げに関係した後、岡山理科大学長として歩んだその道程は、わが国の物理学の黎明期とかなりの部分が重なる。中でも、著者が勤務していた大阪大学物理学教室の歴史はわが国の原子核研究の歴史と言えるほどで、著者も1940 年代に質量分析器を製作し、実用化するという大きな成果をあげ、その歴史の一頁を飾っている。本書で、特に原子爆弾開発のエピソード紹介にページを割いているのも頷ける。また、湯川秀樹とは同僚として過ごし、中間子論の形成を目撃した一人である。物理学が次々と自然の秘密を暴きだしてくれた麗しい時代の一断面を紹介してくれており、楽しく読むことができる。
 大阪市立科学館は、著者奥田先生が勤務されていた大阪大学理学部の跡地に設置されている関係で、大阪大学物理教室の歴史に関心を持たざるを得ないし、大阪市立大学物理学教室にはいろいろご協力をいただく関係であり、また、私個人としては出身大学が著者と同じこともあって、本書の内容にいちいち頷くことが多い。若き日の一柳(ひとつやなぎ)寿一先生(元東北大学天文学教室教授、42 年間国立大学の教員を勤めるという最長記録を有している)のプロフィールなどは珍しい。
 大阪市立科学館の元館長の中野董夫先生は、中野・西島・ゲルマンの法則や相対論の研究等で高名な方であるが、大阪大学から大阪市立大学へと、著者奥田先生と経歴が重なっているところがあり、奥田先生のエピソードをいろいろ伺う機会があった。奥田先生の暖かい人柄やその交流などについて微笑ましいお話がたくさんあったが、残念ながら本書にはそのあたりのことはあまり触れられていない。これは、おそらく、「物理」年代記を意識されてのことであろうと思われるが、まあ、その辺りのことは裏話として、そっとしておくのが良いのかも知れない。
 物理学も人間の営みであることがほんわかと伝わってくる。数式に疲れ疲れた方々におすすめ。
<著者略歴>
おくだ つよし
1908 岡山県に生る
1932 東北大学理学部物理学科卒
1941 理学博士
1949 大阪市立大学教授
1972 大阪市立大学名誉教授、岡山理科大学長を経て
2007.12.4. 逝去。葬儀:喪主長男哲也氏。岡山市清輝橋シティホール
*)筆者加藤が以前勤めていた大阪市立電気科学館のブレーンのお一人が奥田先生であった関係もあり、大阪市立科学館時代、何度か原稿をお願いするなどやり取りがあった。また、畏友保江邦夫君は同じ岡山市在住でもあり、奥田先生の“岡山秘書”の一人だったようだ。その後、筆者は奥田先生が学長を務められていた岡山理科大学に勤めることになり、何か因縁めいたものを感じないこともなかったが、これは全くの偶然。