雨荒ぶ台風過ぎ行き活き香る山の葉陰にこの身染めなむ
不視前 不振脇目 只管 千摺擦 二宮金似郎
貸すほどの金巳になくも借りるほど要りようだになし 酔えば好日
苔濃ゆき石の仏を訪ぬれば山に埋もれし堂宇にあかり
何もせずただ何もせずこの午後を一人酒酌む友の命日
歯が痛い血圧高い耳が鳴るまだまだ若い六十と五
震災の御魂しずめる大の字のお山に立てば霜柱見ゆ
浪々の浮世の春や守衛所の傍の草むら大犬陰嚢
白梅の 硬きつぼみに みぞれ雪
白梅や 白露きらり 白き暮れ
笑ふより術無きほどに蓮池の花も笑へり梅雨の間の午後