墓掃除

父母のみ墓を清めわかくさの千賀子と訪ぬ野路の花々

春風邪

冬過ぎて春来たるらしぬばたまの枕ぬらしし垂るるはなじる

キリシマツツジ

肌寒い四月の朝はこぬか雨息つげ庭の緋(あけ)のキリシマ

マキノの山にて

迷彩の葉を地に広げ春の陽に火の鳥踊るカタクリの花

さみどりの新芽の間に見ゆさざなみのマキノが里の田に水鏡

休肝日明け

一片の紙葉で足りるあかときの腸は快調休肝日明け

山野草

野に咲けば愛で摘まれるも野路の花園生（そのふ）にあれば踏まれ刈られる

花の力

時向かい雄蕊とともに花落とすチューリップはなを雌蕊誇れり

舗装路のはざま引き裂くタンポポは陽を受けて咲く舗装のはざま

金本

さくら散り若葉出れば金本もスタメン離れ春過ぎ行きぬ

タムシバ

天高く白妙冴ゆるタムシバの古木の枝に葉はなからくに

当尾の里にて

むらさきのつつじ華やぐ池の辺にかわず念ずる岩船寺かな

さくらはな散り敷く芝にタンポポの背を伸ばしつつ三重塔

小竹(ささ)ゆるる岩船寺(いわふねてら)の山の端ゆ春かすみ立つ生駒山見ゆ

さみどりの新芽さやけし春風にさくら散りぬる浄瑠璃寺の途