田舎暮らしに憧れて、移住したはいいが現実は厳しい。
最近は全く聞かぬ様になったが、数年前迄はテレビや雑誌等で紹介されていた。
テレビや雑誌で特集が組まれる程に持ち上げられ、持て囃されていた。
雑誌等は、「田舎暮らし」の専門誌の様な雑誌も刊行されていた。
田舎の実情を記さずに、光の部分のみを掲載し読者を惑わしていた。
抜ける様な青い空、小鳥の囀り、川のせせらぎ、虫の鳴き声、木々を揺らす風の音...。
旅行で訪れた、地方の田舎で感じた自然の癒し..。
其れを鵜呑みにし田舎暮らしを決め、都会の家を売り払って移住する。
田舎での暮らしは酷である。
畑で採れた野菜、煮物や漬け物のお裾分け。
好意と云うか、お節介で持って来た物の中には口に合わないものも在る。
其の場で断ってしまうと、次は無い。
あとで捨てる分でも、有り難く頂いておくがよい。
村では多岐に渡る行事が待っている。
会合も多い。
役員も順番制か選挙で決まる。
村の付き合いは、都会の町内会以上に面倒臭い。
移住者が特定な宗教を持っているか、宗教教団に入信しているならば、余程の覚悟で臨まねばならぬ。
神社の祭り、葬儀でトラブルとなる。
此れ等をクリアする覚悟がいる。
自然の癒しである、鳥の囀り、川のせせらぎ、虫の鳴き声、木々を揺らす風の音を求めて移住した筈が、其れが仇を為す。
心地良いのは移住して最初のうちだけである。
軈て其れ等は移住者を襲う。
川のせせらぎを就寝時に毎晩聞くと耳に付く。
一度でも不快に感じたら、川のせせらぎが苦痛となり睡眠障害を引き起こす。
鳥の囀り、木々を揺らす風の音も然り。
都会の喧騒で慣れた身体には、田舎の自然は辛辣である。
田舎の自然を満喫して過ごす積もりが、気が付くと田舎の自然から身を守る対策を施している事である。
家に外からの音を遮断する為に防音対策をして過ごす人も居て、一向に自然に慣れない人も居て都会に舞い戻った例も在る。
其の逆も同様である。
吾が云いたいのは、無闇に田舎暮らしを持ち上げて、人を惑わすなと云う事である。
田舎から都会へ、都会から田舎への移住は覚悟が要る。
「田舎暮らし」を勧めるインチキな雑誌や記事には気を付けて頂きたい。
安易な憧れだけで、都会や田舎に移住する事だけはせぬ方がいい。
転勤も、仕事よりも近所付き合いで疲弊する人も要る。
住み慣れた処から他へ移住するのは心身へのダメージが来る。
学校や職場でのイジメで疲弊したら、其の限りでは無い。
身に余程の危険が及ばないのなら、無闇に移住はせぬ方が疲れない。
同じ県内での引っ越しでさえ、心身の疲れが来る。
高齢者にとって引っ越しは、体力を相当消費すると聞かされた。
移住は人生の流れを変える位の行で在る為、其の流れを調御する心を持っておくが良いと吾は思う。