そう云って突然持ち場から離れ、別棟で商品の入った段ボールを運ぶ女性従業員の手伝いに行った。
おいおい、其れは無いだろう。
どう云う積もりか知らんが、作業を止めて、頼まれてもいないのに別棟の女性従業員の手伝いに行くとはどう云う神経をしているのか。
一般的に在り得ない行動である。
此の女性従業員に良い処を見せようとしたのかも知れぬが、兎に角言動が無茶苦茶である。
此奴は、応援要請に従って別部署から来た35歳の男である。
応援要請と云うか、何処の部署も此奴の扱いには手を焼いていて、仕事が出来ぬくせに講釈だけは一丁前に垂れる。
お荷物な奴である。
当の本人は、方々から必要にされていると悦に入っている。
だが、現実は違う。
何処の部署も、使えないからとたらい回しにされているのだが、おめでたい此奴は自分が必要とされていて引っ張りだこだと勘違いしているのである。
其れを云って聞かせてやろうかとも思ったが、承認欲求が人一倍強い此の男にそんな事実を伝えたら、忽ち機嫌を害し拗ねてしまう。
そうなると、普段から仕事を選んでやろうとしない奴が、更に手を止めるとなると此方が面倒くさくなるので云わないでいる。
此の間も、此奴が来ると云う事で或る作業の段取りをしていていたが、露骨に嫌な顔をし、
「えっ、此の作業ですか。此れは苦手なんだよなぁ。ちょっとなぁ〜」
と。
嫌々やられて不良を出されたら困るので、他の作業を急に拵えてやらせた。
急な段取り替えである。
強くやれと云ったのだが、一向にやろうとしなかったのでそうなった。
此奴は、自分が得意で且つやりたい作業を選んでする奴なので、何処の部署も此奴を使いたがらない。
辞めさせればいいのにと思うが、今の時節、少しでも高圧に出れば、やれパワハラだの、イジメだのと云いだされても面倒臭い。
吾の部署は、重量物も在り、其れを運んだりする。
一つが最低でも5キロ以上は在り、吾は其の材料や部品が入れば受け入れチェックをし、其れを各協力企業別に振り分けたりする。
又、中で格納したりする。
此れをやらせたら、独り言の様に、
「嗚呼!重てえ〜!」
「ふぅーーーーー!」
と五月蠅い。
少しは黙ってやれと思う。
吾はこんなのは日常茶飯事で、何年も此れを繰り返しているのである。
そして、段取りで此方が間違っていたりすると、もう鬼の首でも取ったかの様に、
「此れ違うけど!」
と云って部品や材料を放り投げたりする。
流石に此れには呆れ、上に事細かく此奴の言動を報告した。
吾としては、応援だと云うが却って時間が掛かり、工数悪化を招いているので、
「此奴は要らん」
と進言した。
だが、何処も此奴を受け入れたがらないので、何とか今一度辛抱して欲しいとの回答だった。
又、新たな一週間が始まる。
此の一週間も憂鬱な日々が続くのだろうか.....。
はぁ〜悩みの種は尽きない.....。