朝の車道にて
その日は、朝からパートの仕事で娘を実家に預けるため、早朝混み出す前の車道を運転していた。
左の車道脇に野良猫が横たわり、後ろ足をバタバタさせていた。
おそらく車にひかれ助けられることもなく、まだ生きている。
私は一度は野良猫の横を車で通りすぎたが、道路脇に車を停車させて、何にも考えず野良猫のもとへ走った。
野良猫は、出血し最後の力で後ろ足をバタバタさせていた。
私の脳裏には様々なことがよぎる。
もう助からないだろう。
でも見捨てられない。
とにかく、野良猫を抱き抱えて、常にペットシーツがひいてあるトランクへ寝かせた。
仕事の時間もなく、そのまま実家へ車を走らせる。
どうしたら良いのか全くわからないままに。
実家に到着すると、トランクで野良猫の足はバタバタしなくなっていた。
目が開いたまま亡くなってしまっていた。
この事を実家の母親に話すと、猫に対する優しい気持ちのある母親は、ダンボールに入れて玄関の片隅に置いておくからと言ってくれた。
動かなくなった野良猫を見て、痛かったよねと優しくダンボールに優しく母親が悲しそうな声をかけていた。
野良猫は目を開けたまま動かない。
私は娘を預けて仕事に向かった。
仕事先のお客さんはあまり動物が好きな人ではなかったのだが、今朝の野良猫の話を会話のなかで話してみると、
・・・優しいのねぇ~
何かそんなことをしても仕方ないとでも言いたそうにしていたが、こちらに気を遣い余計なことは話さないようにしているようだった。
私は無駄なことを、普通の人はしないようなことを身の程知らずに動いているのかな。
そんな気持ちになってしまった。
その方のお宅にも野良猫が現れており、避妊手術等をした方がいいですよとお話しをしていたが、あまり動物が好きな人ではなかったため、返答はのらりくらりとしたものだった。
充分なお金がありながらも、庭に来る野良猫にてを差しのべることをしない人。
決して悪い人ではなく、家族の問題が次々と起こり私が伺うといつも話をしてきては、悩みを打ち明けてきていたのだ。
野良猫が現れたのだから、手術をして広いお庭でご飯やトイレのお世話ができたらこの方は野良猫から助けられていたのかなとお話しを伺いながらそう思っていた。
そんなことを信じる人は少ないことに、落胆しながらも、仕事を終えて実家に向かう。
実家では、紫色の胡蝶蘭の花びらがダンボールに敷き詰められ、母親が仏壇でお経を唱えていた。
供養をしてくれたようだった。
実家の母親にお礼を言って、近くのペット斎場に電話をかけた。
すると、車道でなくなった猫はこちらではお受けできません。自治体に連絡をしてください。
残酷な事実だった。
そんな法律でもあるのだろうか。
仕方なく自治体の担当部署に電話をかけた。
すると、真面目そうな女性が出て、事情を話すと急におどおどし出して、確認後に折り返し連絡をしますとのことだった。
しばらくして、電話がかかってくると、こちらでは小動物の場合は、もとの車道へ置いておいてください。業務委託された回収業者が後程回収しておきます。場所はどのあたりですか?
私は、毅然として車道にはもどせません。またひかれるかもしれませんし。私は動物を大切に供養をして引き渡したいのです。
すると、また保留音をしばらく流され上司に確認している様子で、保留音が切れると、また自信のなさそうな声で、
それでは、ご自宅のゴミ収集場所にダンボールごと置いておいてください。ご住所は?
私は、怒りを感じなからも、今そちらの役場の近くの駐車場に停めて電話をしています。
私が、そちらにお持ちしますので対応頂けますか?
担当者は、業務マニュアルにないイレギュラーな対応に困った様子を見せながらも、
こちらの地域では、小動物は燃えるゴミとしての対応になっておりまして、いくら供養をされた状態でも燃えるゴミとして対応させて頂きますのでご了承下さい。
前からこの地域では野良猫に対する愛護精神が薄く、何度かさくら猫活動のチラシを持参してもっと地域の野良猫を助けましょうと話したのですが、毎年異動で担当者が変わり、引き継ぎもなく、新人のような人が対応しておりました。
そのような自治体とわかりながらも、仕方がなく引渡しに役場まで行くと、その電話口に出た女性ではなく、男性の職員の方が軽い感じでありがとうございますと、受け取りそのまま奥の方へいなくなりました。
きっと頑固なおばさんとしか思わなかったでしょう。
そして、当たり障りのない対応をされたのでした。
野良猫は、この地域では、ゴミ扱いです。
野良猫たちの立場に行政の方々がなったら、どう思いますか?
この世界は、おかしなことが平気でおこなわれています。
これは事実です。
野良猫たちは、ちゃんと見ています。
自分たちをどうしたのかちゃんと見ています。
野良猫のメッセージを発信します。
どうか助けてあげてください。
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