スエット02 のブログ

主に昔のお気に入りポップス系音楽、お気に入り映画、ドラマの感想等。
素人ですが小説らしきものを書こうと思います

ジェイ・グレイ (1)お寺の小僧

2019-04-29 20:46:00 | 日記
    お寺の小僧
 
 お寺の小僧、声を出して書物を読んでいた。
「慈円和尚の書」

 すると庭先のほうで何者かの気配が、この山寺には時々鹿が迷い込む。鹿かと思い障子を開けると、見慣れぬ女子が立っていた。 
「おぬしは誰ぞや?」
 返事はない。
「腹でも減ったか?でもここには大した食い物はない。でもお供え物の饅頭があったかも知れん。とってこよう」
 帰ってきたが見慣れぬ女子はもう いなかった。
「うまいぞ。食わんのか? うまいぞ、一つ食べたが、まだ一つある。どうだ、食ってしまうぞ」
 その後も何度か現れては いなくなった。
「慈円和尚の書を読むたびにあの女子が現れた。さすれば慈円姫、というのかもしれぬ」
 小僧は短冊に、『慈円姫』と書いた。

 小僧は大きくなり、寺から戻され、景虎という武将となった。
 
 
    霧の八幡原
 
 信濃 川中島、八幡原は深い霧の中、越後の長尾景虎は敵陣に突入。晴信の前に現れる。

「晴信、おぬしの悪行決して許されるものではない。成敗致す、覚悟せい。」

 剣を掲げ馬を走らせる途中、不意の雷鳴が轟き景虎を直撃、馬もろとも崩れ落ち気を失う。

 甲斐の武田晴信、呆気にとられるも、近習の者に指示。近習の者、景虎に駆け寄り、トドメを刺そうとする。

「前々から戯けとは思っとったが、景虎こりゃ思うとった以上の大戯けじゃわい。」

 英国のレディ・J(ジェイ)・グレイはロンドン塔に幽閉されていた。
そして、その時が近づいていた。運命を受け入れる気持ちは出来ているが、時に不安定にもなる。
若くまだ さまざまな事も知りたい。そして、そんな中、時に意識は時空を彷徨う事もあるのだろう。

 異なる世界のロビンは川中島を見物中。ジェイ・グレイがやってきた。
「やあ、ジェイ・グレイだね、僕の腕前を見に来たのだろう、うんうんわかる。
では、あの者(近習の者)に当ててみせよう。」

 幾つもの矢が飛んでいく。そして幾つかの矢は当たりそうになる。近習の者、矢に気づき打ち払おうとするが矢は ただ、すり抜けていく。
 その間、意識が戻った景虎の剣は近習の者を突き刺す。晴信の前には既に多くの兵が立ち塞がっていた。

「晴信、悪運だけは強いようだな、だが次は外さぬ、それまでおとなしく待っておれ。」

 景虎は馬に乗り去っていった。走り去る景虎が見えなくなると晴信は言った、

「悪運が強いのは、お前の方だろ。戯けが。」
 
 
    荒唐無稽な話
 
 越後の春日山城に景虎は戻った。留守居の爺は駆け寄り言った。

「お屋形様、ご無事でなによりに御座います」
「爺、我は英国へ参る」

 爺は唐突の話に面喰い、すぐには言葉がでてこなかった。

「お、お、お屋形様、英国とは いったい何事で御座いましょう。英国、とは、はて・・・・・・」
「英国とは南蛮あたりの国じゃ」

「南蛮? これはまたどうして? 行くと申しましても幾月いや幾年もかかると聞いております。そもそも、疫病、遭難、海賊も多く命を落とすもの数知れずと聞いております。いったい何故で御座います」
「英国の慈円姫を助けねばならぬ、この度の合戦の折助けられたのじゃ、慈円姫に。そう馬から落ちてオボロゲな意識の中、確かに慈円姫がみえた、そして その共の者が矢を放ってくれた。だが、思うに、どうやら慈円姫に危機が迫っているようだ」

「お屋形様、大変失礼ではありますが、あまりに荒唐無稽な話にしか聞こえませぬ。南蛮の姫が何故にそんなところに居りましょう」
「爺には解るまいな」

 数日後、景虎の書置き。

『爺へ、暫く高野山にて修行します。探さないでください』

「オノレぇえー、かげとらサマああ。勝手すぎるんだよー」

景虎、高野山にて ひたすら行を積む。


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