LP「Blue Hawaii」は、サントラ盤とは言えど、ものすごく売れたレコードですし、 収録曲を全て「バークレーの観点」で調べ直したら良さそうなんですけど、過去には 「Can't Help Falling In Love」は名曲として評価されているが エルヴィスはセッションのほとんどの時間を気持ちが乗らないでいたが 29テイク目になって突如として「マスター」に相応しい集中を見せた。 このセッションを1枚のCDにして発売するべきだ。 とか、「No More」に鳩の鳴き声とか 「ブルーハワイ」録音からおよそ61年目 : 付け足したのは誰?とか 前回は「Almost Always True」セッションについて書きました。 まあ、直ちにLP「Blue Hawaii」収録全曲についての考察は出来ませんけど FTD「The Making Of Blue Hawaii」の4曲入り「33rpm compact double EP」は
なんですから今回は残りの「Moonlight Swim」を話題にします。 FTD「The Making Of Blue Hawaii」に多くの資料と 音源の未発表部分も出て来ましたし。 |
セッション情報
「Moonlight Swim」は1961年3月22日にラジオ・レコーダ-ズにて
パラマウントのコード「NO」として全部で4テイク歌われました。
録音テープボックスに貼られた「TAPE LEGEND」(手書き)には
TAKE1 | FS | |
TAKE2 | PB | |
TAKE3 | M Out To Client | |
TAKE4 | M Out To Client |
と記されており、テイク3&47をマスター候補に選び、
1961年3月28日にパラマウント・スコアリング・ステージで
女声コーラスがオーバーダブをするのですが、Keih んとこ を見ても
オーバーダブのテイク数などの情報は現在不明となっています。
しかしバークレーの余分な観察眼がどうしたって自然と働くので
オーバーダブのマスターがテイク7ではなかったのかと思わせる記録(↓)が
残っているのを見つけてあります。でもオーバーダブに7テイクは多すぎるかな?
そしてパラマウントではマスターテイク選定に次の判断を下しました。(手書き)
1 | Complete PG | |
2 | Cut | |
3 | Great | |
4 | Hold |
と、なぜかテイク1とテイク2を取り違えた様なメモが残されているのと
テイク1には「PG」なる表記が用いられているのが注目点です。
「No Good」のNGに対してPGは「Partly (Partially) Good」あたりの略語だったのでしょうか?
マスターテイク候補としてテイク3&4を受け取ったパラマウントが
テイク3に「Great」の評価を与え、RCAもテイク3(+女声コーラス)を
レコードマスターに選び、パラマウントは映画向けに更なるオーバーダブを加えました。
パラマウントが作成したサウンドトラック関連の書類(タイプライター使用)には
イントロ(1961年7月19日録音)と「Sweetener」(1961年7月20日録音)の記録が見えます。
(NO-04) | (Moonlight Swim) | (March 22) | ||
(NTD) | (Moonlight Swim - Vocal Overdubb & Edit) | (March 28 1961) | ||
(6-B) | (Intro to Moonlight Swim) | (July 19 1961) | ||
(6-C) | (Moonlight Swim - Sweetener) | (July 20 1961) | ||
Moonlight Swim (movie version) |
あれれ?「Great」の評価を与えたテイク3ではなく、
映画にはテイク4が使われたとの記録になっていました。
「女声コー-ラスが聞こえるのはテイク3」との先入感から
これまで疑いもしなかったので、今回改めて音声解析をしてみたのですが
やはり映画に使われたのはテイク3の・・・って、今回気付いたのですが
前回話題にした歌「Almost Always True」のセッションのように
普段エルヴィスは歌の完成までにテンポやアレンジを変えて
自分が満足出来るものを探す作業を試みたのですが「Moonlight Swim」については
最初から歌い方が決まっていたようで、テイク1こそ、
女声コーラスが歌う2番の「歌詞明けのタイミング」にしくじりましたが
テイク2-3-4と「実に同じアプローチ」で歌っていたのです。
Nick Nobleのオリジナル や
「サイコ」(6月8日NHK-BS放送)主演の Anthony Perkinsの歌 として
知られていましたから、エルヴィスも以前より耳にしていて
「自分であればこう歌う」と決まっていたのでしょうか?
エルヴィスだとこう歌う
Nick Noble とアンソニー・パーキンス の「Moonlight Swim」を聞いてみても
2度ある「サビ」に出てくる「from (your) head to (your) feet」を
1回目と2回目とで歌い方を変えているのはエルヴィスだけです。
ここで話は逸れますが、長年芽が出ない演歌歌手なんてのは
まあその不幸なキャラも売り物にしたりしますが
「上手く歌ってやろう」とか「聞き手を唸らせてやろう」とか
ましてや「売れてやろう」なんて姿勢で歌っても
一般からの評価には繋がらず、エルヴィスの歌い方のように
「聞き手を楽しませよう、満足させよう」の気持ちがあると
これ以上なく評価が高い歌手になったのではないかと・・・
急にカラオケの先生みたいなことを述べましたが
いつの間にやらエルヴィスの歌に「楽しまされのベテラン」になった自覚が
そんな「わかったようなこと」を言わせるのです。
音源の未発表部分
エルヴィスのレコーディングの特徴として、
エンディングをフェイドアウト処理で終わらせる場合に、
同じ歌詞の繰り返しになるときに
「もうこの辺でいいじゃないの?」の意味合いで
ふざけた歌い方をするものが多数存在するのですが
これもある意味スタジオにいた人間に対して
エルヴィスに「楽しませよう」の意思があったように思います。
「Moonlight Swim」にもその傾向が現れて、
テイク2では「on a moonlight swim」の繰り返しの 5回目に低い声で歌っていました。
レコードマスター(テイク3)は4回目でフェイドアウト。
テイク4は4回目におどけて歌っていましたが、
これは「俺に何度歌わせてももう変わっらないよ」の気持ちが反映されたように思えます。
まあ歌い方の細部は違うものの、2つのマスターテイク候補(3&4)から
テイク3が選ばれた理由は、ふざけなかったからにも思えるのですけど、
実は1993年発表の海賊盤「Blue Hawaii The Complete Session Vol 3」や
2019年発表の海賊盤「Mele Mai Ka Lani Mai」には
正規盤ではカットされていた「繰り返しの5回目」がテイク3にも存在し、
ここでもテイク4同様の「monnlight swiiiiim」のような
ふざけた歌い方が確認出来ていたのです。
そしてこの度発表されたFTD「The Making Of Blue Hawaii」で
テイク3にはっきりと聞こえる「ふざけた5回目」と
「エルヴィスの」笑い声」が初出となったのです。
こうなると2つのマスターテイク候補(3&4)からテイク3が選ばれたのは
「ふざけるのをテイク4よりも1回多く我慢したから」に
考えを改めなければいけません
さて「テイク7」と「映画のテイク4」の疑問はペンディングとして
「ブルーハワイ関連調査2023」はこれで終了となるはずでしたが
FTD「The Making Of Blue Hawaii」発売前から気になっていた点に
新たな資料を見つけてしまい、まだ終わりません。
頭のてっぺんから足の先まで「ブルーハワイ関連」が染み渡ります
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FTD「The Making Of Blue Hawaii」 : 知れば知るほど
エルヴィスのブログでシロチンとケロチンもBeach Bird BluesてえんだからFTDだって・・ by TiBITA (タイビットA) 01 02 03 31 32 33 43 44
どこで見つけてきたもんやら。、今では思い出せず
もしかするとLP「Blue Hawaii」のA面7曲目を示す
「トラック7 (TK-7)」の可能性も考えておくべきかと・・・