2024年人権ビデオ・トップ10 (8&9)
8.インド:アルダティ・ロイを起訴
https://www.youtube.com/watch?v=Wl_QSEhVxmw&t=1s
インド当局は受賞例のある小説家への起訴を正式承認した。
ロイとシェイフ・ショウカット・フセインは、
14年前にカシミールについて述べた意見に関し、
インドの人権侵害を伴うテロ対策法の下で嫌疑を掛けられている。
インド政府は活動家・ジャーナリスト・弁護士などの批判者を沈黙させるために、
不法活動防止法を日常的に利用してきた。
私たちはインド政府に、
- ロイとフセインに対する政治的動機に基づいた訴訟を取り下げる
- テロ対策法他の法律を利用して批判者を沈黙させるのを止める
ことを強く求める。表現の自由は基本的人権である。
9.ウクライナ,マリウポリにおける破壊
https://www.youtube.com/watch?v=ovEFg13n3TQ
ヴァーグン・ムナツァカニアン(マリウポリ自治体議会事務局長)
戦争が始まって何日か私たちは
こんな悲劇が起こるかもしれないなんて思いもしなかったですよ。
テチアナ・ブラク
沢山の人たちが避難しなかったからですよね。
ミハイロ・プリシャフ(元マリウポリ住民)
戦争は始まって、全ての人の生活が変わり、全てのことが変わりました。
録音された声
下がれ!
ナレーション
これはマリウポリへのロシアによる侵略の話です。
録音された声
近付くな!
ナレーション
戦略的に重要な湾岸都市マリウポリはウクライナの南東部にあります。
此処には複数のインタビュー、ビデオ、写真、3Dモデルがあり、
それらを使って、HRW、SITUリサーチ、トゥルース・ハウンズは、
ロシアがマリウポリ市を占領した時に、住民が直面した大きな困難を再現しました。
私たちの街は消えた
マリウポリに対するロシアによる破壊
警告
このビデオには爆発・負傷者・遺体・苦しむ人々・罵りの言葉などの映像・音声があります
ナレーション
これはロシア軍が占領した後のマリウポリです。
ロシアによるウクライナへの全面軍事侵攻は2022年2月24日に始まり、
同時にロシア軍はマリウポリを防衛するウクライナの陣地を攻撃しました。
マリウポリは数週に渡って爆発性兵器による猛攻撃を受けました。
損害評価
ロシアによる攻撃でマリウポリの大部分は重大な損害を被りました。
HRWとSITUリサーチは、破壊に対する詳細な損害評価を行いました。
人工衛星画像には屋上への損害が写っていますが、
私たちによる立体表現はもっと沢山のことを明らかにします。
私たちは人工衛星画像に加えて、
オンライン上で見つけ検証した850に及ぶ建物のビデオを使って、
マリウポリ中心部の破壊が及ぶ範囲を把握しました。
損害を受けた建物は此処で赤く見えています。
この地域における高層共同住宅建物477棟の93%が損害を受けたことを
私たちの分析は、明らかにしています。
この映像の一部は、戦争犯罪が行われたことを証明する手助けになる可能性があります。
私たちは、マリウポリの主要街路である「ミュルー」または「平和」通り、
それに近接する地域であり文化的拠点・病院・学校・大学などがある市中央部に、
焦点を当てました。これが以前のマリウポリです。
ドミトロ・クリク(元マリウポリ住民)
約50万の住民がいた街でした。
ハルナ・モロホフスカ(元マリウポリ住民)
最近花が咲いて、新しい公園が出来たんです。
市の中央部は良く開発されていました。
ナタリア・トカチェンコ(元マリウポリ住民)
一般的に言えば、マリウポリは近代的で活気ある街になりつつありました。
ナレーション
ロシアにとってマリウポリは戦略的重要な獲得目標でした。
ウクライナ最大の港に加え、ロシアが占領する西部のクリミアと
ロシアが支配していた北東部、ドンバス間の回廊を支配下に収められるからです。
地下室での避難
ナレーション
マリウポリへの攻撃が始まり、市民数万人がロシアによる空爆と砲撃を避けるために、
防空壕と地下室で身を寄せ合いました。
私たちが話を聞いた多くの人々は、安全と考えていた市中央部に移動しました。
デニス・シェフトソフ
殆どの人は四方八方に移動しました。
防空壕や地下室を目指していましたが、一部には共同住宅に留まりました。
でも私たちは共同住宅に留まるのは安全でないと考えています。
私たちは今、地下室にいます。ここが仮の防空壕です。
私たちが生きているこんな状況です。
40人程がここで私たちを一緒にいて、その内15人程は子供です。
今日の朝、私たちのいる建物の内庭が激しい砲撃にあいました。
殆ど全部の車と窓が破壊されました。
爆発性兵器
ナレーション
ロシア軍はマリウポリで空中投下型爆弾・地上発射型の砲弾やロケット弾など
様々な爆発性兵器を使いました。
人口密集地におけるそれらの兵器の使用は、
現代の武力紛争において民間人に対する重大な脅威ですし、
違法な無差別攻撃の危険を高めます。
ハルナ・モロホフスカ(元マリウポリ住民)
空中投下の爆弾が寮に命中して、私の顔はずたずたに引き裂かれました。
腕・胸・お腹・両足、体中に切り傷を負いました。
画像と共に録音されていた音声
あっち側から来ている。
通用門に入れ。
ドミトロ・クリク(元マリウポリ住民)
遺体があるのは、僕にとって普通の光景になりました。
あの日一日で、7人が死んだと聞きました。子供2人と大人5人です。
ナレーション
戦争法の下で当時勢力は、民間人への危害を最小限に抑えるために、
実行可能な全ての予防措置を行う義務があります。
これは、3月9日にロシア軍が爆撃した病院の、産科病棟と小児科病棟です。
妊娠女性と攻撃後に死産した赤ちゃんを含む少なくとも3人が殺され17人が負傷しました。
この事例では、爆撃当時、病院の近くに軍要員・軍事車両・軍事施設は全くなかった、
と目撃者たちは話してくれました。
敵に危害を及ぼす攻撃を行うために使われていない、
病院への故意による攻撃は戦争犯罪です。
人道援助ボランティア、ミハイロ・プリシャフは
病院から約400mの国立プリアゾフスキ工科大学近くにいました。
ミハイロ・プリシャフ
みんなとてもとても怖がっていました。みんなとても怖がっていたんです。
あれが聞こえるでしょう?ガラガラっていう音です。これがマリウポリなんですよ。
飛行機が近づいてくる音が聞こえました・・・
それで「飛行機だ」って叫んだんです。そしてわたしたちは皆、走りました。
「くそっ!」 「降りろ」
外に出ると、身に入ったのはトンデモナク恐ろしい出来事でした。
地雷だったの?
違う、間違いなく空爆だよ。
おバーチャン、この人を引っ張って、引っ張るんだ。
ナレーション
少なくとも2人が即死しました。
大学に軍事目標は一切なかった、と目撃者たちは語りました。
特定の軍事目標を直接狙っていない攻撃は、戦争法違反であり、
戦争犯罪の可能性があります。
ソーシャルメディアに投稿された、そして目撃者から頂いた、
極めて多数の映像が、大学キャンパスの其処に生じた損害を評価する、
私たちの助けになりました。
インフラの損傷
ナレーション
戦闘は重要なインフラを損傷し、マリウポリの送電塔を倒し、
それが必要不可欠なサービスの供給停止に繋がりました。
デニス・シェフトソフのビデオ日記
ですから、私たちはガスナシ、水ナシ、電気ナシってことになり、
私たちは文明から完全に隔離されてるんです。
インターネットもナシ、アップデイトもナシ、何にもナシなんです。
ドミトロ・クリク(元マリウポリ住民)のビデオ日記
手を洗いたいと思ったら、これしかありません。
雪を拾って、バケツに入れるんです。
それからバケツを焚火の上に乗せ、水を沸かすんです。
デニス・シェフトソフのビデオ日記
此処が私たちの野外コンロです。石器時代の洞窟のように生きているんです。
This is what I call really living it up during the war
戦争を本当に生き抜くってこういうことなんです。
ベーコン、パスタですよ。
そして砲弾が、頭の上を飛んでいくんです。
ロシア兵が私たちをバーベキューにしてしまうまで続くんです。
As long as they do not make barbecue out of us
街は破壊されました。そして毎日、街はどんどん破壊されて行きました。
ドミトロ・クリク(元マリウポリ住民)
毎日毎日、こういう爆発がどんどん多くなりました。
毎日、爆発は大きくなり、酷くになりました。
ナレーション
人工衛星画像、写真、ビデオを使い、マリウポリ各地に加えられた損害を追いました。
89ある学校と大学の内86校そして市内にある19の全ての病院構内が
損害を受けていることを私たちは明らかにした。
それらの施設への損傷は、市内全域の医療と教育を荒廃させました。
マリウポリに囚われて
ヴァーグン・ムナツァカニアン(マリウポリ自治体議会事務局長)
私たちは毎日、いつ逃げられるのかについて考えてました。
でもマリウポリが完全に封鎖されて、逃げ出す方法もないことに気が付きました。
ナレーション
3月に入って2週間、マリウポリから出る安全な通路を提供する色んな試みが、
ロシアによる妨害に遭って失敗しました。
市民の避難や援助物資の配布に対する恣意的な制約は、
戦争法違反と戦争犯罪に当たる可能性があります。
3月の初めに数百人が、避難先を求めて、
マリウポリか出る安全な通路が分かるかもしれないと期待して、
ドネツク州立歌劇場に集まりました。
ナタリア・トカチェンコは自宅が攻撃で破壊された後の3月12日に到着しました。
ナタリア・トカチェンコ
食糧を少々頂きました。お昼にはスープと、朝と夜にはお湯を一杯頂いたんです。
大切なことでしたよ。家には水ナシ、食べ物ナシ、何にもなかったんですから。
暗かったですね。電気がありませんでしたから。
トイレは使えませんでした。
水は有りません。誰も清潔になんてしませんよ。悪夢でした。
劇場の周りを散歩する人もいませんでした。
子供だけが怪我走り回っていましたよ、子供は子供ですからね。
遊んだり笑ってましたよ。
ナレーション
3月16日にその劇場には少なくとも500人が避難していました。
劇場の前と後ろの地面に、「子供」という巨大なキリル文字が描かれていました。
それらの文字は人工衛星画像にもハッキリと見えます。
ナタリアは正面玄関を通って、水を中に運び込んでいました。
ナタリア・トカチェンコ
その時、爆弾が落ちたんです。衝撃波にやられました。
全ての物が周りで飛んでいくんです。
セメント・木屑・ガラスの破片が口・目・体中に入り込みました。
ブーンという音と、割れる音以外は何も聞こえませんでした。
ナレーション
劇場の人工衛星画像、ビデオ、写真には、
屋根中央部と北側と南側の壁が破壊された様子が映っています。
少なくとも15人が殺されましたが、総死者数はまだ不明です。
劇場に軍事目標がなかったことを考えると、
ロシア軍は故意に民間人を攻撃したと思われ、それは戦争犯罪に当たります。
責任者は誰
ナレーション
マリウポリでの戦争犯罪の責任者は責任を問われなければなりません。
ロシア政府からの公式声明、ソーシャルメディアへの投稿、
死亡したロシア兵の追悼記事を検証することで、
私たちは2022年のマリウポリ包囲に参加した17のロシア軍部隊を特定しました。
軍事作戦の範囲を検討すると、
ロシア軍最高レベルの指揮官がマリウポリの状況について知っており、
ロシア軍とロシア軍傘下の部隊による軍事行動の計画・実行・調整に関与していた、
可能性が高いのです。
マリウポリ包囲の際の、ロシア軍部隊による行為の責任者には、
ウラジーミル・プーチン大統領、国軍最高司令官で国防大臣のセルゲイ・ショイグ、
参謀総長ワレリー・ゲラシモフその他が挙げられます。
生活必需品の欠如
マリウポリ攻略を巡る戦闘が猛威を振っていた頃、
食糧他の基本的生活必需品が乏しくなりました。
ビデオ撮影の際に録音された音声
待ちなさい。少し下げって。他の人を押し潰すかもしれない!お願いです!
ミハイロ・プリシャフ(元マリウポリ住民)
最悪の問題は多分、食べ物や暖房がないことではなく、薬がなかったってことです。
それがないことで、みんな死んでいきました。
最も苦しんだのはお年寄りと子供でした。
死者数
ナレーション
攻撃で数千人が殺されました。
薬ときれいな水がなかったことからの、合併症で死亡した人たちもいました。
ミハイロ・プリシャフ(元マリウポリ住民)
マリウポリは大きな、大きな、大きな墓地なんです。
瓦礫の下にも沢山の人が残っています。
ですから、あそこで何人死んだのかまだ分からないのです。
テチアナ・ブラク
見た時にはゾッとしましたね、だって焼けた高層住宅があって、通りには遺体でしょう。
ハルナ・モロホフスカ(元マリウポリ住民)
道路の上で、瓦礫の下に埋まっている人もいるんですから、数えるなんて出来ませんでした。
ナレーション
多くが旧市街の墓地内に掘った壕に葬られました。
ヴァーグン・ムナツァカニアン(マリウポリ自治体議会事務局長)
最初は、大きな2つの壕でした。
1つの壕が遺体で一杯になってしまいました。
200位の遺体がありましたね。
ナレーション
壕と市内各地に多数できた仮の墓に埋められた遺体は、
ロシア軍が占領した際に掘り戻されて、市内の墓地に再埋葬されました。
戦闘で殺されたり、劣悪な環境が原因で死亡した人が、
少なくとも何人いたのか、その数を私たちは推計しました。
そのために私たちは2種類の埋葬地にある墓を数えたのです。
場合によっては、高解像度の人工衛星画像に見える個人の墓を数えたこともありました。
私たちは又、壕タイプの墓に埋葬された遺体の数も推計しました。
一定領域にある額や小さな木板のついた棒を数えることが出来た、
墓地2ヶ所の映像を検証、その後、このサンプル面積を利用し、他の墓地を推計しました。
マリウポリ市内と周辺にある5ヶ所の墓地で2022年3月から2023年2月までの間に、
少なくとも10,284の新たな墓がある、と私たちは推計しました。
埋葬された人の何人が民間人だったのか、私たちには分かりません。
マリウポリの年間平均死亡率を考慮すれば、
マリウポリへの攻撃がなかったら、8,000人超が死ななかったはずと算出しました。
しかしこの数字は、多くの墓に多数の遺体が埋められており、
その他にも瓦礫の下に埋まっている遺体や、
取壊しの際に持ち去られた遺体もある可能性が高いので、
死亡者総数を過小評価しているに違いありません。
マリウポリは今尚ロシアによる占領下にあり、物理的証拠の殆どは破壊されたので、
死者総数は不明となる可能性があります。
デニス・シェフトソフ
どうなっているのか、マリウポリで何が起きているか、周りを見てくださいよ。
完全に破壊されてしまいました。完全に無くなった、消えてしまったのです。
何もありません、瓦礫だけしかありません。
ナレーション
ロシア軍による攻撃が続く中、
3月中旬から数万人の住民が大きな危険を冒して街から脱出しました。
デニス・シェフトソフ
戦争が突然終わる、なんてことを願ってましたが、
そんなのは起きそうもないことが結局的には分かり、それで逃げるのを決心しました。
私たちが、無事であることを願ってますが、
全体的には恐ろしいことになりました、本当に恐ろしい。
ナレーション
2022年5月中旬までに、ロシア軍がマリウポリを完全に支配下に置きました。
戦闘の長期的な影響
ナレーション
爆撃は今止んだかもしれませんが、マリウポリの悲劇の終結は遥か彼方です。マリウポリの住民が経験した、戦闘・移動・喪失による心理的な影響は今後数年に渡り及ぶでしょう。
ドミトロ・クリク(元マリウポリ住民)
マリウポリは地獄になってしまった街です。
テチアナ・ブラク
人々は何が起きているのかを知るべきです。
ヴァーグン・ムナツァカニアン(マリウポリ自治体議会事務局長)
私たちは、戦前の生活、街、友人、愛する人、アパートをどんなに望んでも取り戻せません。それは分かっています。
ナレーション
この映像は、2022年10月に撮影したものです。
マリウポリを占領して以降ロシア軍は、建物を取壊し、新しいものを建設しています。
ロシアはまたウクライナ文化をロシア文化にとって代えているのです。
法の正義は行われていません。
マリウポリの生存者は失ったものへの補償を必要としています。
家を失い、愛する者を失い、生計の糧を失い、心の健康にまで影響を受けているのです。
マリウポリで行われた戦争犯罪に間違いなく関与したロシア高官と国軍司令官は、
裁判に掛けられる必要があります。
ナタリア・トカチェンコ
ウクライナ支配下の領域に辿り着いた時
「あの人たちは処罰されるべきだ。」、というのが私の初めて口に出した言葉でした。
無題
マリアンナ・キジャノウスカ作 マリウポリについての詩から抜粋
無人の家で窓ガラスが割れている
無限のブラックホール
この街であの人たちは生きたかった
愛したかったのは言うまでもない
今あるのは空気と水だけ
流した涙が残した塩だけ
瓦礫の中に自由はない
スーツケースの残骸しかない