前回は所得税について学びました。今回は、相続税、贈与税、相続時清算課税及び関連知識について学びます。
相続税
相続税は死亡した人(被相続人)の財産を承継(相続)した人(相続人)が納める税金です。「法定相続人」か「遺言書に書かれた人」が相続税を支払います。
【計算の手順】
STEP1:課税価格の合計-基礎控除額=課税遺産総額
STEP2:課税遺産総額×各法定相続人の法定相続分=各法定相続人の取得金額
STEP3:各法定相続人の取得金額×税率=各法定相続人の仮相続税額
STEP4:各法定相続人の仮相続税額の合計額=相続税総額
STEP5:相続税総額×(相続人の相続した財産額÷全相続財産額)
=各相続人の相続税額
STEP6:各相続人の相続税額-税額控除=納付税額
ポイントは相続税総額は実際の相続分にかかわらず、法定相続分で分割したと仮定して求める点にあります。
計算手順は少し複雑ですが、ご安心ください。
相続税がかかる割合は、全体の5%程度です。
理由1.おおきな基礎控除額がある(STEP1)
基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人数
理由2.マイホームの土地評価は80%の評価減(STEP1)
ある一定の要件を満たした宅地には「小規模宅地等の評価減の特例」の適用が受けられます。この結果、5,000万円の土地の評価が1,000万円になります。
なお、建物の評価額は固定資産税評価額です。
理由3.配偶者が相続する場合には特典がある(STEP6)
「配偶者の税額軽減」により、配偶者の法定相続分か1億6,000万円か、いずれか多い金額まで課税されません。
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
相続税の心配はなくても、相続争いは相続人が多いと高い確率で生じます。遺言書を活用して争いを予防しましょう。
相続のまめ知識
1.法定相続人と法定相続分
法定相続人は民法で定められている相続人です。法定相続人は民法で定められている取り分です。相続税を計算するときや争いのときの基準になります。
第1順位:配偶者1/2+子1/2
第2順位:配偶者2/3+直系尊属(被相続人の父母)1/3
第3順位:配偶者3/4+兄弟姉妹1/4
※第1順位がいる場合は、第2順位、第3順位は相続できません。
なお、遺言や遺産分割協議書でで法定相続人以外に財産を遺贈したり、法定相続分と違う割合を定めることができます。
2.相続の方法
相続人は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に次の3つのいずれかの方法を選択しなければなりません。何もしないと単純承認をしたものとみなされます。一度選択すると取消しはできません。
(1)単純承認
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産(借金)を相続します。
(2)限定承認
借金がいくらあるか分からない場合に、「相続財産の範囲内で借金を相続」するという条件つきで相続します。相続人全員で家裁に共同申請する必要があります。
(3)相続放棄
プラスの財産もマイナスの財産(借金)も相続しません。相続開始前は相続放棄できません。
3.遺言書
遺言書がある場合は、原則、遺言書通りに遺産分割されます。遺言書には一定の要件があり、この要件を欠くと無効になります。
相続税の心配はなくても、相続争いは相続人が多いと高い確率で生じます。遺言書を活用して争いを予防しましょう。
(1)自筆証書遺言
本人が自筆で、遺言の全文、日付、氏名等を書き押印します。
(2)公正証書遺言
本人が口述し、公証人が筆記します。
(3)秘密証書遺言
本人が遺言書に署名、押印後、遺言書(自筆以外可)を封印して同じ印で封印をします。公証人の前で、本人が住所氏名を記し、公証人は日付と本人が述べた内容を書きます。
4.遺産分割協議書
遺言書がない場合、各相続人の財産の取り分は相続人同士の話し合いで決め、遺産分割協議書にまとめます。
5.遺留分
一定の相続人の保証されている最低限の取り分です。遺留分を侵害された相続人は「遺留分減殺請求」を相続開始、贈与、遺贈があったことを知った日から1年以内にしなければなりません。
兄弟姉妹には遺留分はありません。直系尊属だけが相続人となる場合は遺産の1/3が、それ以外の場合は1/2が遺留分になります。
相続開始前の遺留分放棄には家裁の許可が必要になります。
6.準確定申告
被相続人の死亡した年に所得があった場合に、被相続人に代わって相続人が確定申告します。申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。
贈与税
ある個人(贈与者)から財産を無償で他の個人(受贈者)に与える約束を贈与と言います。贈与税は、受贈者にかかります。
贈与税には110万円の基礎控除があります。したがって、1月1日から12月31日までの1年間に贈与する金額が110万円以内であれば、贈与税は0となります。
贈与税は相続税を補完する税金です。
生前に贈与をすることにより相続財産を減らし相続税を減らすことが可能です。仮に、この贈与が何ら課税されないとすると相続税を逃れるために生前贈与が利用されます。
そこで、贈与税は「基礎控除は低く、税率は高く」されているのです。
住宅を取得するときに、夫婦で購入資金を出し合ったときに、資金の拠出割合に応じて登記をすれば問題はありません。しかし、すべて夫名義にした場合、妻が拠出した分を夫に贈与したものとして夫に贈与税がかかるので注意が必要です。
頭金を親から借りるときも注意が必要です。税金は実質判断なので形式的に借用証書を作成しても、約定通りに返済がされていない場合は、贈与と判断され贈与税が課される可能性があります。
生命保険の場合も契約者(保険料負担者)と受取人が異なる場合は、保険金受取り時に贈与税が課されます。保険金を受取ってから慌てないように、契約形態を確認しておきましょう。
収入保障保険は、死亡保険金を年金形式で受取る生命保険ですが、被保険者が死亡した場合、受取人には年金受給権に対して贈与税がかかります。さらに、毎年の年金受取時には雑収入がかかります。
このように意外なところで贈与税がかかりますので、注意してください。
●贈与税の特例
「配偶者控除の特例」「相続時清算課税」があります。
ここでは、「配偶者控除の特例」を取り上げます。
この特例は、婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用不動産や居住用不動産の取得にあてるための金銭の贈与を受けた場合に、一定の要件を満たすと2,000万円までは贈与税がかかりません。基礎控除を合わせると、2,110万円まで贈与税がかかりません。
相続時清算課税
贈与税と相続税を一体化した制度です。
満65歳以上の親から推定相続人である満20歳以上の子にたいする生前贈与が、累積で2,500万円までは贈与税が課されません。
2,500万円を超える部分は一律20%の贈与税が課されます。
なぜ「相続時清算課税」かというと、生前に贈与された財産は贈与時の時価で親の死亡時に相続財産に合算されて相続税の対象となるからです。
生前に納めた贈与税額は、相続税額から控除されます。
住宅を取得するときに親から資金援助(贈与)を受けるときは、親が65歳未満でも構いません。さらに、特別控除額が1,000万円上乗せされ、3,500万円まで贈与税がかかりません。
任意後見制度の活用
高齢になると判断能力が不十分になります。高額商品購入の契約をして、全財産を失った高齢者も少なくなく社会問題になっています。
任意後見契約は、判断能力が十分あるときに、将来判断能力が不十分になったときに備え、財産管理や療養看護などについての事務の委任をする契約です。
公正証書で作成する必要があり、任意後見契約は公証人から登記所の嘱託により登記されます。
任意後見契約を締結し、遺言を書いておけば、安心して老後を暮らせると思います。
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◇相続税について
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◇贈与税について
http://www.taxanswer.nta.go.jp/zouyo.htm
◇相続時清算課税
http://www.taxanswer.nta.go.jp/zouyo35.htm
◇成年後見について
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情報は下記からいただきました。
情報責任者 : T&Rコンサルティング有限会社 CFP 新美昌也
お問合せ: http://www.fp-trc.com
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