長く疲弊した日本を憂い、あらゆる分野の先駆者を自称する人たちが海外、それも新興アジアに進出することを推奨しだしてかなり久しい。
私も脱サラして8年、今は新興国に拠点をおいて、日本では想像もできないほどの活気とビジネスチャンスを肌で感じ、その現状を日本の方に発信している。
そんな中、昨年インドネシア、バリ島で金融と不動産を正規に行なう現地企業の日本人代表に出会い、アジアでの成功の難しさと日本で出回っている情報のギャップを思い知らされ、安直に海外へチャンスを求める日本人の危険性に気付かされた。
その内容を、経済の難しいテーマについても非常に分かりやすく解説しながら「なぜ日本人が海外で失敗をしてしまうのか」について克明に綴った本が、「誰も語らなかったアジアの見えないリスク 痛い目に遭う前に読む本」である。
私が推薦しているバリ島の会社は、この本の最後に、「アジアで成功すべくして成功した会社」として成功事例で取り上げられた会社なのである。
実は、私は情報・啓発本というのはあまり読まない。なぜならそれらの本にある情報は、少なからず何らかの扇動意図があって公開されるからである。そのような本で勧められる情報は、出版側のビジネス意図が織り込まれている場合がほとんどである。
つまり、その本で勧める商品を売りたいとか、このような本を出しました!とイメージアップの手段として出されているものが多いということだ。
ところが「アジアの~」本は、昨年、日刊工業新聞に連載されたアジアの見えないリスクの実態について書かれた記事を本にしたもので、アジア全域に蔓延している不健全なビジネスリスクに対して、無防備な日本企業らの実情を憂い、ある程度暴露することで実態を認識してもらうという趣旨の本だ。中身は何ら宣伝になる部分がない。
いや、この本を読むと、かえってアジアなんかに進出することが恐ろしくてできなくなると思うくらいだ。
現に世の中は、海外進出こそが成功のカギだという風潮がある中、例えば「~の成功マニュアル」のような、読めば誰でも成功できそうな本は山ほどある。しかし、本気で海外に活路を求める人にとっては、何がタブーなのかというリスクの部分が知りたいはずである。だが、失敗事例を集めたような情報雑誌は皆無ではなかろうか。
これは、失敗を公開することで海外と関係のある当事者が、不利益や危険を被る可能性があり、状況によっては命をも奪われかねない場合もあるので、ほとんどが語られることがないのである。だから、綺麗事では済まされない失敗事例は、常に闇に葬られ、真実が語られることはない。失敗を教訓として成長することが難しい所以がここにあると本書では語られている。
アジアに進出を計画する人たちは、みな大きな野望と夢を抱いている。これはすべての活力になるので大いに推奨されるべきことだと思うが、成功した絵ばかり追い求めて落とし穴を無視した場合、結果は想像に難くない。たとえ問題なく大成功を収めたとしても、それは「たまたま」である。
私も一人アジアで活動する中で、多くの苦労を経験した。もし事前にこのような本を読んでいたら、全く違った行動を取っていたかも知れない。
是非多くの方にこの本を読んでいただきたいのであるが、実はこの本、海外にビジネスを求める者だけの本ではない。
日本からあらゆるものを求めて視野を海外に向ける方。
ビジネスや事業はもちろん、投資、移住、留学、海外交流、あらゆる活動…
日本の環境とは違う海外に、これから踏み出そうとしている人すべてに大変参考になる実用書である。もしかすると、ある人にとっては命を救われる本になるかも知れないと本気で思っている。
何か物事を行う場合、成功を夢見て成功事例ばかり研究するか。予定の行動に対してリスクを分析し失敗事例を徹底して研究するか。あなたならどちらが成功への近道と考えるだろうか。
一つ言わせてもらえれば、成功事例は美談に終始する場合が多い。かっこ悪い事、失敗した事、コンプライアンスの面では公にできない事など、核心部分は伏せられてしまうことが多い。
海外、特に新興アジアは、日本の常識が通用しない国である。これは頭で分かってはいても習慣として体に染みついていない事は、すぐに行動や対策が取れないものである。
と言うことで、次回は、アジアのチャンスを読み解くうえで重要な、「日本人の勘違い」をこの本から抜粋して解説したい。
アジアで成功する前に、失敗しないためのノウハウを身につけることが如何に大切かが理解できると思う。
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