
あの日もこんなに暑い日だったのだろうか?
この建物は67年前に被爆を受けながらも無言の
語り部として今も尚この地で同じ川面を見続けている。
「元安川」
多くの被爆を受けた市民が熱さから水を求めてこの
川にたどり着きそして此処で命を絶えたという。
そんな人たちを慰霊するために8月6日の夜には
この川面には多数の灯篭が浮かび亡くなられた方達の
御霊を鎮める行事が行われる。
その行事の幕開けに今年も献納歌を歌うためLEGENDが
選ばれてこの地に立った。
沢山の音楽家の中で忘れてはならない8月6日に
原爆ドームの前で歌うことが許されるLEGENDを私は
とても誇りに思う。
夕方5時
まだ日差しのきつい中でリハーサルが始まった。
雨が降った時の為か今年は大きなテントが用意され
その中に5本のマイク。
傍らにはピアニストの電子ピアノ

これはテントの横から撮ったものだがきっとあの中は
風が流れず蒸し暑さで最悪の環境だったと思う。

匡ちゃんが弾いている間に川面に佇んでリハを見守る健ちゃん
リハーサルの曲名

厳かな調べが雑踏の中で静かに響き渡ります。
モーツァルト晩年の最大傑作といわれる聖歌。
リハーサルから素晴らしい曲を選ばれましたね。
本番は夕方の5時20分より~
初めはステージのある側で見ようかと思っていたが
それではテントの中のメンバーが一切見えない。
せっかくなら最高の場所で鎮魂の歌を聴きたいと思い
対岸のステージ真正面へ。
川幅が100m位あるのだろうか?
ステージ側の人は豆粒ほどにしか見えず顔の判別も
よく分からず。
司会の方の紹介に続きLEGEND登場。
ここのところコンサートで見慣れている白のフロックコートではなく
燕尾服の第一正装。
なんか、見た途端にうるっと来てしまいました。

この写真はズームを通していますのでまだ誰だか分かりますが
現実はもっともっと小さくシルエットでの判別でした。


川面に「風よーーーー」とメロディーが流れます。
空で聞いているであろう父や母、そして兄の顔がふっと
頭をよぎり感無量。
周りで聞いていらしたお客様もきっとこの時すでにあの世に
送った大事な人たちの顔が浮かんだ事でしょう。

今年に入ってから何度も何度も聞いたこの曲。
野外ステージで大空をバックに聞くとそのスケールの大きさに
圧倒されます。
お顔は良く見えなかったけれどこちら岸で聞いて良かった、
これが率直な感想でした。
唯一残念だったのはあきさんのMCの声が風に流れてしまい
こちら岸には殆ど届かなかったこと。
私は、何時も舞台で聞いているので途切れ途切れに聞こえる
話のフレーズにこんな事を話していられるのだろうと分かったが
周りにいらした方が「聞こえないわー」と仰っているのが
とてもお気の毒で又残念でもあった。
勘の良い糧ちゃんが気付いてくれたらと聞こえないジェスチュアーを
するも向こう岸には見える筈も無く・・・・・
献歌が終わると灯篭流しの開幕。
最初は市民代表の方たち。
沖縄の方、福島の方 などに交じってLEGENDからは
あきさんが参列。
セレモニーそのものはほんの数分で修了。
これは余談だがセレモニー修了時にあきさんが関係者の方
お一人お一人に挨拶をしていられるのが真正面のこちら側
からよく見えたがあきさんのお辞儀の綺麗なのに感嘆。
普段舞台に立ち人に見られることで自然自然と身につけられた
所作であろうが遠くから眺めてこんなに美しく見えるのも
素晴らしいですね。
正面メンバーの右上に太陽が燦燦と輝いている為こちら側の
暑さは半端ない。遮る物も無いが歌を聞いている間はそんな
暑さも忘れるくらい没頭できた。
私は母が長崎県人なので昔から原爆記念日には出かけたりする
ことを許されず家で静かにその日を過ごしなさいとしつけられて
育ってきた。
「祈りの日」
今年はここで迎えられたことをとても有り難く思っている。



こちらの3枚は2008年の灯篭流しセレモニー
初めてLEGENDが献納歌を行った年のものです。
今と変った方、そのままの方、色々ですね。
私にとってはじめての地方応援の旅、そして匡ちゃんが
LEGENDに入団して地方公演デビューの時でした。
暑い中、LEGENDの皆様、素晴らしい献歌に有意義な時間を
過ごさせていただきました。
明日は長崎の灯コンサート。
私の従兄妹もオペラ協会の一員として同じ舞台に立たせて
いただきます。
9日の朝はどうぞ浦上天主堂の長崎の鐘(アンジェラスの鐘)の
音に耳を澄まされて下さいね。
祈りと鎮魂の旅がつつがなく終わられますことを願っています。