SMILEY SMILE

たましいを、
下げないように…

気がつけば、200

2004-07-23 16:23:23 | 
50で、確か「よくもまあ、続いたものだ」と振りかえった。

気がつけば、200。

感触を、掴めてきた。

自分のわかることを、少しずつ、踏み固めていく、ひどく臆病な作業。

念願のことも、始められた。

これから、これから・・・。

みなさま、よろしくお願いします。

あなたの一言が、私を、変えるのです。

くじら、ねこ  2

2004-07-23 16:07:40 | くじらねこ
すると、ねこさんがお見えになりました。

ねこさんは、ぐったりとして、着席されます。そうとう、お疲れのよう

です。静かに流れる「BLUE IN GREEN」に、聴き入ります。

ねこさんは、最近、眠れない、ねむれない、眠れない、ねむれない、眠

られぬ、と、どんな言葉よりも多くこの言葉を仰います。ただ、眠れな

い、だけではないということが、私には痛いほどわかるつもりなので、

掛ける言葉もなく、急いで、ウエッジウッドのキャベンディッシュに6

2℃のミルクを注ぎ、生クリーム30cc、ダッチコーヒーを数滴落

し、静かにねこさんの前に差し出します。ねこさんは、ありがとう、言

うようにうなずかれ、ひとくち、ためいき、ほおづえ。

「くじらくんが、昨日言ったようにね、眠れない眠れない眠れないと言

ってはいるが、眠らずに生きている訳はなく、きっと無意識に眠ってい

るはずだ、というお説なんだがね、思い当たる節がないことはない、と

いうか、おおありだ。眠れない眠れない眠れない眠れないと、矢鱈に言

うのも、やめにした。何度も繰り返して言っているうちに、その言葉の

意味も失せて、なにかの呪文のように響いて、また眠れなくなる」

「ねこちゃん…、大丈夫かい?最近、ねこちゃんとは、会ってなかったじ

ゃないか。だいぶ混乱しているようだね。夢と現実が錯綜しているみた

い」

「???、ええっ、そうだったかい?いや、あの、え、うむむ」

と、ねこさんは動揺やら恥ずかしさやら不安で、ごった返している様子

なので、

「くじらさん、そのように仰ったら、胡蝶の夢、すべては夢の中の出来

事と言えますし、私のこの言葉さえも、ゆめ、まぼろし、でたらめ、こ

しらえもの、妄想、気晴らし、お遊びかも知れませぬぞ」

「まあ、それを言っちゃあ、元も子もないがね・・・」

くじらさんは、笑って、2杯目のエビスの黒10パイントに喉をならし

ます。

「うむむ、ああ、もうわからない、なんでもいい、なにもかも嘘じゃな

いか、みんな出鱈目じゃないか、信じられるものなんて、ないじゃない

か、みんな嘘吐きじゃないか、中途半端な馬鹿ばっかりじゃないの、

自分には関係ないからいいや、って、そんなこと言ってしまうのは、お

かしいじゃないかああぁぁっ」

ねこさんは、異様に興奮して、毛をお逆立たせになって、フーフー仰

っているので、わたくしは、慌てて、

「ねこさん、ねこさん、ねーこさん!ねこさん?まあまあまあまあ、落

ちついてください、落ちついて、落ちついてください、ねえ、落ち、着

いて下さい、落ち着いて、下さい、落ちつ、いて下さい!!落ち着いて

下さい落ち着いて下さいさい、ね」

と。呪文のように繰り返していると、なんだか、自分自身、妙に落ち着

いてきてしまって、えっと、なんだ、わたくし、何をしていたんでござ

いましょうや、などと、頭を掻いておりまして、ねこさんを見遣れば、

落ち着くというよりも、むしろ、しっかり落ち込んでしまっていて、な

ぜか恍惚の表情で、飲みかけのミルクに張った膜を見つめていらっしゃ

いました。

「やあ、陰気臭いなあ、ここに来たときくらい、明るい気持ちでいたい

ものだよねえ、ひつじくん」

と、くじらさんが、困ったような声で言うなり、待っていたかのよう

に、弾けるように躍動するイントロから、陽気でお道化たアレンジで、

「TAKE THE A TRAIN」

を弾き始めたひつじくんに、改めて、わたくしは、音楽というものの、

その場の空気を変える驚きの力に唖然、とさせられるのでございまし

た。

「こうでなくちゃあ、いけない、いいねえ、ひつじくんは、いいなあ、

くだらない、まるで命のこもってない言葉、安っぽい言葉、なんかよ

り、ずっと、偉いものだ」

くじらさんも、感服のようです。うんうん、私も首肯いたしました。

そして、このお店を先代から受け継いで19年と8ヶ月半、毎日は、日

常は、たんたんと、ねんねんと続いてゆく、この都の歴史と併走してす

ぎてゆきますが、このような、くじらさんの言葉を拝聴すると、この

仕事に従事している悦びを、今更、今でも、感じるのでございます。


天使の風貌

2004-07-23 15:34:45 | 太宰
先ほどの太宰追悼文の続き・・・。

花田清輝曰く、

「笑っているかれの背後には、絶えず死の天使の翼のはばたきが、きか

れた。」

「人間失格」の結び、

「……神様みたいないい子でした」

この言葉は、自己への救いと捉えていいのだろうか。

世の中に、天使は、確かに、いる。



恍惚と不安と

2004-07-23 15:29:01 | 太宰
撰ばれてあることの

恍惚と不安と

二つわれにあり

                  ヴェルレエヌ


太宰さんの処女作品集「晩年」の「葉」

の冒頭の句。

これは太宰の言葉だと勘違いしている人もいるかもしれない。

もともとはヴェルレーヌがキリスト教に回心した頃の詩らしい。

太宰さんの使い方は、うまい・・・。

(ちなみに、「生まれて、すみません」も彼の言葉では、ない)

見事、自分の心情を託しきっている。

で、自分はというと、おこがましい話だけれども、

似たような感覚に襲われることが、ある。

これは、特別な感性では、ない。

人として、人間として生きて在ることへの感謝、のような感情。

撰ばれる、と、恍惚という言葉に騙されては行けない。

不安、というこの言葉が、一等大事なんだ。

澄切った・・・

2004-07-23 13:41:56 | 太宰
ああ、暑い・・・。

これからビールを飲むことのいい訳のように、口からこぼれた。

一番搾り

「澄みきった、コク」


ふと、渡辺一夫の太宰さんへの追悼文のタイトルが、思い浮かんだ。

「澄切った切なさ」

太宰さんを表わす、見事な評だと思う。

太宰さんは、こんな渡辺一夫に、死の直前「如是我聞」というエッセイ

で痛烈な批判をしている。渡辺氏もそれに対する申し開き、弁解という

意味もあったのかもしれない。

心の中の事情はともかく、渡辺氏の捧げた花はフォスフォレセンスのよ

うに可憐な花だった。