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知って 得する Wi-Fi 雑学。

◯ Wi-Fiと有線LANの通信速度を比較、実際に有利なのはどちらか。

 普段はWi-Fiでネットワークに接続しているが、有線LANも利用可能という人は多いはずだ。そこで今回は、速度面ではWi-Fiと有線LANのどちらが有利なのかを考えてみたい。

使用する規格と電波状況によってはWi-Fiの方が有線LANより速い。

 いま一般的に使われている有線LANは、規格上の最大通信速度が1GbpsのGigabit Ethernet(1000BASE-T)である。有線LANの場合、規格上の最大通信速度と実際の通信速度はほぼ同じ。Gigabit Ethernetだと920M~970Mbps程度の通信速度が出る。

 一方でWi-Fiの最大通信速度は、Wi-FiルーターやPCといった機器が対応している規格やストリーム数(送受信機の数、アンテナ数と言われることもある)、帯域幅などで決まる。

 規格別の最大通信速度の上限値は、Wi-Fi 7が46Gbps、Wi-Fi 6は9.6Gbps、Wi-Fi 5だと6.9Gbpsだ。いずれも、利用可能なストリーム数をすべて使ったときの規格上の理論値である。家庭向けのWi-FiルーターやPC、スマホだと、すべてのストリームを利用する製品はない。よって実際には、上限の速度は出せない。

 PCはストリーム数が「2」、スマホはストリーム数が「1」か「2」で実装されている製品が多い。ストリーム数は「1×1」や「2×2」などと記載されることもある。ストリーム数が2のPCの場合、最大通信速度はWi-Fi 7対応だと5.8Gbps(6GHz帯、帯域幅320MHz時)または2.9Gbps(5GHz帯、帯域幅160MHz時)。Wi-Fi 6/6Eだと2.4Gbps、Wi-Fi 5 Wave 2(第2世代)対応だと1.73Gbps、Wi-Fi 5 Wave 1(第1世代)だと867Mbpsとなる。つまりWi-Fi 5 Wave 2の時点で既に、Gigabit Ethernetよりも仕様上は高速である。

 ここで注意しなくてはならないのは、Wi-Fiでは実際の通信速度が規格上の最大通信速度よりかなり低くなる場合があることだ。電波状況の良しあしや周囲の電波利用状況によって、実際の通信速度は常に変化する。その環境下での最大通信速度は「リンク速度」として、設定画面などで確認できる。

 つまり、Wi-Fi 5 Wave 2(第2世代)以降に対応するWi-FiルーターとPC/スマホを使っていて、電波状況が良ければ、Gigabit Ethernetの有線LANより高速に通信できる可能性が高いと言える。

有線LANとWi-Fi(2ストリーム時)の規格上の最大通信速度を並べた。Wi-Fi 5 Wave 2(第2世代)以降であれば、Wi-Fiの方がGigabit Ethernet(1000BASE-T)より速い
画1、有線LANとWi-Fi(2ストリーム時)の規格上の最大通信速度を並べた。Wi-Fi 5 Wave 2(第2世代)以降であれば、Wi-Fiの方がGigabit Ethernet(1000BASE-T)より速い。

有線LANには最大10Gbpsの高速規格がある。

 有線LANには、Gigabit Ethernetよりも高速な規格があり、普及が進んでいる。最大通信速度が10Gbpsの10Gbit Ethernet(10GBASE-T)と、最大通信速度が5Gbpsおよび2.5GbpsのMultigigabit Ethernet(5GBASE-T、2.5GBASE-T)だ。

 これらの高速規格は一部のPCが採用しており、Wi-Fiルーターやスイッチングハブなどの対応製品も売られている。ただし、Gigabit Ethernetと比べると対応製品はまだかなり高価である。

 またGigabit Ethernetの環境から移行する場合、スイッチングハブを使用していたら併せて買い替える必要がある。そして、LANケーブルは最低でもカテゴリー6以上が必要になるため、環境によってはLANケーブルの買い替えも必須となる。そのためか、Gigabit Ethernetほど普及が進んでいない。

10Gbit Ethernet(10GBASE-T)など、Gigabit Ethernetよりも高速な有線LAN規格に対応するLANポートは、一部のWi-FiルーターやPCなどが搭載している。写真はバッファローのWi-Fiルーター「WXR18000BE10P」。LANポートのうち1つが10GBASE-T/5GBASE-T/2.5GBASE-Tに対応する
画2、10Gbit Ethernet(10GBASE-T)など、Gigabit Ethernetよりも高速な有線LAN規格に対応するLANポートは、一部のWi-FiルーターやPCなどが搭載している。写真はバッファローのWi-Fiルーター「WXR18000BE10P」。LANポートのうち1つが10GBASE-T/5GBASE-T/2.5GBASE-Tに対応する。

実際に測定してもWi-Fi 5 Wave 2以降ならGigabit Ethernetより高速。

 前述の通り、Wi-Fiは電波の受信感度や周囲の電波の利用状況などで速度が変化しやすい。そのため実際の通信速度は、最大通信速度の6~8割程度になる。

 今回はテストとして、バッファローのWi-Fi 7対応ルーター「WXR18000BE10P」と接続したサーバーにベンチマークアプリ「OpenSpeedTest」(入手先はhttps://openspeedtest.com/)をインストールして、2.5GBASE-T/1000BASE-Tの有線LANと、Wi-Fi 7/Wi-Fi 6E/Wi-Fi 5 Wave 2のWi-Fiの速度を測定した。

 測定用のPCは以下の3台を使用した。

  1. 2.5GBASE-T、1000BASE-T、Wi-Fi 7の通信速度を測定
    2.5GBASE-Tと1000BASE-Tに対応する有線LANカードと、米IntelのWi-Fi 7に対応するWi-Fiモジュール「Wi-Fi 7 BE200」を搭載した自作のデスクトップPC。
  2. Wi-Fi 6Eの通信速度を測定
    「ThinkPad X1 Extreme Gen 5」(レノボ・ジャパン)。
  3. Wi-Fi 5 Wave 2の通信速度を測定
    「ThinkPad X1 Carbon (2019) (第10世代インテル)」(レノボ・ジャパン)。

なおWi-Fi 7 BE200は、このテスト時点で帯域幅320MHzはドライバーで制限がかけられており利用できないため、帯域幅160MHzで計測している。Wi-Fiの通信距離(測定用PCとWi-Fiルーター間の距離)は5mとした。

 Wi-Fi通信はいずれの規格を使用したものも、2.5GBASE-Tの通信速度には及ばないものの、1000BASE-Tの通信速度は超えていた。Wi-Fi 5 Wave 2以降で通信環境が良ければ、Gigabit Ethernetよりも高速であることが分かった。

2.5GBASE-T/1000BASE-Tの有線LANと、Wi-Fi 7/Wi-Fi 6E/Wi-Fi 5 Wave 2の実際の通信速度を測定した結果。どのWi-Fi規格の通信速度も2.5GBASE-Tの通信速度には及ばないものの、1000BASE-Tよりは速かった
画3、2.5GBASE-T/1000BASE-Tの有線LANと、Wi-Fi 7/Wi-Fi 6E/Wi-Fi 5 Wave 2の実際の通信速度を測定した結果。どのWi-Fi規格の通信速度も2.5GBASE-Tの通信速度には及ばないものの、1000BASE-Tよりは速かった。

有線LANがWi-Fiより優れている点もある。

 Gigabit Ethernetよりも高速なWi-Fi 5 Wave 2以降のWi-Fiであれば、高画質の動画再生やファイルのダウンロードなどで速度を生かせる。ただし、ネットワークの応答速度(レスポンス)だと、Wi-Fiは有線LANに勝てない。

 Wi-Fiの応答速度は、電波の受信感度や周囲の電波状況に左右されやすい。実際にpingコマンドでパケットをWi-Fiでルーターに送ったときの応答速度を調べると、結果が一定しない。それに比べ有線LANで送ると、よほどのことがない限り応答速度はほぼ一定となる。

 ただしWi-Fiの応答速度が一定しないとはいえ、ミリ秒単位のほんのわずかな差だ。Webサイトやメールの閲覧など、日常的なインターネットの使い方であれば、ほぼ問題ない。一方で、ネットワークの応答速度が求められるゲームやネット会議を重視するのであれば、状況に応じて有線LANも検討した方がいいだろう。

Wi-Fiルーターに対しpingコマンドで応答速度を調べた。有線LAN(画面左側)の結果が1ミリ秒で安定しているのに対し、Wi-Fi(画面右側)は電波状態が良く通信が安定している場所で調べているにも関わらず2ミリ秒~6ミリ秒と変化していた。この差が気になる使い方をするなら有線LANの方が適している
画4、Wi-Fiルーターに対しpingコマンドで応答速度を調べた。有線LAN(画面左側)の結果が1ミリ秒で安定しているのに対し、Wi-Fi(画面右側)は電波状態が良く通信が安定している場所で調べているにも関わらず2ミリ秒~6ミリ秒と変化していた。この差が気になる使い方をするなら有線LANの方が適している。

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