〇 パソコンの性能が低下し壊れることも、うっかり見落としがちな「吸排気口の詰まり」。
パソコンを使っていてやりがちなことは、パソコンの吸排気口を周辺機器などで塞いでしまうことだ。しかし、これは絶対にNG(図1)。パソコンは吸気口から新鮮な空気を取り込んで内部を冷却、熱くなった空気を排気口から排出することで内部の温度を安全な値に保っている。吸排気口を塞いでしまうと熱がこもって内部の温度が危険値まで上昇してしまい、性能低下や故障を招く危険がある。
図1、最近のCPUやSSDは熱による故障を防ぐ「サーマルスロットリング」という機能を備えており、高温になると性能を落として発熱を抑える。そのため、パソコン内部の温度が高くなると性能が大幅に落ちる。さらに、パソコン内部の温度が上がりすぎると基板が故障する恐れもある。吸排気口を塞ぐとパソコンの内部はあっという間に高温になるので要注意。
パソコン内部の温度上昇により性能が下がるのは、CPUとSSDに、熱による故障を防ぐ「サーマルスロットリング」という機能が搭載されているためだ。冷却が不十分になった場合、CPUとSSDのサーマルスロットリング機能が発動し、温度を下げるために動作クロックを強制的に落とす。そのため、通常時よりも大幅に性能が落ちてしまうのだ。
高温状態が続いた場合、マザーボード(基板)などパーツの温度が限界値を超えてしまい、故障する可能性もあるので要注意だ。
モバイルノートで試したらCPUもSSDも大変なことに。
実際に吸排気口を塞ぐとどうなるのか、筆者の愛用モバイルノートパソコンで試してみた(図2、図3)。検証したのは「CPUの温度と動作クロックの違い」および「SSDの温度と書き込み性能の違い」。検証に使用したアプリなどは図4の通りだ。
Θ 実際に吸排気口を塞いでテストしてみた。
図2、ノートパソコンは冷却性能に余裕のないものが多い。特に小型軽量モデルは注意が必要だ。今回はCore i7-1165G7やPCIe SSDなどの高性能パーツを搭載した富士通の13.3型モバイルノートパソコン「LIFEBOOK UH90/E3」(富士通)で吸排気口を塞ぐとどうなるのかをテストしてみた。
図3、LIFEBOOK UH90/E3は背面1カ所、底面に4カ所、吸排気口が設けられている。これらをすべてテープで塞いでテストした。
Θ OCCTなどで負荷テストを実行、HWiNFO64で温度などを測定。
図4、通常時と吸排気口を塞いだ状態とで「CPUの温度と動作クロック」「SSDの温度と書き込み性能」がどう変わるかを検証した。CPUの温度と動作クロックの違いは、パソコン検証用ツール「OCCT」でCPUに15分間負荷をかけ続けた際の値を「HWiNFO64」で計測。SSDの温度と書き込み性能の違いは、ベンチマークアプリの「TxBENCH」でシーケンシャル書き込み(QD32)を10分間連続実行した際の値をHWiNFO64で計測した。
CPUのテスト結果は図5の通り。吸排気口を塞いだ場合はいきなり96度と限界温度の100度近くまで上昇。以降、サーマルスロットリングの働きで一時的に温度が下がったりしているものの、基本的に危険な水準のまま推移した。動作クロックの落ち込みも激しい。いきなりサーマルスロットリング機能が発動して、1GHz付近まで急降下。時折400MHzを下回るなど、性能はガタ落ちだ。塞がなかった場合は2.4GHz付近を維持しているので、最大6分の1程度まで落ち込んでいることになる。
Θ CPUが高温になり、動作クロックが大幅にダウン。
図5、吸排気口を塞いでいない状態と、塞いだ状態でのCPU温度と動作クロックは明らかに異なる。塞いでいない状態では、CPU温度は90度前後で推移した後、92度前後まで上昇したものの、動作クロックは2.4GHz付近を維持している。一方、塞いだ状態ではCPU温度がいきなり96度とCPUの許容限界温度の100度近くまで上昇。動作クロックはサーマルスロットリングにより1GHzあたりまで低下した。それ以降、400MHzを切る局面もあり、低クロックのまま推移した。
SSDも、発熱の大きいPCIeタイプということもあり、吸排気口を塞いだ影響がはっきりと出た(図6)。いきなり温度が80度を超え、サーマルスロットリング機能が発動。書き込み速度は通常時1300MB/秒以上のところ300MB/秒以下まで落ち込み、以降ほぼ同水準で推移した。
Θ SSDの温度はいきなり限界に達し、性能は落ちたまま。
図6、SSDの場合、吸排気口を塞いだ影響がより顕著に表れた。吸排気口を塞いでいない状態では書き込み速度が1300MB/秒前後出ている。対して、吸排気口を塞いだ状態ではSSDの温度が急上昇したためサーマルスロットリングがほぼ同時に発動し書き込み速度が300MB/秒前後まで落ち込んだ。なお、吸排気口を塞いでいない状態でも5分過ぎあたりからサーマルスロットリングが発動した。
今回のテストでは冷却性能の高くないモバイルノートパソコンを使用したため、かなり深刻な結果になってはいるが、もう少し冷却に余裕のあるパソコンでも、吸排気口を塞ぐとCPU、SSDに大きな負荷がかかり、性能が落ち込むことには変わりない。
吸排気口はともかく塞がないことが重要だ。特に外付けHDDなどの周辺機器で塞がないように注意したい(図7)。また、底面に吸排気口がある機種の場合も要注意だ(図8)。
Θ 吸排気口を塞がないことが重要。
図7、ありがちなのは、狭い机の上で吸排気口の前に外付けHDDなどを置いてしまうこと。吸排気口を周辺機器などで塞いでしまわないように注意したい。
図8、底面に吸排気口がある機種も多い。ゴム足などで設けられた底面の隙間を塞がないよう要注意。毛足の長いじゅうたんの上などでは使わないようにしよう。
長く使っているパソコンの場合は、吸排気口がほこりで塞がってしまっている可能性もある。その場合はきちんと掃除しよう(図9、図10)。
Θ ほこりがたまっている場合は掃除を行う。
図9、排気口にほこりがたまっている場合は掃除機で吸い取る。エアダスターはほこりが内部に入り込むのでNGだ。内部のほこりが原因でパソコンが起動不能になる場合もある。
図10、掃除機で吸い取れないしつこいほこりは、アルコールで湿らせた綿棒などで丁寧に拭き取ろう。
パソコンが突然故障するような事態を避けるには、CPUやSSDなどの温度に問題ないか、たまにはチェックしてみるとよい。今回のテストで使用している「HWiNFO64」は、詳細なログをCSV形式のファイルで保存できるのでお薦めだ(図11~図13)。
Θ 愛機のログを取る方法。
図11。CPUやメモリー、SSDの温度や動作クロック、使用率などを計測してログを保存できるフリーソフト。メイン画面ではパソコンに搭載されている各種ハードウエアの詳細情報を確認できる。メイン画面のセンサーアイコンをクリックすると各種ハードウエアの温度などを確認できるセンサー情報画面が起動する
図12、センサー情報画面ではCPU、メモリー、ストレージなどの温度や動作クロックなどを細かく確認できる。右下にある「+」マーク付き書類アイコンをクリックするとログの取得が開始される。その横にある歯車アイコンをクリックするとログを取得する項目を設定可能。CPU温度だけなど、ログを取得する項目を絞ることができる。
Θ ログファイルはCSV形式で保存される。
図13、ログファイルはCSV形式で保存されるので、Excelなどで閲覧できる。CPU、メモリー、グラフィックス、ストレージなどの主要ハードウエア情報からバッテリーの状態まで、標準では膨大な情報が取得される。素早く目的のデータを確認したい場合は、図12の歯車アイコンをクリックしてログの取得項目を絞ったほうがよい。
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