〇 専用チップGravitonをどう使う。
理化学研究所は2023年1月24日、スーパーコンピューター「富岳」用のアプリケーションなどをクラウド環境でも利用することなどを目指し、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の日本法人であるアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)と共同研究を開始すると発表した。2024年度中にサービスを開始する。将来的にはAWS以外のクラウドサービスでも富岳用ソフトを利用できるようにする考えだ。
富岳の共同研究先としてAWSジャパンを選んだ理由は「専用チップの性能」(理化学研究所計算科学研究センターの松岡聡センター長)だという。専用チップとはAWSが独自に開発したGraviton3(2021年11月発表)と、Graviton3をハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)用に拡張したGraviton3E(2022年11月発表)だ。
富岳とGraviton3、Graviton3Eはともに英Arm(アーム)の命令セットアーキテクチャーと、ベクトル処理命令「SVE(Scalable Vector Extension)」を採用する。これが富岳でもAWSも動くアプリケーションを開発できるとする根拠だ。
富岳のアプリケーションをAWS上で活用する際には、Graviton3/3Eを搭載したインスタンスを使う想定だ。計算の際にどの程度スケールアウトできるかは、今後検証する方針だ。
富岳上では既に「成果創出加速プログラム」によってシミュレーションなどの研究が進んでいる。現時点で研究に活用されているアプリケーションや、研究の成果などをクラウドで活用できるようにする狙いだ。高い計算性能が必要な基礎研究を富岳で実施したうえで、商品化に向けた研究はAWS上で引き継ぐ活用方法などを想定している。加えて理化学研究所は「高い計算性能のマシンを使いたいが、富岳を全部使うほどの性能は必要ない」とのニーズを抱えるユーザーにもリーチしたい考えだ。