〇 使うと分かるOffice on the webの便利さ、作成ファイルの行方不明をなくす。
Office on the webの機能は、デスクトップ版に比べると限られており、Excelならマクロが使えないなど、ネガティブな部分も少なくない。だが、マイナスな面ばかりを見ずに使っていくと、実は驚くほど便利なポイントがいくつもある。なにより、無料で使えるのが大きい。かつてのOffice Onlineを利用して「使えない」と判断した人も、この機会に最新版にもう一度挑戦してみてほしい。随分と機能がアップしているので、考えが変わるかもしれない。
まずは基本的な使い方を紹介しよう。利用に当たってはMicrosoftアカウントが必要だ。そのアカウントを利用して、Webページからサインインする。Webページは「Office on the web」で検索すれば出てくる。検索後の一覧に「Web版のExcel、Word、PowerPoint|Office 無料 -Microsoft」と書かれているWebページがそれだ(図1)。
Θ 使い始めるまでの基本的な手順もWebブラウザー上で完結。
図1、OfficeのWebページを開き、サインインするだけで基本的には利用できる。
サインイン後すぐに使える。
Microsoftアカウントを入力してサインインすると、トップページが開く(図2)。ここから画面左のアプリアイコンをクリックすると、ExcelやWordなど、それぞれのアプリが開く。複数のアプリを利用したいなら、右クリックして「新しいタブで開く」を実行するとよい。
図2、このページが開けば、各アプリを左のアイコンから起動できる。
個人用と会社用でアカウントが異なるようなケースでは、右上のアイコンをクリックして別のアカウントで再度サインインする(図3)。
図3、別のアカウントで利用したい場合は、右上のアイコンをクリックして切り替える。
プリインストール版のOfficeは、別のパソコンにはインストールできない。2台目、3台目もOffice入りを買うと費用が掛かるし、選べる製品も限られる(図4)。2台目のパソコンはOffice on the webを使うと割り切れば、その分出費が抑えられる。
Θ 2台目以降での利用にもお薦め。
図4、プリインストール版のOfficeを既に利用している場合、ライセンス上新しいパソコンでそのアプリは利用できないので、Office on the webを使うのがお勧めだ。
複数のパソコンを持っている場合や人から借りたパソコンでも、サインインさえすれば同じようにOffice on the webが使える(図5)。詳しくは後述するが、アプリだけでなく、ファイルまで一気通貫で利用できるのが便利なのだ。
図5、複数台のパソコンを持っているケースは、どのパソコンからも利用できる。また、友人・知人から借りたパソコンでもサインインすれば利用可能だ。
Webアプリなので、パソコンの性能がそれほど高くなくてもそれなりに快適に使える。もちろん、Webブラウザー自体の動作が重いような非力な製品では難しいが、快適にWebページを閲覧できているなら問題なく使えるはずだ(図6)。
Θ アプリのインストールは不要。
図6、アプリをインストールする必要がなく、いつでもWebブラウザーから利用可能。SSDの容量が少なかったり、CPUが非力なパソコンでもある程度軽快に使える。
ファイルはOneDriveに。
アプリはWebブラウザーで使い、ファイルはOneDriveに保存するのがポイントだ。OneDriveは5GBまで無料で使える。それを超えると課金が必要なので、現時点の空き容量を確認しておきたい(図7)。
Θ OneDrive上のファイルを使う。
図7、ファイルはOneDrive上で管理することになる。5GBまでは無料で使えるので、画面左下に表示される空き容量をチェックしておこう。
容量が既に足りない場合や、本気で使い込むなら課金を検討してもよいだろう。100GBの個人向けで年間2244円だ。各種のMicrosoft 365を既に利用しているなら、1TBなど規定の容量が利用できる。Office on the webを使っていると、仕事のファイルはOneDriveに保存するのが普通になってくる。バックアップにもなって便利な上に、パソコンのストレージ不足も解消されるわけだ。
デスクトップ版のOfficeを既に持っている場合でも、Office on the webはファイルの共有や共同作業に便利に使える。ファイルを常にOneDrive上に保存しておくことで、簡単に共有できる。
リンクを送るだけで、相手はそのファイルを利用できる(図8~図10)。相手もOffice on the webが利用できるようにしておけば、Webブラウザー上で作業が完結できてスマートだ。
Θ ファイル共有で画期的な使い勝手になる。
図8、共有メニューから簡単にファイル共有ができる。
図9、図8の「共有」メニューからは編集権限のカスタマイズなどが可能。設定したい場合はこちらから共有しよう。
図10、リンクが表示されたらメールなどで送ればOK。「Teams」などでも構わない。
筆者はデスクトップ版のOfficeを利用しているが、共有したファイルを確認したり、ちょっと編集したりする程度の作業なら、Office on the webを使うことが多い。その方が、アプリの起動が手っ取り早い上に、ファイルの保存を意識する必要がないからだ。Webブラウザー上で編集したら、保存ボタンを押さなくてもOneDrive上のファイルが自動的に更新される(図11)。
Θ 共同編集もお手のもの。
図11、届いたリンクをクリックすると、このように別のユーザーでもファイルが開く。
こうなると、共有相手の編集ミスが心配になるが、そこもしっかりと対策されている。「変更箇所の表示」で、誰がどこをどのように編集したかが分かる(図12、図13)。
図12、「変更箇所の表示」をクリックすると、誰がどのように編集したかが分かる。
図13、「港区」の部分の表示がおかしかったので、編集されたことが分かった。
Office on the webは、Webブラウザーで開ける。このため、起動が面倒な人は、ブックマークを作っておくだけですぐにファイルを開ける。Officeアプリを使うというより、Webページを利用する感覚だ。アドレスバーに常に表示されているリンクをブックマークしてしまえば、それぞれのファイルをExcelなどのアプリで開いた状態のままリンクとして登録できる。
ブックマークが最強の記録。
よく使うWordやExcelなどのファイルは、お気に入りバーに追加しておくだけで、Webブラウザーからクリック一発で開けるようになるわけだ(図14、図15)。
Θ ファイル管理の面倒さから解放される。
図14、Office on the webで開いているファイルはブックマークに登録できる。もちろん、共有ファイルも同様だ。
図15、お気に入りバーにURLをドラッグするだけで、いつでも開けるようになる。これでファイル探しから解放される。
ブックマークは、これまでと同じようにグループ分けするなどして整理することも可能。ファイルが多数の場合は、OneDriveのフォルダーを開いた段階でブックマークに登録してもよいだろう。
予定のリストや在庫表など、繰り返し使うファイルには最もマッチした利用法と言えるだろう(図16)。
図16、ブックマークをクリックすると共有しているファイルが開く。ブックマークを共有していればほかのパソコンでも利用可能。
パソコンを買い替えたときなども、ログインさえすればすぐに作業が続けられる。インターネットに接続していないと使えないのは仕組み上致し方ないが、パソコン本体に保存するのに比べて、急な故障などにも慌てずに済むはずだ。
会社のメンバーと快適に仕事をする。
ここでは、筆者が会社のメンバーと運用しているOffice on the webの使い方を紹介しよう。
例えば、スケジュールや何らかのリストなど、業務で全員が頻繁に見る表があるとしよう。そんなファイルは、OneDriveに保存するのだが、どのフォルダーに保存しているのかが分かりづらいし、忘れる人も出てくる。そこで、Office on the webにファイルのリストを作り、それを全員がブックマークしている。共有したいファイルがあれば、このExcelにURLを貼り付けるだけで全員がいつでもファイルを探すことなく利用できる(図A~図D)。
図A、多くのファイルを共有する場合は、URLを貼り付けたリンク集を作っておくとよい。誰でも、ここを見れば必要なファイルがすぐにWebブラウザーで開ける。
図B、共有したいファイルをOffice on the webで開き、リンクをコピーする。
図C、セルを選択したら「挿入」→「ハイパーリンク」をクリックして、貼り付ける。
図D、リストにリンクが追加され、共有編集ができるようになった。
単にファイルを1カ所のフォルダーに保存するのとは違い、ブックマークで開けるためメンバーの誰にとっても手っ取り早いわけだ(図E~図G)。
図E、常に共有していたいファイルは、別のタブで開いておくと便利だ。
図F、ファイルの編集をミスしたら、右クリックから「バージョン履歴」で元に戻せる。
図G、以前のバージョンが表示されるので、クリックすれば編集状況を過去に戻せる。
また、Excelのリストならファイル名だけでなく注釈や記載のルールなども書き込める。表の上で分類すればより見つけやすくなるだろう。
なお、筆者の事務所では顧客の要望で、「Googleドキュメント」なども併用しているが、そんなファイルのURLも、このOffice on the webで使えるExcelに貼り付けている。結局は、ファイルをOneDriveで共有しているだけだが、Office on the webのExcelに集約することで、URLを伝えるだけで全ての情報が一発で伝わる。