〇 これだけは知っておきたい、USB充電器の基礎知識。
最近はスマホやタブレットだけでなく、ノートパソコンやデジタルカメラなどあらゆるデジタル機器がUSB充電器で充電する仕様に変わってきている。もはやUSB充電器は生活に不可欠といっても過言ではない。
しかし、USB充電器にはいろいろな種類があり、製品選びにはそこそこの知識が必要だ。いいかげんに選ぶと、意図した用途にまったく向かないといった失敗も起こり得る。市場にある製品は大きさや形から対応ワット数、充電端子の種類と数まで千差万別。AC電源コンセントに挿す充電器だけでなく、電池を内蔵したモバイルバッテリーもある。本特集では買った後で泣くことがないように、USB充電器およびモバイルバッテリーの基礎知識から製品の選び方までを解説していく。
どこでどう使うのか 選ぶ際は目的を明確に。
自宅や会社などAC電源コンセントがある場所で使うなら、コンセントに接続する通常タイプの充電器を選べばよい(図1)。コンセントがない場所で充電したいならモバイルバッテリーが必要になる(図2)。なお、モバイルバッテリー自身はUSB充電器で充電するので、どのみちUSB充電器は必要だ(図3)。USB充電器には持ち歩きを前提としたタイプとそうでないタイプがある。モバイルバッテリーにしても、小型で持ち歩きやすい製品からそうでない大型製品までさまざま。自分がどう使うかを明確にして製品を選ぼう。
USB充電器の役割は家庭用コンセントの100V交流電圧を、スマホやパソコンなどのデジタル機器が対応する5~20Vの直流電圧に変換すること(図4)。対応する電圧や電流、最大出力(電力)は製品ごとに異なる。そのため、充電器を選ぶ際は、充電したい機器が必要とする電力を把握しておくことが肝心。機器の充電に必要な電力と同等以上の出力に対応した充電器を選択する必要がある(図5)。また、同時に複数の機器を充電したい場合は必要とする電力の合計のほか、充電器側の端子それぞれの出力も重要になってくる(詳細は後述)。
充電したい機器に対応したケーブルを用意する。
USB充電器には、取り外し可能なUSBケーブルが付属する製品とケーブルがじか付けのタイプ、ケーブル別売の3種類がある(図6)。ケーブルが取り外せるタイプと別売タイプは、USBケーブル次第でさまざまな機器を充電できる。充電器にはUSBタイプAとCの一方または両方の端子が装備されている。各端子に接続できるUSBケーブルは図7の通りだ。ケーブルが取り外せないタイプも変換ケーブル(アダプター)を利用すれば異なる端子の機器の充電に対応できる場合がある(図8)。
なお、タイプC端子をA端子に変換するアダプターやケーブルもあるが、これはデータ転送、もしくはパソコンからSSDなどへの電力供給用に設計されている(図9)。充電器のタイプC端子をA端子に変換してパソコンのA端子に接続すると最悪、パソコンが壊れる可能性がある。
現行のUSB充電器とモバイルバッテリーに装備されているUSB充電端子はタイプCとタイプAの2種類(図10)。この2つは出力(電力)に大きな違いがある。
タイプA端子は小電力向け 大電力のPDが大本命。
充電器とモバイルバッテリーのタイプA端子は通常のものとは違い、充電用規格である「Battery Charging(バッテリーチャージング)1.2」をサポートしている。だが、それでも電力は最大7.5Wと小さい(図11)。タイプA端子は基本的に小電力機器向けと考えていい。
なお、サードパーティの急速充電規格に対応して7.5W以上を出力できるUSBタイプA端子もある。例えば、クアルコムの急速充電規格「Quick Charge(クイックチャージ)」をサポートしていれば最大36Wを出力できる(図12)。
USBタイプC端子は15Wと出力が大きいが、拡張規格であるUSB PD(ピーディー=パワーデリバリー)をサポートしていればより大きな出力が可能(図13)。USB PD 3.0対応なら最大100W、同3.1対応なら最大240Wを出力できるので、パソコンなどの大電力機器も充電できる。
USB PDは機能面でも優れている。PD対応の機器と充電器をタイプCケーブルで接続すると、ケーブルのCCラインを使って機器側が対応する電力(電圧/電流)と充電器側が供給可能な電力の情報が交換され、最適な方法で急速充電が始まる(図14)。さらに、機器と充電器の両方がUSB PDの拡張規格である「PPS(プログラマブルパワーサプライ)」に対応していれば、より高効率かつ低発熱量での急速充電が可能だ(図15)。
クアルコムのクイックチャージもバージョン4以降はUSB PD互換になった(図16)。今後、急速充電の規格はUSB PDに統合されていくと目されている。
60Wを超えるPDでは特別なケーブルが必要になる。
パソコンをUSB PDで充電する場合はタイプCケーブルの選択も重要だ(図17)。60W(20V×3A、図13参照)を超える場合は、対応アンペア(A)情報を機器に伝達するチップ「eMarker(イーマーカー)」を内蔵した5A対応のタイプCケーブルが必要。そうでないと5Aの電流が流れない。また、100Wを超えて充電する場合は、USB PD 3.1の規格である「EPR(エクステンデッドパワーレンジ)」の認証を取得したタイプCケーブルが必要になる。