いじめの構造 (新潮新書 (219))森口 朗新潮社このアイテムの詳細を見る |
最初の卒業式練習,「別れの言葉」でステージ上に子ども達が並んだとき,A男の両脇がスーッと開いた。
そこが,私の忍耐の限界だった。
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A男が皆から避けられていることに気付いたのは2学期の終わり頃だった。
男子は一緒に遊ぼうとしない。声をかける言葉といえばからかいばかり。
女子に到っては,近寄ることすらしない。A男の持ち物やプリント類も触ろうとしない。
給食当番の女子は,A男が取りに来ると露骨に持ち場を離れる。
A男自身も異変に気付き,何度か私に訴えてきた。
しかし,私もあえて放置した。「機未だ熟さず」と。
「いじめ」に関しては人一倍厳しい私の煮え切らない態度こそ,誰が見ても一番の異変だったであろう。
もちろん,それには理由があった・・・・・・(②に続く)