さて、前回はこう結論づけた
可変資本を減らせば、剰余価値量は上昇する。搾取率も上昇する…よって資本家どもは、労働者の賃金を切り下げ、人員削減に励むのだ
ということで、資本家は労働者の賃金を切り下げよう、切り下げようとする。あるいは「合理化」攻撃をかけ、労働者の数を減らして、同じ量だけ生産しようとする。
前者のやり方は、多くの企業が正規労働者を減らし、時給の低い、あるいは社会保険料を負担しなくてよい非正規労働者に切り替える…なんてことをやっていく。
後者は、労働強化や機械やロボットの導入その他もろもろの「技術革新」によって行おうとする。
ところで、一般的には機械やロボットの導入のような「技術革新」は、人間を苦しい労働から「解放するもの」として肯定的にとらえられている。また、同じ人間の労働であっても、機械を使う場合と使わない場合では、生産力がまるっきり違うことも多い。機械やロボットは、人間社会を豊かにするものと考えられている。
シャツを作る労働はどう「機械化」されるのか分からないから、その1歩手前のシャツの原料である布をつくることを考えてみよう。
大昔、布は、まあ一応機械ではあるけれど、人間がえっちらおっちら「機織り機」を動かしながら織って、布を生産していた。現在はその「機織り機」を自動化して、電力(産業革命期は、蒸気力や水力)を使用して布を大量生産している。
布が大量にできるためには、原料となる糸も大量に必要だ…これも大昔は、人間が蚕の繭や綿花なんかから、糸車を回して取り出していた…今やこれも大量に「機械」を自動的に動かしてやっている。原料も第一次産品である繭や綿花ではなく、石油化学工業の製品だったりする。
こうして人間は今や、ちょちょっと働くだけで生活に必要な様々な品物を手に入れることが出来る「ハズ」になったのだが…
資本主義社会においては、労働の対価としての賃金を得られないと、生活に必要な様々な品物を得ることは絶対に出来ない。その賃金は、冒頭に上げた真理、「資本家どもは、労働者の賃金を切り下げ、人員削減に励むのだ」によって、常に切り下げられ、脅かされる…それどころか、人員削減によって労働現場から放り出されることもある。
機械やロボットは、人間を苦しい労働から「解放するもの」と書いた…だが資本家は可変資本を減らすために機械やロボットを使用する…資本家から見れば、労働者を労働から「解放」することで、剰余価値をより多く得ることができるのだが、労働者にとって労働からの「解放」は、おまんまの食い上げ、死に直結する。
さて最初に工場を全自動化させて、労働者ゼロの工場をつくってみた…AIの発展によって、全ての労働がAIやそれに制御される機械に置き換わるかもしれない。その時どうなるか?ということ考えるためのものであった。荒唐無稽かもしれないが、こんな世の中が来るカモしれない。その時、資本主義社会がそのままであれば、人間は労働から「解放」されるが、同時に多くの労働者は「生存」すら出来ないことになる。
これを防ぐ一つの方法として、「社会主義、共産主義革命」があるわけだが、別のやり方が提案されている。それがベーシックインカム(BI)だ。
「労働とその対価による賃金」というあり方でなく、人が生存していくための最低限の「収入」を、誰にでも保障しましょうというもの… 次回から、これについてちょっと考えてみる。
おまけ…梅の季節だから、大阪天満宮の梅の花