小説版『トーマの心臓』ネタバレごめんね。
萩尾望都さんの漫画『トーマの心臓』を、『スカイ・クロラ』の森博嗣さんが、漫画のイメージそのままに、綺麗な文章で綴られておりました。
Lost heart for Thoma
ofじゃないのね、forなのね。
トーマは出てこない
タイトルは『トーマの心臓』ですが、主人公はトーマではありません。
トーマは、みんなの想像をかりたてる存在として名前だけ度々出てきます。
一体どんな男の子だったのだろう。
トーマに興味がわいた所で、トーマそっくりのエーリクが転校してきます。
なぜトーマは死んだのか
物語が始まった時点で、既にトーマは亡くなっています。
トーマの死は事故だったのか、自殺だったのか、それとも誰かに殺されたのか?
学校で様々な憶測が飛び交う中、生前のトーマが近づいていた先輩ユーリに疑惑の目が向けられます。
萩尾望都さんは、想像でしかないことを事実かのように語る人間の愚かさを表現するのがうまいなと思います。
萩尾望都風ミステリーは、心理面がヒリヒリします。
森さんの文からは人間関係の気まずい空気、鬱陶しさが漂ってきます。
3人の男の子達の傷
ユーリ、オスカー、エーリクの3人を中心に物語は進みます。
オスカーは母親がドイツのハーフで父が日本人ですが、目が青く日本人には見えません。
父は母を射殺した後、オスカーを知人のワーグナ教授に託し行方不明になります。
トーマにそっくりなエーリクは、マザコンで、終盤その母親が事故死します。
ユーリは、元々明るい生徒でしたがある事件が原因で人が変わってしまいます。
この3人の傷が少しずつ暴かれていくのも、読み応えがありました。
いろんなものを背負って悩みもしたけれど、少年達が自分を見失わないんです。
環境や条件に負けるかどうかは、結局自分次第ですものね。
過去より未来
3人は、それぞれに暗いものを背負っているけれど、過去にとらわれることなく前進することを選択します。
トーマの死の真相も暴いた所で、意味が無いのでしょう。
オスカーも行方不明の父を探そうとはしません。
そこは少し淋しくもあるけれど。
不思議で美しい世界
実は、舞台は日本です。
オスカー以外は、全員あだ名なのです。
異国気分で読んでいるから、ちょいちょい日本と言われると「ん?」と思ってしまいます。
白くもやがかかった世界だし、死を扱っていたりするけれど、暗いとは思わない。
キャラクターが未来を見ているからかな。
読み応えあり、満足しました。
ご訪問ありがとうございましたm(_ _)m
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