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池井戸潤著『アキラとあきら』あらすじと感想-泣ける長編小説

池井戸潤ブレイク前に書いた小説と言えます。

『アキラとあきら』あらすじと感想 

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『アキラとあきら』について 

『アキラとあきら』は、【問題小説】に2006年12月号から2009年4月号まで連載。
なぜか書籍化されない幻の長編小説でした。
大幅に加筆修正して、2017年5月17日にオリジナル文庫として、株式会社徳間書店の徳間文庫より刊行(15章構成で705ページ)。
現在の池井戸作品ほどエンターテインメント性は高くありませんが、青臭さが胸にくる作品で泣けます。
2017年7月9日~同年9月3日までドラマが放送されました。
山崎瑛を斎藤工さん、階堂彬を向井理さんが演じました。

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『アキラとあきら』のあらすじ

主人公は、山崎瑛(アキラ)と階堂彬(あきら)の2人。
前半は子供時代のお話で主にアキラが中心。
大人になってからの後半はあきらが中心です。

前半・山崎瑛メイン----
アキラは、ささやかながら幸せな生活をおくっていた。
しかし、父の工場の経営が傾くと夜には両親が言い争うような声が聞こえてくる。
従業員のヤスさんは、アキラをとても可愛がってくれたが、経営上の理由から退職してもらうことになった。
泣いてすがるアキラに、ヤスさんはロザリオをお守りとしてくれた。
小学5年のある日、アキラは学校を早退した。
迎えに来た母に手を引かれ、まだ保育園の年長組の妹とともに帰宅すると、そこには声を荒げる男達と父の姿。
父の工場が倒産し、男達が家や工場に踏み込んでいる間に、父を残して3人で母の実家を目指す。
学校の友達とはもう会えないと悟った。
ヤスさんがくれたロザリオを握りしめ、電車で4時間ほどかけて母の実家に辿り着いた時には不安と疲労でヘトヘトだった。
父とは、その日を境に離れて暮らすことになる。


後半・階堂彬メイン----
大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬は、子供の頃から祖父に帝王学を教わっていた。
周囲も皆、優秀なあきらが跡を継ぐものと思っていた。
ところが、あきらは東海郵船への入社および後継者として歩むことを拒否。
父・一磨からも期待されていることは分かっていたが、最終的に産業中央銀行に入行した。
祖父が亡くなった時に相続でもめ、東海郵船グループは3つの会社に分かれた。
父の弟達は、父への対抗心から無理な事業に手を出しては債務を膨らませていた。
父が亡くなり、一旦は社員の小西が社長になったものの叔父達の策略でまだ若い弟・龍馬がクーデターにより社長になる。
2人の叔父は、債務を膨らませているホテル事業の連帯保証に東海郵船を組み込む為に、龍馬を社長にする必要があった。
龍馬もまた優秀な兄のあきらへの対抗心に囚われていた。
叔父達にのせられたことに気づいた時にはもう遅く、日増しに苦悩が増す。
龍馬は総合失調症で入院することになる。
見舞いに来たあきらを前に、病院のベッドの上で龍馬は「悔しい」と涙を流す。
龍馬はあきらに、東海郵船の経営を引き継いで欲しいと頼む。
果たしてあきらは140億円の負債を抱えた叔父の会社を再建し、東海郵船の従業員を守ることができるのか?

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『アキラとあきら』ネタバレ感想 

『アキラとあきら』は、2人のアキラの運命が交錯する感動巨篇というのが売り文句ですが……。
それほど交錯していません(笑´∀`)
ちょいちょい涙腺を刺激される感動巨篇には違いないけれど。
子供時代、学生時代はニアミス程度です。

銀行に入行してからガッツリ組むのか、と思ったのですがあまり接点はありません。
ただ、あきらが銀行を辞め社長を引き継いでから、銀行側の担当者になったのはアキラでした。
ここでも、あきらの会社が巨額の債務を抱えている為、お互いの現場でどう乗り切るか模索に必死でベッタリしているわけじゃありません。
相手の能力の高さや仕事ぶりに対しての信頼度はかなり強いです。

個人的に私はアキラの方が好きです。
子供時代に苦労して、親思いで妹思いで凄く健気なんですよ。
ドラマでは斎藤工さんがアキラを演じたようですが、私の中のアキラのイメージは「お地蔵様」でした。
優しい子なんですよぉ~(ノД`)
子供なりにいろいろ考えて、なんとか親の支えになろうと頑張るアキラ。
昼休みに社食で読んでいたら思わず涙がこぼれてしまい焦りました。

やはり池井戸潤さんの小説は面白い!
読むと金融にちょっと興味がわきますね。
ものを知らないのは怖いなとか、自分にとって耳の痛い話を聞かない人はしくじりやすいなとか、教訓もある。
そういうところも、ストーリーが面白いから説教くささを感じないのが良い。
私も若い頃、「人に騙されたくなければ簿記の3級くらいの勉強はしとけ」って言われたなぁ。

池井戸潤さんが、元銀行員の経験をいかして書いた小説は多々ありますが、私は『アキラとあきら』が一番好きですね。
池井戸さんが銀行員とはどうあるべきか、本当に伝えたかったのはこの本の中にこそあるような気がします。

314ページ羽根田部長の言葉
「儲かるとなればなりふり構わず貸すのが金貸しなら、相手を見て生きた金を貸すのがバンカーだ」
「バンカーの貸す金は輝いていなければならない」
「金は人のために貸せ」

新人研修の最終日に羽根田部長が言った言葉を2人のアキラは心に刻んでバンカーとして働きます。
697ページでアキラも「会社にカネを貸すのではなく、人に貸す。これはそのための稟議です」と言って上司を説得しようとします。

どこぞのシェアハウス問題で注目を浴びた銀行の偉い人に聞かせたい言葉ですね。


以上、『アキラとあきら』感想でした。

ご訪問ありがとうございました(人´∀`)♪

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