お城にされ陸軍駐屯地にされ野球場にされても蘇った
古代迎賓館の遺跡
鴻臚館跡(国指定特別史跡)
7世紀後半(飛鳥時代)~11世紀前半(平安時代)
こんばんは。
ボク、今週のミステリーハンターの鉄腕イナオです。
天馬博士(お茶の水博士ではなく)に作ってもらったロボットです。
昔はN鉄ライオンズというプロ野球チームのエースで、日本シリーズで3連敗の後4連勝して逆転日本一になったりして「神さま仏さまイナオさま」なんて崇められたものですが、10万馬力のロボットなんだから7連投なんかヘッチャラです。
さて、白村江の敗戦後、那津官家(なのつのみやけ)の主な機能が内陸の大宰府に移された話がありましたが、今日は外交窓口機能のお話です。
倭国の外交窓口は、弥生時代は一大率の置かれた伊都国にあり、その後うやむやとなって(宗像に移った?)、那津官家が置かれました。
那津官家の行政機能が大宰府に移されると、外交窓口は後の福岡城内、ボクらのホームスタジアム・平和台球場のあたりに移されます。
これが筑紫館(ちくしのむろつみ)、平安時代あたりからは鴻臚館と呼ばれようになる迎賓館になるのです。
このあたりはかつて海に臨む小高い丘だったようで、白村江の後なんで、唐・新羅の武装船が攻めてこないか監視したり、急襲されたときに備えたりするために丘の上に引っ越したのかもしれませんね。
鴻臚館は迎賓館だけでなく、遣唐使の送迎や貿易の拠点としても機能していたようです。

2010年5月、上海万博参加の途中に博多港に帰港した復元遣唐使船。帆走や手漕ぎも可能なように造られているらしい。
鴻臚館という施設は筑紫(福岡)以外にも難波や平安京にあったという記録がありますが、遺跡が発見されているのはここだけなのだとか。
昔は筑紫鴻臚館は中呉服町あたりにあったというのが定説だったそうですが、大正時代に九大(当時帝大)医学部の中山ナントカ先生が、遣新羅使が鴻臚館(筑紫館)滞在時に詠んだという万葉歌
志賀の海人の一日もおちず焼く塩のからき恋をも我れはするかも
志賀の浦に漁りする海人家人の待ち恋ふらむに明かし釣る魚
可之布江に鶴鳴き渡る志賀の浦に沖つ白波立ちし来らしも
今よりは秋づきぬらしあしひきの山松かげにひぐらし鳴きぬ
などから志賀島が見えてヒグラシの声が聞こえる山松かげにあったはずだとして、明智小五郎ばりの推理で平和台説を提唱。
陸軍駐屯時代に瓦の破片などを発見していたにも関わらず、市は戦後の福岡国体の際に陸上競技場、球技場を建設。
翌年には平和台球場を造っちゃったんですね。
遺跡よりもスポーツ・娯楽施設を優先しちゃったようです。
しかし、1987年の改修工事でいろいろお宝が見つかっちゃったもんで、ライオンズの後に平和台を本拠地にしたホークスが福岡ドーム(現ヤフードーム)に引っ越したのを機に、史跡として本格的に発掘調査、史跡として整備されたそうです。

かつて平和台球場のあった発掘現場。向こう側にはオフィスやマンションなどの近代的なビルが立ち並ぶ。
追記2001.7.24
平和台球場後南半分の調査・整備が終了し、公開されています。
さて、CMの後は、実際に遺跡を見てみましょう。
チャラチャチャ~
<CM>

鴻臚館の建物は大宰府政庁同様、最初は掘建柱で造られていて、建て替えで礎石を用いた造りになったようです。
平和台球場のセンター~レフトあたりに谷を利用した堀があって、堀を挟んで北側(球場の中央辺り)と南側(場外)に建物の跡が見つかっています。
現在、南側が史跡として公開されていて、北側はフェンスで囲まれて発掘調査の真っ最中(トップの写真)です。
![]() | 奈良時代の東門跡。8本の柱で組まれた格式の高い門だったらしい。掘建柱の跡はもちろん復元。 |


奈良時代後期の礎石跡。写真では分かりにくいが、右の礎石は展示館の内部へ続いている。
![]() | 遺跡に覆屋をかけた展示館の内部。奥にある建物は、外から続く礎石の上に復元されたもの。 |

館内には唐を通じてもたらされた西アジアの陶器やガラスなども展示されている。
ちなみに鴻臚館跡からは日本で初めてトイレの遺跡も発掘されたそうで、当時は当然トイレットペーパーやちり紙などなく、木片でうんこを削ぎ落としていたと考えられています。
![]() | 確かトイレ跡から発見された木簡。廃物利用されていたのだろう。ということは、この木簡にはうんこがついていたということで…。 |
結果的に、福岡市は平和台球場をつぶして遺跡をとった訳ですが、あと1000年ぐらいたったら、昔の人は大きなスタジアムで野球というスポーツをやっていたんだ、なんてことで、平和台球場跡として復元整備し直されていたりして…。
追記
平和台球場跡の発掘、整備もだいぶ進みました。
鴻臚館跡

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福岡市中央区城内1
見学自由
駐車場:あり(舞鶴公園駐車場/有料)
●鴻臚館展示館

電話:092-721-0282
開館時間:9:00~17:00(入館~16:30)
休館日:12月29日~1月3日
入館料:無料
関連スポット
●福岡市博物館(おまけ4)
●福岡市埋蔵文化財センター(おまけ3)
(つづく)
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