アルバム・カバー曲5曲めは「炭坑節」です。Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=vBoX8EcK3Uk
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/239189/
Kiinaのアルバムではオリジナルを三橋美智也さんとしていますが、この「炭坑節」は戦後の石炭大増産時代にお座敷唄として北九州地方の芸者さんたちによってレコーディングされ、たちまち全国的に流布されたものです。田川出身の赤坂小梅さん始め鶯芸者と呼ばれた声自慢の芸者さんたちもこぞってレコードを出しています。
元々の盆踊り唄を持たなかった東京では、盆踊りというと真っ先に「炭坑節」が踊られたようですね。
この歌では月が「三池炭鉱の上に出た」と歌われていますが、本当は同じ三井資本でも大牟田の三池ではなく田川にあった伊田炭鉱を歌った歌なのだそうです。地元の方ならご承知なのでしょうが、高い煙突も三つの山も田川伊田炭鉱から見える景色だそうですね。
元々「炭坑節」のルーツは、炭鉱で働く女性たちが辛い労働を紛らわすために歌った「選炭唄」に芸者さんたちがお座敷で三味線の伴奏をつけて歌ったもので、それが戦後に一気に全国区の民謡として広まった陰には、GHQ(三池炭鉱のあった大牟田にも進駐しました)による「まずは石炭増産で戦後日本の復興を」という思惑があったと。美空ひばりさんの「一本の鉛筆」でご紹介した前田和男さんがこの歌についても丹念に調査されていました。
私の年代になると、九州の炭鉱と聞くとどうしても「三池闘争」や土門拳さんの「筑豊のこどもたち」の写真集や「にあんちゃん」を思い浮かべてしまいます。戦後日本の縮図のような、あまりにも強い光と影のコントラスト。「炭坑節」は九州が石炭景気に大いに沸いた一瞬を切り取って、その輝かしかった時間を盆踊りという形で国民が共有する歌なのかなぁと思ったりもします。
さて、そんなことを考えながら聴くKiinaの「炭坑節」ですが、Kiinaにとっては「地元福岡が発祥の盆踊り唄」という親近感(だけ)もあるでしょうね。
明るい声で景気よく歌ってくれています。ちょっと意識して平べったい声にしているのかな?という気もします。
今回の「昭和歌謡史」にも収録されていますね。