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テレサ・テン(鄧麗君、Teresa Teng)の残照

『終戦記念日』

1945年8月15日正午、昭和天皇による玉音放送がラジオから流れ、ポツダム宣言受諾が表明され、日本は終戦を迎えることになりました。

『神国日本』が戦争に負けるわけがないと信じて疑わなかった人々にとっては、信じがたい玉音放送の内容だったと思われます。この時代を生きていた日本人の感じた虚無感は、どれほどのものだったのでしょうか。

今や日本では、戦後生まれの人が大多数を占めるようになり、第二次世界大戦も歴史として語られるようになりました。

自ら体験していない戦争であっても、決してその苦い歴史を忘れることなく、平和への願いをなお一層確かなものにしてゆきたいと感じております。

さて、テレサ・テンさんが生まれ育った台湾では、近年中国との間で軍事的緊張が高まり、平和ボケと言われる日本人には感じられない、「戦争が始まったらどうしよう」という不安感を抱いている人々が増えてきていることでしょう。

沖縄とは目と鼻の先の台湾で、万が一にも戦争が始まるとなると、日本でも平和ボケではいられなくなることは火を見るよりも明らかでしょう。

本日の終戦記念日に際して、改めて、二度と戦争という愚行を繰り返してはならないとの決意を新たにしている次第です。

ところで、昨年のお盆には、テレサがカヴァーしたKUWATA BANDの『Merry X'mas in Summer(メリー・クリスマス・イン・サマー)』について書きました。

私の好きなテレサがカヴァーした曲は他にもありますので、多くの犠牲者を生んでしまった第二次世界対戦の終戦記念日にあたり、こよなく平和を願っていたテレサの想いが少しでも届くことを願い、ご紹介したいと思います。

私の好きなカヴァー曲の一つに、作詞:エド山口、作曲:エド山口・岡田史郎の『六本木ララバイ』があります。この『六本木ララバイ』は、内藤やす子さんが1984年にリリースし、ヒットした曲です。

内藤やす子さんといえば、ドスの効いた声で大変個性的な歌い方が特徴ですが、テレサが歌う『六本木ララバイ』は、内藤さんとは対照的な歌い方になっています。

力を抜いて自然に歌っています。それでいて大変味わい深いのです。

テレサがこの曲をカヴァーしたのが、1985年となっていますが、『つぐない』『愛人』『時の流れに身をまかせ』『別れの予感』と日本でヒット曲を連発していた頃のテレサはまさに絶頂期で、歌い方が成熟してきた時期だと思います。

この当時のテレサの歌を聞いていると、私は洗練されたデザインの企業のロゴを連想します。

デザインが完成する段階において、ロゴは大変シンプルなものになりますが、その方がひと目で強く印象に残るものとなります。複雑になるとかえって伝わりにくくなるようです。

テレサの歌にも同じ印象を受けるのです。

この当時の彼女の歌い方はシンプルですが、それでいて歌の本質が伝わり、洗練されて美しく感じます。

『六本木ララバイ』は、出会いと別れを繰り返して生きてゆく人間の悲哀を感じる歌です。

テレサが歌うと、はからずも別れがやってきて、哀愁を懐きながら生きている人間への深い共感力を感じると同時に、聴いている人の心に癒しが訪れます。

すべて包み込まれるような安らぎを覚えるのです。

テレサの歌が、時代を超えて愛される理由の一つはそこにあると思います。

そんなテレサ・テンさんが願った社会は、一人一人の人権が守られた、戦争のない、安心して暮らせる平和な社会でした。

また、歌を通して多くの人々の心が癒やされることも願っていました。

そのようなテレサ・テンさんの尊い遺志を継ぎ、本日の終戦記念日に際して、戦争の犠牲となられた多くの御霊の安寧を祈り、地上で生活している人々の心に癒しと平安が訪れることをテレサの魂と共に願いながら、今回は筆を置きたいと思います。


※参考資料
・CD『ラブ&ポップス』テレサ・テン ユニバーサルミュージック

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