つらつら日暮らし

菩薩戒儀軌に於ける「大鵬鳥」の喩え

中国で編まれた菩薩戒儀軌に関する文献を見ていると、「大鵬鳥」の話が出てくることに気付いた。

第一、趣道勝なり。菩薩戒を受けるは、大鵬鳥の一たび翅を挙して、能く十万九千余里に至るが如し。菩薩の道に趣くは、亦復た是の如し。法華経に云く、此の宝乗に乗りて、直に道場に至る。
    霊芝元照『芝苑遺編』巻中「授大乗菩薩戒儀」


調べてみると、この一節は中国天台宗の伝説的開祖とされる南嶽慧思に係るともされる『受菩薩戒儀』からの引用(やや文章を変える)のようだが、ここで、菩薩戒を受けると「大鵬鳥」のようであるという。そして、その鳥が一気に長大な距離を飛ぶように、菩薩が戒を受ければ道に趣くという。

ところで、「大鵬鳥」というのは、中国で伝えられる伝説の鳥(鵬)で、大変に大きいことから「大鵬」と表記される。ところで、この「大鵬鳥」は、更に以下のようにも表現される。

第三、福田勝なり。仮使、閻浮提に満ちる阿羅漢僧を供養すれども、一大鵬鳥を供養するには如かず。所以は何となれば、此の鳥、先曾して菩薩戒を受けるが故に。
    同上


上記内容からすると、この「大鵬鳥」とは、先に「菩薩戒」を受けるという。この鳥が菩薩戒を先に受ける理由について、残念ながら上記文献では分からないのだが、やはりこの「大鵬」については、菩薩の喩えなのかもしれない。要するに大乗について、無辺際と捉え、その様子を「大鵬」としたわけである。そうすれば、この鳥が真っ先に受戒するという意味も理解出来よう。

菩薩戒に於けるファーストペンギンならぬ、ファーストバードとしての「大鵬鳥」であるが、我々も常にそうありたいものだと思う。ところで、上記内容は『受菩薩戒儀』の「菩薩戒有八種殊勝」に見える文章らしい。その文章もその内紹介してみたい。

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