つらつら日暮らし

今日は「母の日」(令和4年度版)

今日の5月第2週の日曜日は、母の日とされている。日頃の母の苦労を労り、母への感謝を表す日であるとされるが、日本ではアメリカの母の日の帰源をそのまま受け入れているという。

それで、例年拙ブログでは仏教に於ける母親への親孝行の事例を紹介したいと思っているが、仏教に於ける母への孝行は、生きている間に行われる場合と、既に亡くなっている場合とがある。今日は、前者の事例として以下の一節を見ておきたい。

 是の如く聞けり、
 一時、仏、釈翅痩迦毘羅越尼拘留園中に在りて、大比丘五百人と倶なりき。
 爾の時、大愛道瞿曇弥、便ち世尊の所に往至して、頭面もて足を礼し、世尊に白して曰く、「願くは世尊、長く愚冥を化して、恒に生命を護りたまえ」。
 世尊、告げて曰く、「瞿曇弥よ、応に如来に向かいて是の言を作すべからず、『如来、延寿無窮にして、恒に其の命を護りたまえ』と」。
 是の時、大愛道瞿曇弥、即ち此の偈を説く、
  「云何が最勝の
  世間に与等無きを礼す、
  能く一切の疑を断ずるは、
  是れ此の語を説くに由るや」。
 爾の時、世尊、復た偈を以て瞿曇弥に報せて曰く、
  「精進の意欠き難し、
  恒に勇猛心有り、
  平等に声聞を視て、
  此れ則ち如来を礼す」。
 是の時、大愛道、世尊に白して曰く、「自今以後、当に世尊を礼するに、如来、今、勅して一切の衆生を礼するに、意、増減無かるべし、と。天上、人中及び阿須倫、如来を最上と為す」。
 是の時、世尊、大愛道の説く所を可とす。
 即ち坐より起ちて、頭面もて足を礼し、便ち退きて去る。
 爾の時、世尊、諸もろの比丘に告ぐ、「我が声聞中第一の弟子の広識多知なるは、いわゆる大愛道、是れなり」。
 是の時、諸もろの比丘、仏の説く所を聞きて、歓喜し奉行す。
    『増一阿含経』巻9「慚愧品第十八」


まず、大愛道比丘尼とは、釈尊の乳母であるゴータミーのことである。実母であるマーヤーの妹とされ、マーヤーが釈尊を生んで亡くなった後、釈尊の父であるシュッドーダナ王に嫁ぎ、伝承では釈尊の異母弟を生んだとされている。そして、釈尊自身が子供の頃、世話をしたのがゴータミーだったともされているので、仏典では「乳母」という表現がされることもある。

なお、後年、ゴータミーは出家を願い、実質的に最初の比丘尼になったともされるので、上記内容も、釈尊の直接の弟子の一人として、問答されているのである。

具体的な内容としては、ゴータミーが釈尊に対して、「永く多くの衆生を導くために、長生きして下さい(死なないで下さい)」とお願いしたという。ところが、釈尊は、そのようなことをいうべきではない、と諭した。これは、釈尊自身は諸行無常を説いていたので、これは如来の生命としても同様だったからである。

そうすると、ゴータミーは自分は釈尊を礼拝することを宣言しつつ、一切の疑いを破るのは、このような無常の教えを説くからであろうか、と釈尊に尋ねる詩(偈頌)を詠まれると、返答として精進努力への思いが強く、如来を礼拝することとは、平等に声聞を見るためだ、と答えた。

これはつまり、世尊のみを特別視して礼拝することを否定したことになる。

そして、ゴータミーは、その釈尊の教えを正しく理解しつつ、釈尊自身を礼拝するけれども、それは、他の一切の衆生との差別があるからではないと宣言しつつも、だからこそ、如来を最上とすると示した。この辺は逆説的な把握ではあるが、しかし、非常に重要な教えでもある。

その結果、釈尊は、自分の声聞の弟子の中では、ゴータミーこそが、最も知識があると褒め称えたのであった。身内であっても、正しい道理を持っていれば、しっかりと評価した様子が理解できよう。実際、釈尊の原始仏教教団は、元々の親戚、身内であるシャカ族関係者が多くいるような状態であった。しかし、だからといって、退けもせず、おそらくは優遇もせず、淡々と扱った様子が分かる。だからこそ、実子のラーフラ尊者も後には十大弟子に数えられたのである。

今日の母の日の記事に合う内容かどうか、はなはだ自信はないけれども、釈尊自身が継母をどのように評したかが分かる内容であったので、参照してみた。

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