つらつら日暮らし

昨日10月16日は「辞書の日」だったらしい・・・

10月16日はアメリカで、「学問・教育の父」とされるノア・ウェブスター(1758~1843)の生誕記念日で、特に辞書編集者として評価されているため、「辞書の日」となっているとのこと。なお、ウェブスターはアメリカ合衆国成立当初、国内の英語表記スペルが混乱していることを問題視し、「辞書」を編集したとのこと。ということで、「辞書」についての雑感を申し上げたい。

仏教を学ぶ時、「仏教辞典」などを用いるわけだが、かつて中国でインドから来る仏典の翻訳を行った際、実質的に「辞書」を構築した事例が結構存在する。

9世紀前半に成立した『一切経音義』とか、12世紀に成立した『翻訳名義集』などがある。これらは、サンスクリット語から漢語に翻訳する際に、字義を記したものである。

後は、5世紀初めに鳩摩羅什三蔵によって訳出された『大智度論』には、以下のような語句が多く存在している。

復た阿耨多羅と名づく、秦に言わく無上。
    『大智度論』巻2


つまり、インドの言葉を音写(音のみで漢字にした)した後で、中国(秦:五胡十六国時代の後秦)での意味を附記しているのである。こういう表記が、全100巻の本書の随所に見られる。よって、格義仏教などの影響で、仏典本来の意義を採るのに苦労していた状況が、本書などによってかなり改善されたものと思われる。11世紀初頭にも『釈氏要覧』という辞書が成立し、明代になると『大蔵法数』が成立した。

日本だと、15世紀中期に成立した『壒嚢鈔』や、江戸時代元禄期に刊行された『寂照堂谷響集』とかがある。そして、刊行自体は明治期に入ってからだが、江戸時代中期に無著道忠禅師が編纂された『禅林象器箋』などもある。

そういえば、明治期に入ってから編集された「仏教辞典」には何があるのだろうか。ちょっと思い付いたのが、明治末期に刊行された浩々洞編『仏教辞典』(無我山房・明治42年)がある。いわゆる仏教用語に始まり、高僧の名前、寺院名、テキスト名、地名など約2万語を収録している。興味のある方は、以下のサービスからどうぞ。

『仏教辞典』(国立国会図書館デジタルコレクション)

今となっては、コトバンクを始めネット上の辞書でも十分に調べることが出来るし、浄土宗では以下のサービスを無料公開している。

web版『新纂浄土宗大辞典』

それから、まだまだ不十分ではあるが、拙僧が構築している辞書もある。

つらつら日暮らしWiki

ネット上の辞書だと、1項目当たりの字数に制限が無いので、幾らでも書けてしまうことが利点である。よって、語句の典拠や用例なども豊富に記載出来るし、先行研究の紹介なども出来る。今後も、拙僧は自らの学びを継続していく中で、記述の追加をしていく予定なので、ご利用をお願いしたい。

ということで、昨日が「辞書の日」だということで、以上のような記事を書いてみた。雑駁で恐縮である。

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