さて、『教誡律儀』には「入温室法」が十六條にわたって示されており、浴室に行って入浴するまでの規則が簡単に書かれている。その中に、気になるお話しが・・・
入温室法第十六〈十六條〉
一、威儀を具し坐具を持つ。
二、尊宿未だ浴せざれば先に浴することを得ざれ。
三、要らず須らく瓶を持つべし。
四、手を垂れて瓶を把ることを得ざれ。
五、当に手を揖して瓶を把るべし。
六、大已五夏の人と共に同じく浴することを得ざれ。
七、初め衣を脱ぎ将に袈裟をもちて余衣の下に在くことを得ざれ。
八、浴室の内に入らば浄衣を脱ぎ浄竿の上に安ずべし。
九、触衣を脱げば触竿の上に安ずべし。
十、浴室の内に大小便することを得ざれ。当に須らく預め出入して、然る後に方に入るべし。
十一、洗浴するには先づ下より上を洗え。
十二、当に湿たる手巾を用い両手に各おの一頭を把り横に背上に安んじて抽牽すれば、垢膩、即ち落つべし。
十三、当に須らく寂黙すべし。即ち喧笑せざれ。
十四、湯水を汚触することを得ざれ。手、若し不浄ならば当に瓶水を用いて之を浄むべし。
十五、在浴室の内に在りては洟唾することを得ざれ。
十六、浴し了らば当に湯水を用い坐処を洗溌して浄からしめよ。皁莢の狼藉なることを得ざれ。
『教誡新学比丘行護律儀』貞享3年(1686)版、20丁表~21丁表を参照しつつ訓読
さて、そもそもこの「入温室法」について、日本の江戸時代の註釈では「若し三千威儀経に準ぜば、温室・浴室其の用不同なり。今は温室を以て通じて浴室に名づく」(通玄律師『教誡儀指要鈔』元禄16年版、24丁裏)などとあるが、要するにお風呂に関する指示である。
今回の話題に入る前に、いくつかの項目を紹介してみたい。「二、尊宿未だ浴せざれば先に浴することを得ざれ」は、尊宿=偉いお坊さんが入る前に、他の僧侶が入浴してはならないということになる。「七、初め衣を脱ぎ将に袈裟をもちて余衣の下に在くことを得ざれ」ということで、御袈裟は基本的に僧侶がもっとも大切にするべき衣のため、脱いだときにでも他の着物の下に置いてはいけないという。「十三、当に須らく寂黙すべし。即ち喧笑せざれ」は、現在でも曹洞宗などでは「僧堂・浴室・東司(トイレ)」は三黙道場と呼ばれて、話をしてはいけない場所だとされているが、以上の一節なども影響したものだろうか。
そこで、今回の話だが、以下のような内容である。
十、浴室の内に大小便することを得ざれ。当に須らく預め出入して、然る後に方に入るべし。
浴室内で大便・小便をしてはいけない。その場合は、予め(東司に)出入して用を済ませてから、浴室に入るべきだ、という意味になる。ところで、拙僧の手元にある『教誡律儀』の註釈書では、以下の指摘をしている。
如文(文の如し)
『教誡律儀考』
ということで、註釈無しであった。
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