1〔26〕 教皇の鍵の権能(もちろん教皇はこの権限を煉獄ではもっていないのであるが)によってではなく、とりなしの行為〔代理の祈りとしての代禱〕によって魂に赦しを与えるのは最もよい行いである。
深井氏下掲同著・20頁
まず、番号が1に戻っている(〔〕内の通し番号は、訳者による付加)が、これは当時の印刷技術の関係であり、内容には関係が無いとしている(深井氏下掲同著・42頁の註記参照)。それから、「教皇の鍵の権能」という話だが、これは、有名な話で、『マタイによる福音書』でイエスは、後に初代のローマ教皇とされるペトロに対し、「わたしは、あなたに天国の鍵を授けよう。そして、あなたが地上でつなぐことは、天でもつながれ、あなたが地上で解くことは天でも解かれるであろう」と述べたということに因む。
ただし、この箇所は、『マタイによる福音書』を作ったとされる、ペトロのグループによる創作である可能性があるともいう。今となっては、『新約聖書』中の共観福音書内に見られる差異は、むしろ、その制作者達の意図を確認するための重大な箇所である。
とはいえ、そのような差異について、ルターの段階ではそうは用いられず、上記一節についても、ただ自らの見解に対する証拠として用いられたものと思われる。つまり、教皇が地上で行ったことは、天上への救いに反映されることを示したものとされているが、ルターはあくまでもこの地上に於ける教皇の祈り自体の機能の大きさを認めるものの、それが煉獄などに及ぶわけではないとしているようである。
【参考文献】
・マルティン・ルター著/深井智朗氏訳『宗教改革三大文書 付「九五箇条の提題」』講談社学術文庫・2017年
・L.チヴィスカ氏編『カトリック教会法典 羅和対訳』有斐閣・1962年
・菅原裕二氏著『教会法で知るカトリック・ライフ Q&A40』ドン・ボスコ新書・2014年
・ルイージ・サバレーゼ氏著/田中昇氏訳『解説・教会法―信仰を豊かに生きるために』フリープレス・2018年
・田中昇氏訳編『教会法から見直すカトリック生活』教友社・2019年
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