つらつら日暮らし

『遺教経』を読む場所について

釈尊涅槃会を前に、『仏垂般涅槃略説教誡経(遺教経)』を学んでいるのだが、『遺教経』という語句が道元禅師の教えに出ていたので、見ておきたい。

 寮中、応に大乗経並びに祖宗の語句を看て、自ら古教照心の家訓に合すべし。
 先師示衆に云く、你、曽て遺教経を看るや。闔寮の清衆、各おの父母・兄弟・骨肉・師僧・善知識の念に住して、相互に慈愛し、自他顧憐して、潜かに難値難遇の想い有りて、必ず和合和睦の顔を見よ。失語有るが如きは、当に之を諌むべし。垂誨有るが如きは、当に之に順ずべし。此れは是れ見聞の巨益なり。能く親近の大利なるものか。忝くも厚殖善根の良友に交わり、幸に住持三宝の境界を拝す。亦た慶快ならざらんや。俗家の兄弟すら、猶お異族に比せず。仏家の兄弟、乃ち自己よりも親しむべし。黄龍南和尚云く、孤舟共に渡るすら、尚お夙因有り、九夏同居、豈に曩分無からんや。須く知るべし、一日暫く賓主となるも、終身便ち是れ仏祖ならんことを。
    『永平寺衆寮箴規』


まず、衆寮とは永平寺に作られた、僧侶の休憩場所の位置付けなのだが、余り無軌道に生活されては、本来の叢林の価値を保持し得ないため、道元禅師は『衆寮箴規』を示して、衆寮での過ごし方を明らかにされた。その初めの方に、上記のような一節があり、衆寮では「大乗経典」や「祖師の語録」を読んで、古教照心の家訓に自らを合わせるべきだという。よって、この辺からも道元禅師が文字の学びを否定されていないことを知るべきである。

それから、今回確認したいのは、「先師示衆に云く」の内容で、ここに『遺教経』をしっかりと読んでいるかどうかを尋ねている。『遺教経』は「波羅提木叉」についての教示が見られるが、それを踏まえて堂内の僧衆が相互に慈愛し、和合僧として修行すべきだとされる。

そのような和合僧こそが住持三宝となるのである。また、その様子を、黄龍慧南禅師の言葉でもって示している。

道元禅師はこの教えを天童如浄禅師の示衆であるとされるが、『如浄録』には無いため、実際にはどこまでが如浄禅師の教えかが分からない。ただし、この全体は非常に重要な教えであるため、学んでおくべきだといえる。また、機会を得て、『衆寮箴規』の内容を学び、記事にしてみたい。

また、上記の教えが『衆寮箴規』で説かれていることから、寮中で読むべき大乗経典として『遺教経』も定められていることが分かるのである。

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