そこで、このお供え物について、ごく簡単な記事を書いておきたい。
盂蘭盆会の思想・行法的な根拠となるのが『盂蘭盆経』なのだが、それを見ると、「具飯百味五果」とあるのが分かる。だが、これだけしかないので、具体的な意味が分からない。「百味」というのは様々な味を持つ食べ物という意味であろうし、「五果」とは、5つの果実(種類はともかくとして)のことであろう。
例えば、以下のような指摘がある。
具飯・百味とは、總標なり。人の饌を盤に盛りて、筵の賓客に邀命して、唯だ喫飯のみと云うが如し。故に飯を、百味の総統と為す。百とは大数なり、一百に定めるに非ず。
五果とは、一つには核果、棗杏桃李等の如し。二つには膚果、瓜梨奈椹等の如し。三つには殼果、胡桃石榴等の如し。四つには糩果、蘇荏等の如し。五つには角果、菱豆等のごとし。上は皆、舌の嘗所なり。
圭峰宗密『仏説盂蘭盆経疏』、原漢文
このようにあって、具飯というのは、ただとにかくご飯を盛って施すことを指している。また、飯と別に、百味を設けるわけではなく、ただ飯自体が百味の総統として位置付けられ、しかも、百という数字はだいたいのものであって、絶対に百種類の供物を設けるわけではない。
それから、五果についても、特定の5つの果物ではなくて、形状などで5つの分類を挙げている。それから、日本では本来、そこまで多くの種類の果物が採れるわけでは無いはずなので、その点では野菜などでも良いのでは無いか。実際、キュウリやナスなどが供えられることも多い。
また、以下の一節も見ておきたい。
盂蘭盆供 経に言わく、是れ仏弟子の孝順を修するものなり。応に念念中、常に父母乃至七世の父母を憶いて、年年の七月十五日、百味の飲食を以て盂蘭盆中に安んじ、仏及び僧に施し、以て父母長養慈愛の恩に報ゆ。
『仏祖統紀』巻33
こちらの場合、百味の飲食については、仏や僧に施すものだとしている。その供養の功徳を、父母などに対して回向するのが、盂蘭盆会なのである。後は、各ご家庭で入手しやすい食事、そしてご飯が大事という理解になるようである。
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