大きな風呂敷包みや柳行李などを背負った人々が、私のそばを次々とすり抜けてゆく。 寝台車を取ってある私はあえて急ぐ必要などないが、周りに煽られて先行き不安な思いで、無意識のうちに足は早まる。
青森駅、8番ホームにはこれから乗る八甲田号の重厚な紺色の車体が姿を現していた。 すでに多くの乗客はそれぞれの指定の寝台を見定め、いくつもの荷物を整理する人、所在なさそうに寝台の端に腰かけている人、様々な目的を持った人々が発車を待っていた。 2等寝台は上、中、下の3段ベッドである。私の寝台は一番上、はしごをよじ登り、とりもなおさず、自分の居場所を確保することができた。 天井は低い。胡坐をかいた体勢では頭が天井に付いてしまうため、少しかがんでいなければならない。落下防止のためのベルトが2か所、取り付けられている。 日頃から寝相が悪いため、ベルとの間から落ちはしないかと心配になる。 他の乗客はすでにカーテンが閉められ、寝る体勢でいるようだ。 外では駅弁売りが大声を張り上げてホームを行き来している。やがて鉄道唱歌のメロディが流れて、車掌の車内放送が始まる。 23時57分、列車は定刻通り、青森駅のホームをゆっくりと動き始めるのであった。