「取引の代償」
娉婷から出されたお茶を一口飲んだ耀天皇女は「今まで考えて私も心を決めたわ。そなたが駙馬のそばにいたければ反対しない。何侠は私の夫。今も、この先もずっとそうよ。そなたは駙馬の幼なじみ。2人が持つ思い出は、決して消せない。駙馬はそなたのため、危険を冒して、晋へ行った。情を重んじ、義理堅い。私は決めた、そなたは駙馬に仕えよ」と言う。そなたがいれば駙馬は怖いものなし、わが白蘭の再興も近くかなうはずと。
「なれど私は、生涯、夫だけを愛します。天の果て、地の果てへ行っても、心にいるのは夫のみ。他人に嫁げというなら、愛を貫くため命を絶ちます。私の願いをかなえてください」と頭を下げる娉婷。皇女は「駙馬はそなたの存在が問題になることを承知の上だった。自らが苦境に陥ることを分かりつつも、そなを連れてきた。それゆえ駙馬の気持ちは誠だと思う」と話す。娉婷は「私には夫だけです。この心は生涯、夫だけのもの。皇女様も同じ気持ちでは?他の男を愛せと言われたら、そうできますか?」と聞く。
皇女は「そなたの出現で、私の愛は報われぬものとなった。そなたには永久に現れてほしくなかった。なれど、そなたは現れ、二度と消えることはない。妻として、そなたを受け入れられても、女としてはそなたを永遠に許せぬ」と言う。「皇女様」と言った娉婷を立たせ「そなたを逃がせば、私も駙馬と同じく、今後、苦境に陥るでしょう」と言う皇女。娉婷は「この数年で世は大きく変わりました。2羽の雁は、もう“侍女の白娉婷と敬安王子”ではないのです。今は“皇女様と駙馬”でしかありえません。私と敬安王子の日々は終わりました。二度と戻りません。今、駙馬にあるのは、皇女様の偽りなき愛。いつか駙馬も気づきましょう、皇女様こそ最上の伴侶だと」と話す。
さらに娉婷は「駙馬は優勢ですが、敵軍は退いておらず、勝敗の行方はまだ分かりません。敵軍を退かせるお手伝いをします。白蘭を守り、お二人は仲むつまじく子をもうけ、お暮らしください。私はこたびの戦が終われば、俗世を離れ、夫との思い出に生きます。私が去れば、私も皇女様も安らぎを得られます。最良の結末では?」と言う。皇女が都を守る手だてがあるのか聞く。「逃がしてくださいますか」と娉婷が言うと「私と取引をする気?死罪に処す」と返す皇女。娉婷は「ありがたき幸せ」と言う。
「あなた…」と言いかけた皇女は、ふっと笑うと「納得したわ。1人のか弱き女子のため、天下の英雄が戦を始め、すべてをなげうって戦う。そなたはそういう女子ね」と話す。そして「私も女よ、そなたの気持ちは分かる。けれど、たやすく逃がすのもあまりに惜しい話でしょう。白殿は世に2人とおらぬ優れた軍師、類いまれなる人材よ」と言う皇女。娉婷は「それでも私に消えてほしいはずです」と言う。皇女は「わが白蘭軍は初戦に勝ったが、今後、雲安が敵に攻め落とされることは?」と聞く。
娉婷は「ありえます。雲安の守りは堅固ですが、周囲の密林に敵軍が身を隠せば数が読めません。駙馬が町の城壁の外に出れば、反撃されます」と答える。水源が都の外にあるのも弱点、水源を断たれたら持ちこたえられません、駙馬は追撃するやも、なれど私なら敵軍の確かな状況が分かるまで追撃しません、でも駙馬は…と。皇女は「敵軍が退いたのが誠か偽りか、どう見分ける?」と言う。「敵の陣営は北西にあり、風は東南から吹いています。白蘭にとって“順風”です。弓矢の攻撃には最適、火矢を放てば敵の陣営は大火となりましょう。さすれば敵軍も動きを見せるはず。それで敵の軍勢がつかめ、追撃もしやすくなる」と話す娉婷。皇女は何侠の勇み足を心配し「今の戦術を、早く駙馬に教えねば」と言う。
部屋を出て行こうとした皇女は、振り返ると「白殿は知りたくない?敵軍の総帥が誰であるか」と尋ねる。娉婷は「私にとって天下の動きなど、どうでもよきこと。誰が敵で、誰が味方であろうと関係ありません。私の望みは、今の戦術と引き換えに白蘭を出ることだけ」と言う。「ならば、その敵将が楚北捷だと言ったら?」と言う皇女。はっとした娉婷は皇女を見る。
「今、誰と?」と娉婷が聞く。皇女は「楚北捷よ。あなたが生涯の愛を捧げた夫だ。天の果てや地の果てを捜すまでもない。楚北捷は都のすぐ外にいる。そなたを迎えに来たのだ。再会まで生きておればよいが」と言うと、その場を後にする。
部屋に入ってきた酔菊の声が遠くに聞こえる娉婷。娉婷は「なんて愚かだったの。気づくべきだった、戦の相手は晋軍であると」と力なく歩きながら言う。そして娉婷は「雲安を包囲しているのは誰だと?」と酔菊に聞く。「さあ」と酔菊が答え、倒れるように平定は座り込む。
心配して駆け寄った酔菊に、娉婷は泣きながら「あの人よ。死んでいなかった。私のせいで、あの人を苦しめている。信じるべきだった。帰りを待つべきだった」と娉婷は言う。うかつだった、3日間、私は雁の刺繍をしたわ、でも、その間、手は汚れなかった、糸の色が落ちないからよ、それは長くしまってある古い糸だった、駙馬の屋敷には何でもそろっていたのに新しい絹糸はなかった、理由はただ1つ、晋の絹糸が入らないから、晋にとって絹は最大の交易品よ、各国にある絹の刺繍糸はすべて晋のもの、晋と白蘭は断交したんだわ、なぜ今、この時に晋が出兵するのか、全力で雲安を攻めるのか、と。そして「都を取り囲んでいるのは、楚北捷なの」と話す娉婷。
驚いた酔菊は、娉婷を迎えに来たことを喜び「東山の屋敷に帰るのよ」と荷をまとめようとする。しかし娉婷は「もう会えないわ」と言う。酔菊が理由を聞くと「自分を許せない。合わす顔がないわ。私のために必死で戦ってくれている。それなのに私は皇女に戦術を教えてしまった。私のために命がけで来て、私の戦術にやられるとは。なぜ私は、いつも北捷様を苦しめるの」と言う。酔菊も泣きながら「自分を責めないで。北捷様は強いわ。何侠に負けるはずがない。お腹の子のためだと知れば、許してくれる。喜んで会いましょ」と慰める。
娉婷は「いいえ。私がそばにいめと、北捷様に悪いことが起こるの。私のせいで、いつもそうなる。宮中でぬれぎぬを着せられ、晋王と対立し、こたびは白蘭に出兵まで。戦に加わっている大勢の兵が、命を落とすかもしれないのよ。すべて私のせいだわ」と言う。みんなに責められ、とがめられる、北捷様に合わす顔がないと。動揺する娉婷にお腹の子も反応する。すぐに脈を診た酔菊は「大丈夫よ。気持ちが揺れ動いたから、子も驚いたの。お願いよ、自分を責めないで。北捷様もそう願うはず」と話す。
「この子も私のせいで、苦しんでいるわ。母親になどなれない」と言う娉婷。酔菊は「娉婷さんは、この世で誰より立派な母親よ。将来、必ずこの子と幸せに暮らせる日が来るわ。今まで娉婷さんと北捷様の愛の深さを見てきた。別れのつらさもね。何侠の馬車に乗った時、私は誓ったの。一生、娉婷さんと子を守ると。産む時も必ずそばにいる。私が諦めないのに、娉婷さんが諦めちゃだめ」と励ます。娉婷が「ありがとう」と言い、2人は抱きしめ合う。
「丞相はなぜ白娉婷に刺客を?」と貴丞相に怒る皇女。貴丞相は「あの妖女は生かしておけませぬ」と言う。皇女は「分かっておる。だが、始末は私がつける。勝手な真似をして、私の計略を邪魔するな」と告げる。そして皇女は「白娉婷は駙馬の思い人で、楚北捷の最愛の妻だ。殺したら、そなたは駙馬にどう釈明を?楚北捷に何と申すつもりだ。駙馬はそなたを許すか?楚北捷が白蘭を許すか?内政は荒れ、晋は攻め入ってくる。“災いのもとを取り除く”だと?逆に災いを招いておる」と言う。「浅はかでした。両国に戦をもたらした、あの女が憎かったのです」と言う貴丞相。どうか罰をお与えくださいと。
皇女は「罰を与えて何になる。刺客の一件でよきこともあった。白娉婷が直訴してきたのだ。白娉婷はもう、白蘭を去る決心をしておる。これは都合よきこと。あの女に、ひと芝居打たせる。雲安の民すべてが見よう。私が駙馬のため、側室を置いたことをな。そのうえで白娉婷が逃げれば、駙馬も文句は言えぬ」と話す。うなずいた貴丞相は「もう計略を立てておいでとは、敬服いたします」と言う。
屋敷にいた娉婷は、嫁入り道具を前に立ち尽くす。婚礼衣装に着替えるよう催促され「私がするから」と、全員を部屋から追い出す酔菊。
「どうすれば?」と酔菊から聞かれ「こうなるとは、思ってもみなかった」と娉婷は話す。酔菊は「この衣装を着たら、鎮北王妃は、もうこの世から消えるわ」と言う。「“鎮北王妃”。この美しい称号も二度と名乗れない。私のせいで大勢死んだ。私の周りには多くの陰謀が。北捷様、陛下、若君。人生に現れたすべてが足かせのよう。私は罰を受けても、他の人を巻き込みたくない。お腹の子がいなければ、生き長らえるべきではない。酔菊、涼へ行くわ」と言う娉婷。よく考えて決めたの、涼には親友の陽鳳がいる、前は燕の楽士だった、私を受け入れてくれる、と。うなずいた酔菊は「私はどこへでも、ついていくわ。まずは涼へ行き、決心がつけば北捷様に会いましょ。2人は必ず、また一緒になるわ」と話す。
婚礼衣装に着替えた平定を見て、思わず「きれいだ」と言う冬灼。そんな冬灼を酔菊が睨みつける。
緑衣が「衣装はぴったりですか?」と娉婷に聞く。娉婷は「はい。皇女様に感謝申します。皇女様にお伝えください。“この恩に報いるため、皇女様のご期待に応え、己の責を果たします”」と答える。
男が町で、駙馬の屋敷の女子は白娉婷だと噂を流す。白娉婷は鎮北王妃になる前は、駙馬の侍女だった、輿入れは皇女様が決めたとか、白娉婷は皇女様が駙馬に贈る側室なのだ、晋が大軍で来て白蘭を激しく攻めるのも、白娉婷のためだ、と。
男が去った後、話を聞いた男たちは「白娉婷はまず駙馬を裏切り、次に夫を捨てた?何という悪女だ」と話す。
白蘭の陣営。何侠に皇女から急報が届く。読んだ何侠は「そうか、妙案だ」と喜ぶ。
晋の陣営。兵の1人が「鎮北王は女のために戦っている。われらは命懸けなのに」と言う。別の兵が「鎮北王は武神だ、何を言う」と言い、さらに別の兵が「これには何か誤解があるはずだ」と落ち着かせようとする。しかし最初に言い出した兵が「女1人のための戦だぞ、最低だ」と言ったことで皆がケンカを始めてしまう。
騒ぎを聞きつけた北捷は、皆に「軍を率いて以来、将軍も兵士も共に血を流して戦ってくれた。皆、仲間だ。戦で酒肉を分かち合う、仲間だ。今、私の妻に危機が迫っている。いかに危険でも、命尽きるまで、勝利を信じて戦うのみだ。皆も同じことをするであろう。だが、みんなにも大切な人がいることを知っている。私の妻のため、妻子や親を残して死なせては申し訳がたたぬ。今日は立場の上下も軍令も関係ない。去るもも残るも好きにするがよい」と話す。
兵の1人が前に出てきて「われらは鎮北王に従います。晋軍に腰抜けはおらぬと、白蘭軍に示すのです。死など恐れませぬ」と北捷に言うと、仲間たちに「そうだな?」と聞く。他の兵たちも「そうだ」と声をそろえ、北捷は皆に杯を捧げる。われらは家族と同じ、亡くなった兵の家族は私が面倒を見る、私が死んだら、妻を見つけ伝えてほしい、“すまぬ”と、と。「鎮北王と生死を共にします」と連呼する兵たち。
夜。机の上に2通の手紙を置いた娉婷は、酔菊と一緒に屋敷を逃げ出そうとする。それを「待て」と止める冬灼。冬灼は「どこへ行くのですか」と言う。短剣を向け「私たちの邪魔をしないで。皇女様が許してくれた」と言う酔菊。冬灼は「若君は今、必死で戦っているのに、逃げ出したことを知ったらどんなに悲しむか」と言う。若君はどんどん笑わなくなり、眠れなくなった、娉婷さんが温かさをもたらすと信じていたのに、娉婷さんは共に育った若君を見捨てても平気なのですか、いつからそんな冷たい人に?と。
娉婷が「行かねばならないの」と言うと、冬灼は「ここに残り、若君のそばにいてください。さもないと若君は元に戻れなくなる」と説得する。「私たちは元に戻れると思う?若君は変わったわ。私を陥れ、恐ろしい罪を着せた。私の愛する人も陥れた。今は私を幽閉し、自由を奪っているわ。ここに残れば私は生きる屍となる。私も変わったわ。私が死ねば若君は喜ぶのか、それとも悲しむのか。あなたは悲しんでくれるの?」と言う娉婷。
「娉婷さん、俺は…」と冬灼が言いかけ、娉婷は「私を引き止めたい理由は何?出さぬというのなら、いっそ私を殺せばいい。楽になれる。私を行かせて」と話す。うつむいて目を閉じた冬灼は「行ってください。もう二度と会いません」と言う。「体を大事に、元気でね。若君のことも…」と言う娉婷。その途中で冬灼が「気が変わらぬうちに行け」と叫ぶように言い、娉婷と酔菊は出て行く。つらそうに娉婷の名をつぶやく冬灼。
白蘭の兵たちは晋の陣営に向かい天灯を飛ばす。その天灯が陣営の上まで飛んだ所で、天灯に火矢を放つ白蘭の兵。落ちてきた火で晋の陣営は火の海となり、燃え尽きる。
燃える陣営を見て、別の陣営にいた漠然が「予想どおり何侠が火攻めを。だが水路も造り、準備万端です」と北捷に報告する。「火攻めは林にいる敵への最善の戦術。なれど“敵”はこの楚北捷。その程度の戦術は、私も思いつく。こたびは何侠の負けだ。伝えよ、このあと5000の兵を率い、西の包囲を解き、敵を誘う」と言う北捷。そして北捷は漠然に「お前は大軍を率い、何侠にひと芝居打ってやれ」と命じる。
ーつづくー
戦の相手が北捷だと話た時の皇女が、何だか何だかで…(o´д`o)=3
娉婷は何もしていないのに、仕返しをしているような。
わざと傷つくように言ってるし、笑っていたよね。
娉婷の婚礼衣装姿が、綺麗というより怖く感じたんだけど…(;´д`)ノ
何侠の花嫁になることで、喜んだ冬灼だったけど、結局、娉婷とはお別れすることに。
冬灼が切なかった(;д;)
そうだ。
白蘭軍が火攻めの時に使った物、“天灯”と書いたけど違うのかも…。
そんなような物ということで(∩´∀`@)
最近、1人1人の台詞が長いような気がする…。
書いても書いても終わらなくて(*´Д`*)
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耀天が強がるしかなくて本当に切ないですよね。
その一方で娉婷は自己嫌悪な感じですが
それぞれ素敵な女性なので、
対の鴈と幸せになれるといいのに、
と思ってしまいました。
セリフ長いですよね…
ここまで丁寧に書いてくださって感謝、感謝です。
このドラマは長いんですが、、他にはまだ放送されてないんで頑張って下さい!応援してます!
一羽は娉婷の決意で、皇女がもう二羽にしたのは駙馬の側室にすることだったのね、と勝手に解釈しました。
皇女が娉婷に敵軍の総帥が北捷だと告げたときのドヤ顔!
娉婷VS皇女は、皇女の逆転勝ち。
貴丞相に話した計略、やはりしたたかな皇女でした。
弱っちょろい刺客を差し向けたのが貴丞相だったとは、意外でした。
皇女が貴丞相に言った「あの女に、ひと芝居打たせる」と
北捷が漠然に言った「何侠にひと芝居打ってやれ」が同じような台詞・・・・・
どんなひと芝居か、次回が楽しみ。
たくさんの天灯がきれいでした。
元は戦の作戦に使われてたんですね。