「取り戻したい過去」
湯あみをしてから耀天皇女は駙馬の屋敷へ。出迎えてくれた何侠に「白殿は目覚めたの?」と皇女が聞く。「目覚めましたが、病み上がりで見苦しい姿です。お目にかけられぬかと」と答える何侠。皇女は「私が会いにきたのに閉じ込めておく気?早く呼んで。あの聡明な美女と話がしたいわ」と話す。仕方なく何侠は冬灼に、呼んでこい、と言う。
落ち着かない酔菊が、書物を読んでいる娉婷に「耀天皇女が来たらどうするの」と尋ねる。「何事にも解決の手段はある。案じなくていい」と言う娉婷。酔菊は「昼間に会った皇女は親しみやすそうだったけど、あんなのは見せかけよ。猫をかぶってるわ。宴の席で何かされたらどうする?」と聞く。娉婷は「もし何かされたら、皇女の本心が分かる。いいことだわ」と話す。逃げられないのであれば、追い出される方法を考えればいい、この先も困難は多いけれど、あの牢のような屋敷は抜け出せた、もし皇女が“協力的”であれば目標を達するのは早い、とにかく私たちの目的はただ1つよ、生きてここを脱出すること、と。そこに冬灼が呼びにくる。
何侠は皇女の好物の菓子を作らせ、美酒である清醞(せいうん)を用意していた。その清醞を持って、娉婷が歩いてくる。
酒を注ぐ娉婷に「なぜ給仕役などを」と言う皇女。娉婷は「清醞は麹の量が多く、造り方も複雑です。強い酒なので、ご注意を」と話す。皇女は「白殿は私たちの客人なのよ。体が弱く病を抱えているのに、給仕などさせられない」と言う。何侠からも「娉婷、侍女は多くいる。別の者にやらせよ」と言われ「お二人に申し上げます。私は皇女様に命を救われました。ご恩に報いたいのですが、今の私にできるのはこれくらいなのです。私は元侍女ですので、こうした務めは慣れています」と言う娉婷。
皇女が「白殿は琴の名手とか。今夜はその風雅な音を聞けるかしら」と聞く。何侠は「少しは弾けますが、長く稽古しておらぬゆえ遠慮させます」と断ろうとする。しかし皇女が「伯牙(はくが)は友である子期(しき)に琴を弾く。失礼ではあるが白殿が伯牙なら、私は子期になりたい」と言い、娉婷は弾くことに。
月の下、娉婷は琴を弾き始める。清醞を飲む速度が速くなる何侠。
娉婷が敷き終わると「ぜひ、もう一曲弾いてほしい」と皇女が言う。弾いた曲が“春景”だったため、夏秋冬の曲もそれぞれあるのでは?と。「確かにございます。“春景”に続き、“夏語”に“秋虫”、そして“冬曲”です。どれにしますか」と答える娉婷。「春を弾いたのだから、四季すべてを聴くことはできるかしら」と皇女が言い、娉婷は「はい」と返して弾き始める。
何杯も清醞を飲む何侠を見て、皇女は「“白き腕は筍芽のごとく 琴の弦を爪弾いている”。白殿を描いたような詩ね」と言う。剣を手にした何侠は、子供の頃、琴を弾く娉婷のそばで剣舞をしていた時と同じように、剣舞を始める。皇女が「駙馬」と言っても、何侠はやめようとしない。複雑な気持ちになる皇女。
しばらくして琴の弦が切れ、娉婷は倒れてしまう。何侠は娉婷に駆け寄ると、急いで抱きかかえ部屋へ連れて行く。それを見た皇女は、杯を強く握る。
すぐに部屋に来た酔菊が脈を診る。大したことではないと分かり、安心する酔菊。酔菊は何侠に出て行くよう話すが、逆に酔菊の方が部屋から出されてしまう。
倒れた娉婷を急いで抱きかかえ、急いで連れて行った何侠を思い返し、皇女は寝台で涙を流す。その頃、何侠は娉婷の隣に自分も横たわっていた。
意識のない娉婷に「今までの私は、こんな光景を何度も思い描いてきた。子供の頃には、共に琴を弾き、剣舞をし、そして学んだ。茶をたて、香を聞き、文章を読み討論し合った。蒲坂の戦までだったな。やっと戻ってきた。空白は残りの人生で埋め合わせる。娉婷、本当に戻ったのだな。これで、もう安心だ。私を信じてくれ、死ぬまで一緒にいる」と話す。
月を見ていた北捷のもとに、漠然が駆けてくる。漠然は「夜明けの出発まで、もう少し寝たほうが」と言う。「眠れぬ」と返す北捷。漠然は「奥方様は善人ですから、天が助けてくれます」と言う。北捷は大きくうなずくと「いずれ、そなたにも愛する者ができれば、離れていることのつらさが分かるだろう」と話す。
翌朝。目の覚めた娉婷は、隣に何侠が寝ていることに気づき飛び起きる。「若君?」と言う娉婷の声で起きる何侠。何侠も体を起こすと「目覚めたか」と言う。娉婷は、なぜここにいるのか聞く。「昨夜、倒れたので、身を案じたのだ」と何侠は答える。
すぐに寝台から出ると「なぜ人を裏切る行いをするのです。私のような他人に関われば、皇女様が傷つきます」と言う娉婷。何侠は「私は裏切ってなどいない。昨夜は急なことで多くを考えられなかった」と言う。
娉婷は「お聞きください。もし私が皇女様なら、白娉婷を不快に思います。今後、若様といかに接するべきか分かりません」と話し、扉を開けると「出ていってください」と言う。「私を案じているのか?」と言う何侠。娉婷は「自分の身を案じているのです」と返す。
何侠は人を呼び「今日は参上せぬと皇女に伝えよ」と命じる。
「面倒を招く気ですか」と尋ねる娉婷。何侠は「それより気がかりは、そなたのことだ。もし気が変わらなくても、そなたを離さぬ。こうなったことを、そなたは望まぬだろう。それも受け入れよう。そなたを守る」と言う。
北捷たちは、前方50里先が雲安という所まで来ていた。ここに宿営することを決めた北捷は「耀天皇女に使者を出せ。“わが軍は白蘭を攻める用意がある。民を殺したくない。だが手向かうなら、わが軍は無情になる。予の向かう先には白蘭の無辜の民がおり、蹄鉄が踏むのは白蘭の山河となろう。命が惜しくば、白娉婷を差し出せ”とな」と漠然に告げる。
娉婷の絵を描いていた何侠は「娉婷、笑ってみよ」と言う。娉婷が笑みを作ると「子供の頃は私の絵が下手だと言っていた。今はうまく描いてやれるのに、そなたは笑わぬ」と言う何侠。娉婷は「毎日、朝廷にも行かずここにいるなんて、皇女様がどう思うか」と言う。何侠は「失えば、もう戻らぬ。そなたといる時のほうが大切だ。ここにいては悪いか?」と聞く。「居候の身では何も言えません」と答える娉婷。そこに「使者が“皇女様の命につき、直ちに参内を”と」と知らせが。何侠がそのまま絵を描き続けていると、宮中から催促の使者が来る。
娉婷は何侠の元まで歩いて行き「2度も使者が来るのは、火急の用かと。行かれては?」と話す。「気ぜわしいことだ。戻ったら続きを描く」と言って、ようやく何侠は重い腰を上げる。
何侠が部屋を出て行くと、すぐに酔菊が部屋に入ってくる。何侠の描いていた自分の絵を見ながら「なぜ、あんなに無邪気なの。私は笑顔を見るのも苦しいのに。今までのことを考えれば、昔に戻れるはずもない」と言う娉婷。
娉婷は酔菊に脈を診てもらう。酔菊はお腹の子が元気に育っていることを伝えた後「でも、ここ数日の疲れはお腹の子にとってよくないわ。親子共に元気でいなくちゃ。しばらく体をいたわってね」と話す。娉婷が「できるかどうか分からない」と答え、酔菊はため息をつき「そうよね。ここにいるかぎりは苦しみばかり。数日ならまだしも、長引けば脈はごまかせず、お腹だって隠せない」と言う。「長居はしない」と言う娉婷。何侠が急に皇女様に呼び出されたたわ、状況を見ましょう、と。
皇女や大臣たちが待つ中、何侠が来る。「戦書が来た」と伝える皇女。何侠は“奪還を果たすのみ”と書かれた戦書を目にする。皇女は「楚北捷が大軍を率い攻めてきた。すでに雲安50里先にいる。白蘭に危機が迫っている。その戦書を見て、駙馬はどう思うか」と言う。「正気ではない」と言った何侠は、筆を持ってこさせると“身の程を知るべし”と戦書に書き「これが私の答えです。敵は目前です。出兵をご下命ください。今こそ鍛えた兵を使う時です。必ずや撃退します」と話す。
貴丞相は前に出ると「戦書を見れば明白です。楚北捷に妻さえ返せば、戦火を避けて民を守れるのです。白蘭が戦う理由はありませぬ。1人の女と1つの国、どちらが重要だとお思いか。駙馬は状況を察する力に長けているはずが、なぜ判断を誤るのです。そもそも誤ったわけではなく、あの女を手放したくないだけですか」と反対する。何侠は「晋が急に攻め入ったのは、わが国への屈辱だ。なのに楚北捷の求めに従えと?丞相は晋が望めば、あらゆる言いつけに従う気ですか?」と言い返す。そして皇女に「晋は30万の大軍なのです。われらが白娉婷を返したところで、楚北捷は受け入れても、司馬弘が軍を退かせぬ。もし晋が退かねば、白蘭の面目が立ちませぬ」と言う何侠。
言い争う何侠と貴丞相を止めた皇女は「女を敵に返すことで民を戦から遠ざけ、世が安泰になるなら駙馬にも異存はないはずだ。なれど駙馬が戦を唱えるのは、女のためではない。そのように単純な話ではない。楚北捷は雲案にまで迫り、女を返せと言っている。勝手に国境を越えてきて、要求しているのだ。願いをかなえたうえ、おとなしく帰してよいものか。すでに雲安に接近し、大軍を構えているなら、戦わぬ理由はない。駙馬は言った、楚北捷と戦ったうえで“必ずや撃退する”と。それゆえ駙馬を、この戦の統帥とする。三軍を率い出兵せよ」と告げる。何侠が「皇女の命に従います」と言い、皇女は戦書を敵に送り返すよう命じる。
屋敷に戻った何侠は「外へ出よう、駿馬を用意した」と娉婷に言って連れ出す。
それぞれ馬に乗り、駆けていた娉婷と何侠。娉婷は途中で別の方向へ走り出し、何侠が追いかける。そして落馬する娉婷。何侠が駆け寄ると、娉婷は短剣を何侠の首もとに突きつける。「殺す気か?」と何侠が聞き、娉婷は「殺さない、でも近づかないで」と答える。何侠が「いつから、こんな物を使う間柄になった?」と言う。娉婷は「ずっと前からです、駙馬」と返す。
「“駙馬”か。“若君”ではなく“駙馬”と呼ぶのだな。そなたのことも“鎮北王妃”と呼ぼうか?」と言う何侠。娉婷は短剣を下ろすと「“鎮北王妃”などと、なぜ私の心の傷をえぐるのです」と言う。何侠は「ここ数日、昔に戻ろうと努めてきたが、そなたは拒むばかりだ。私の思いが分からぬか」と話す。ふっと笑い「分かりますが心が拒むのです」と言う娉婷。何侠が「心は死んでない」と言うと、娉婷は「もし心が死ねば、私はもう生きていません」と言い返す。
何侠は「本心を聞かせてくれ。昔のような、そなたの心が欲しい。私に命さえ捧げる心だ。そなたと共に生きたい。時が必要なら、1年でも10年でも50年でも、そなたを待つ」と言う。
ーつづくー
いろんな意味で、皇女、大丈夫?って思ってしまうのだけど…。
何侠にとって娉婷が特別な存在だということは分かっていても、やっぱり目の前で見せられたら傷つくよね(;△;)
でも戦の話は、いろいろ矛盾しているような?
攻め入られたことが屈辱とか、白蘭の面目とか言うけれど、人の妻を連れ去るのはどうなの?
しかも、その妻を帰さないとか…(*´Д`*)
攻め入る前に妻を帰すよう、言えばよかったということ?
娉婷も体に負担がかかることばかりで心配。
落馬までしてしまうしヾ(・ω・`;)ノ
お腹の子のことを思うと、ヒヤヒヤしちゃう。
今回は月夜の北捷のシーンがお気に入り(*´ー`*人)
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追い出されたい娉婷は、わざと倒れたのかと思いましたが、そうじゃなかったんですね。
その後何日も参内しない何俠は、過去に戻ったようで嬉しかったでしょうね。
だけど、皇女が宴会の後に来ないのも不思議です。プライドが傷ついたのかなあ。
何日も馬車にゆられて、脈を錯乱する?薬湯を飲んだり落馬したり、流産がこわい〜だけど、一人取り残さたと思ってたら気にしてられないのでしょうね。
今後の戦はうささんの感想と同じく、どちらも女性一人にこだわるのだから、理由はないんだから、戦わないで話しあってちょーだい!!と次回に期待します。
あんなにあからさまに見せつけられてはね。
そのメラメラ心を利用して娉婷は追い出され作戦を考えたとは知らずに・・。
それに引き換え、“駙馬”はなんてヤツ!
駙馬のテロップが出たり、駙馬と呼ばれたりする度に種馬と言い換えてしまう私です( ̄▽ ̄)
貴丞相の進言に深く同意しています。
久々に皇女のお猫がちらっと見えて(≧▽≦)
登場したときから、ねこだけに気になってました。
『へいてい』の美しさや才能は、隠しきれないですよね!
何侠は強いお酒を飲んで若君と呼ばれた昔を思い出し、倒れた『へいてい』を心配してるのは分かるけど、うっかり隣で眠ったのは、マズイですよね!
『へいてい』を返すだけでは納まらないと、貴丞相を退ける皇女の本心は、どこにあるのでしょう!?
月夜の『ほくしょうさま』が『へいてい』を想うシーンは、とても美しかったです!
夜空には、月も星も瞬き、照らしあっていました!
で、この先どうなるの?
健気です。。。
何侠はすべては自分の思い通りに行くと思いこんでいるのでしょうか。
耀天に対しても娉婷に対してもあのようなことを
してほしくなかったです。
耀天の傷ついた心を癒してほしいです。。。