大島渚監督が80歳で逝去された、とのニュースが飛び込んできました。
もう10年以上、言葉もろくに話せない状態で闘病中とのことでしたから、致し方ない仕儀とはいえ、残念です。
大島渚監督といえば、なんと言っても世界に衝撃を与えた「愛のコリーダ」でしょうねぇ。
阿部定事件に取材した、全編性交シーンだらけのポルノまがいの作品でしたが、ポルノとは全く違った、上品で性欲を刺激しない作りになっていました。
公開時、私は小学生でしたので、劇場で観たことはなく、長じてビデオで鑑賞しました。
長い性交シーンよりも、世捨て人のように生きながら、狂気ともいうべき激しさで愛人との性交に溺れる主人公が、着流しにつっかけ姿で歩いている時、偶然軍隊の行進と行き会い、汚いものを見たとでも言うように目をそらして小走りで去っていくシーンが印象的でした。
社会のために生きざるを得ない軍人と、おのれ一人の欲望に生きる男との対比が見事でしたねぇ。
中学生の頃、「戦場のメリークリスマス」というのが話題になって、映画館に足を運びましたが、こちらはなんとなく物足りなかったことを覚えています。
1999年には最後の作品となった「御法度」が公開。
新撰組内部で美少年剣士をめぐり、隊士たちが同性愛めいたせめぎあいをする、美しい映画でした。
まだ少年だった松田龍平が妖しい魅力を放っていて、私は「御法度」の世界に酔いしれたものです。
いったいに大島渚監督の作品は同性愛めいたエピソードや男女の性愛を描いたものが多かったように思います。
一種の耽美的世界ですね。
しかし世では社会派みたいな言われ方をして、私はそれは違うんじゃないかと思っていました。
黒澤明のような大上段に振りかぶった娯楽作とも、小津安二郎のような静かなホームドラマとも違った、特異な世界を作り上げる人でした。
ご冥福を祈ります。
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